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あればあるだけ使っちゃうわよ。って言われたなぁ。

「ヴィンフリーデが群れを抑えられている間に門を塞ぎなさい! この際開閉なんてできなくなっていいわ! 工作魔道兵総出でかