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ここには天然の天才が多すぎます。

「ちょっ……!? ……な、何? 何が起きたの?」

「姫様……っ」


ヴィンフリーデさんがベッドから起き上がり、シルを庇うが何かが起きる気配はない。

ヴィンフリーデさんの脇から抜け出し、シルが窓を開き確認すると、一息ついてから窓を閉めた。


「こちら側からの攻撃……? もしかして……」


そういいながらシルが窓から身を乗り出すと、地上の兵士が皆、砦の上を見上げている。


「あ~やっぱり。レティみたいね。よかったわ。攻撃を受けたわけじゃなさそうね」

「レティーシア殿が?」


「ええ。どうせ魔力が回復して、また訳のわからない魔法でも組んでなんかしたんでしょ? すぐに報告にくるわよ」


その言い草はどうかと思うんだよ!


「……」


ヴィンフリーデさんがにこやかな顔でシルを見つめている。


「何よ」

「いえ、今まで姫様に学校でお友達と呼べる方が出来たような事はございませんでしたので。初めてできたお友達が平民の子とは、なんとも姫様らしくて。ふふっ」


「失礼ね! (わたくし)にだって友達くらいたくさんいるわよっ!!」

「いやこれはこれは! 失敬いたしました。そうでしたね。皆さんお友達……でしたっけ? 上辺だけのなんとやらは……」


「昔の話は忘れなさい」

「承知いたしました」


「はぁ。見てるんでしょ? レティ。早くでてきなさい。報告。」


……え? ……もう覗きすらばれるの?

シルって本当になんなのよ。スペックおかしいんじゃないの……?


「よ、よくわかったね。ボクが転移眼で覗いてるって……」


もうばれてるようなので、直ぐにシルのいる医務室に転移する。


「さっきのあれ、貴女なんでしょ? それにしては報告が遅いもの。どうせ様子でも伺ってたんでしょ?」

「……。」


「様子を伺ってたってことは、あれは“やった”んじゃなくて、“やっちゃった”ってことかしら?」

「……。」


もう何この人。

隠し事が得意とか得意じゃないとかそういう世界じゃないんですけど。


「で? 戦果は?」


コンコン。とそのタイミングでノックの音が部屋に鳴り響いた。


シルがボクと目を合わせる。

ちょっといいかしら? と言っているんだろう。

もちろんいいので、少し頷いて返事をした。


「どうぞ。」


シルが短く合図をすると、扉が開き将校と思われる軍服を着たおじさんが敬礼をし、部屋に入ってきた。


「失礼致します。先ほど謎の魔法が我が砦より発射。その魔法自体につきましては……」


そこまで言いながら言葉を切り、ちらっとボクの方に視線が移る。


「詳細は不明……ですが、敵モンスター群の被害は甚大。目算報告によりますと、敵航空戦力の8割は墜落、地上・空合わせ、約80万のモンスターが消失したものと思われます」

「そう。魔法についてはこちらで把握しているわ。先に通達できなくてごめんなさいね」


「いえ、滅相もございませぬ。戦術級魔法というものは情報秘匿が常ですからな。では、そのようにこちらで通達をだしておきましょう」


ちらちらこちらを見てくるのはやめてほしいんですけど?


「それで、こちらが今回の結果を踏まえた修正状況となります……。詳細はこれより緊急にて、本部会議室にて作戦会議を行う準備がございます。各員より、今後の方針も踏まえご報告させていただきたいのですが……」


シルがさらっと書類に目を通す。


「……わかりました。すぐに行くわ。レティ、ちょっとごめんなさいね」

「うん。ボクの方は大丈夫だから」


さらに、まとめられたいくつかの紙が差し出されシルが連れて行かれた。


真面目な顔して話しながらシルの後ろについていくおじさん将官と、少女の姿を見ているととても不思議な光景だよね。畏まってるのはおじさん将官の方だし。


「姫様も、ここまで信用を得るまでは相当苦労されていたんですよ」


ベッドに寝たままヴィンフリーデさんの声だけが聞こえてきた。


「そりゃそうだよねぇ。普通だったら15歳の小娘が何言ってんだってなるもん。さっきあの人がボクを見る目もそんなんだったし」

「みな……悪気はないのですよ。ただ、あの者からしてみれば姫様以外の子は学生にしか見えないのでしょう」


「そんな人ですら認めさせるって」

「今思えば恥ずかしながら、私も最初はあんな態度でしたけどね」


ははは、と天井を見つめたままのヴィンフリーデさんの顔が引きつった笑い顔になる。上体を起こすどころか、表情を変えるのも精一杯なのだろう。


「ええ?! ヴィンフリーデさんが? なんか想像がつかないなぁ」

「まぁ、私が姫様に落ちるのは早かったですけどね……。5年程前でしょうか。指揮官として上に立ったのが当時10歳だった幼い少女。当時は私も腹を立てたものです」


「戦場で自分の命を預かるのがまだ年端もいかない少女って言うんじゃ、そりゃ怒るのが普通ですよねぇ」

「ええ、まぁ……当時の私を思い出すと恥ずかしいですね。最初から才能を信じていたのは、ラインハート公爵様とそのご夫人、そしてそこにいるティオナでした」


「ティオナさんも?」

「ええ、2人は幼い頃から一緒でしたし、容姿が似ているでしょう? わかるのでしょうね、賢王の力っていうんでしょうか」


容姿……は似てないと思うけどなぁ。

黒髪と黒い瞳っていうのはすっごい珍しいみたいだから、外国人がみんな同じに見えるってあれなんだろうと思う。黒髪に黒い瞳を見慣れている僕からしたら似ているところなんて全くない。


「そう考えるとヴィンフリーデさんってすごいよね。賢王の末裔とか、そういうのじゃないんでしょ?」

「……いえ、私にも力の秘密はあるんですよ。いずれ姫様からお話があるかもしれませんね」


その話をするヴィンフリーデさんの目が閉じ、空気が暗くなってしまった。とうやら話したいような話ではないらしい。

言いたくない事をわざわざ聞く気もないので、重苦しい空気に気付かないふりをしながら適当な話を続けていると、やがて砦の外が騒がしくなり始めた。


戦闘音が激しくなったのではなく、人の声だ。がやがやといろんな人たちの声が交錯しているようで、何を話しているかまでは聞き取れない。

窓の近くへ寄って様子を見てみるが、兵隊も混乱しているようだ。


何があったんだろう?

ちなみに、リンク様達が寝ている病室は隣で、部屋が違うから窓は壊れていないんだよ。


リンク様達の部屋の窓は、ティオナさんが突っ込んだ後に、視覚的に見えるように土魔法でガラスを作って埋めておいた。

ガラスと言ってもそんな見栄えのいいものではなく、光が入ってくる程度の透明なもの。外なんて見えないし、かなり歪だけどね。


「……何か……あったんでしょうか?」


無理やり身体を起こそうとするヴィンフリーデさんの視線が窓へと向く。


「うん。何かあったみたいだけど……」


正直なところ、なんとなくルージュの話していた事が起きたんだろうとは気づいてはいるんだよね。それくらいの変化でもないと、あんなに兵士が混乱することなんてありえないだろうし。


「ちょっと様子を見てくるね」


そう一言言い残し、砦の屋上へ転移した。


そこには既にルージュと……


知らない女の子が2人。


傅くように待ち構えていた。




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