ルージュの悪魔とゲームの世界。
白亜輪廻物語。
もちろんグリエンタールの愛惜という恋愛シミュレーションゲームとはまったく別物のゲームで、同じなのはジャンルだけ。
これもすごいよく覚えている。
何故って、恋愛シミュレーションゲームの中でもダントツで売れているタイトルだったからだ。シリーズが10まで続いたモンスタータイトル。
それだけでも恋愛シミュレーションというジャンルからしたら例を見ない事だったのに、1タイトルで3人と裏キャラ1人の合計4人攻略キャラがいて、最後のナンバリングである10のストーリーがものすごく話題になったタイトルだったのだ。
グリエンタールで恋愛シミュレーションというジャンルに嵌った前世のボクは、これを1から10まですべてプレイした。
タイトルの通り、輪廻という単語が肝になっていたゲームで、タイトルによってその描き方は違っていたけど、裏キャラクターの攻略が終わると、実は表キャラクターの転生後の人だったりとか、ナンバーを越えて色々な人達に関わりがあったりだとか。
そういう楽しみがあるゲームだった。
ネタバレ……だなんて言ったって、そもそもこのゲームは別世界の話なんだから、この世界では誰も触る事もできないんだし気にすることでもないからネタバレしちゃうと、最後の10のストーリーが話題になったのは、それまでの9作すべてに張られていた伏線がすべて回収され、結果、実はすべて1人の生まれ変わりだった主人公が10作目でついに裏キャラとして攻略対象となり。裏キャラをクリアしたトゥルーエンドでは、次の生まれ変わる先で世界そのものを作りあげちゃうだなんていう壮大な終わり方をしたゲーム。
10作品すべてがいわゆる“泣きゲー”と呼ばれるジャンルで……。
特に最後の10作品目なんかは、ぼろっぼろ泣いた記憶がある……。
ああ、そっか!
その最後に世界を作った主人公の名前が“ハクア”なんだ。
なるほど、ルージュが最初に“ハクア様”って言ってたね。
となるとやっぱり、ルージュはこの白亜輪廻物語のゲーム世界の住人だってことなんだろう。
固有技能欄にグリエンタールの愛惜と一緒に並んででてきているってことは、また派生するスキルなんだろうけど、現在派生しているスキルは『悪魔契約』の1つだけ。
後は真っ白で何もない。
まぁ取れたばかりなんだから、あるわけもないんだけど……。
でもなんていうのかな。グリエンタールのスキルは、なんとなく他に派生しそうな枠があったりするから、派生スキルがあるんだな~? くらいには感じるのに、この白亜輪廻の方にはそういう枠すらない。
なんとなく、これで終わりなのかな?
って雰囲気がでている。
もしかしたら違う世界のスキルなのかもね。
ルージュは召還されて来ている訳だしね。
「どうかされました?」
「あ、ううん。固有技能が増えてたから見てたの」
「そうでしたか」
「うん。じゃ、いっちょやりますかぁ」
「御意に」
ボクの魔力回復量も約2/3にはなっちゃったけど戻ってきたし、そんな事よりもものすごい大きな魔力量を得て、魔力が今まで以上に回復したんだから、これ以上このまま攻められている必要なんてないのだ。
「それではわたしめがサポートを」
そういうとルージュがなにやら自分の前に無数のウィンドウを広げた。
ボク達が使っているステータスウィンドウとは全く違うもので、色とりどりの枠が重なり合ってルージュの前方に半円型になって浮かんでいく。
「どうぞ」
……おお、なるほど。
すごい。何をすればいいのか頭のどこかに情報が入ってくるような感じ。
敵戦力1匹1匹すべてに標準が合わさっているのがわかる。
ルージュの情報がボクの視界に反映され、次に何をすればいいのかすらも。
後はつまり……
「創生光魔法術式・光線槍」
ぶわっと一瞬の熱量が手を掲げたボクの前身から放たれる。一筋が直径約1センチ程の光で、無数に空へと向かい一直線へ舞い上がった。
ある一点まで直進した光が、それぞれのモンスターに向かって反射でもしたかのように、急に角度を変えて襲い掛かるように軌道を描いた。
地上・空問わず、すべてのモンスターへと光の筋が降り注いでいく。
光魔法なのでものすごい眩い光を発するが、音が一切しない。
一瞬の眩い光の後には、墜落していく無数の影だけが明け初めた夜空に輝き墜ちてゆく。
「おおう……」
恐ろしく低コストで、恐ろしく精密な魔法。
そのすべてがモンスターの急所へと向かって正確に貫いたのだ。
もちろん、1撃で死なないモンスターもいれば、避けたモンスターだって少なくはないだろう。そもそも火力が弱すぎて効いてすらいないモンスターもいるようだけど……陸上・空中合わせて、未だ200万を下回っていなかったであろうモンスターの数が一気に激減したのは確か。
突然起きた出来事に、城壁の上で戦っていた兵士達が何事かと砦の上を全員で見上げていた。
あ、やば。めちゃくちゃ恥ずかし……
うん?
あ。見てるのはボクじゃないな。
ルージュの方だ。
……客観的に見たら15歳の白い少女と、謎の褐色美女。
どっちがやったっぽいかって……そりゃ謎の褐色美女でしょうね。
いいけどね!? 別に手柄が欲しくてやったわけじゃないんだし。
別に気にしませんが!?
視線を集めている事に気づいたのか、ルージュがさっと後ろに下がった。
ボク達が今いる砦の方が城壁よりも建物としての背が高い為、地上や城壁の上にいる兵士からは見上げる形になっているので、ルージュが中央側に下がると姿が見えなくなるのだ。
ルージュが見えなくなったのでボクに注目が集まってしまった。
別に目立ちたいわけじゃないので、ボクも下がる。
下のほうからは
「誰だ? あいつら……?」
だとか、
「シルヴィア様の隠し子か?」
とか聞こえてきている。
おい、お前ら。シルに聞かれたら殺されっかんな!!
シルの事何歳だと思ってんのよ。
同じ年齢の隠し子とか聞いた事ないわ。
むしろ年齢的に言うのなら、ラインハート公爵の隠し子なのか? みたいな会話ならわかるのに、何故そこでシルの隠し子なのか。
「フフ。まだかなりの数の敵が残っておりますね」
「数がこれだけ減らせただけでも十分なんだよ。ありがとね。ルージュ」
「いえ。感謝等不要にございますれば。……ところで主様。わたしめに良い考えがあるのですが、少し戦場へ足を運んできてもよろしいでしょうか?」
「うん? モンスター侵攻への打開策ってこと?」
「左様にございます。うまくいけばここからさらに半分は数が減らせるかと」
「おお! それはすごいね! 是非お願いしたいかも!」
「では。行って参ります」
そういうとルージュが砦から飛び降りていった。
体は人間並みに弱体化したといっても魔法は使えるし、参考にされた肉体が肉体なわけで。
この程度の高さからなら問題でもないね。
先ほどの光線魔法で、200万以上いたモンスターは明らかに半分程度まで数を減らしただろうし、何よりも空を飛べる敵勢戦力が壊滅的なほどに激減したのが大きい。
これでこちらの城壁が落とされる可能性もかなり低くなり、城壁にいた兵士達の慌しさも、ボク達を見上げてポカンと出来るくらいには落ち着き始めていた。
とはいえ、ボクも100万本以上の魔法を一度に放ったのだ。いくらコスパの良い魔法で、魔力量が桁違いに増えたとはいえ、量が量なので増えた魔力をまた一気に使い果たしてしまった。
普通に約200万本の光線を放ったのだとしても、2万しかないボクの魔力量から換算すれば、あの光魔法1本辺りの消費魔力は0.01だということになる。
たったそれだけの魔力で相当量のモンスターを屠ったって事になるんだよね……? まぁ、魔法がすごいというよりは、あのロックオンさせた緻密な演算がすごいってことなんだけど。
今後どうなるか判らない怖さは消えないけど……。
頼ってみても……いいのかなぁ。
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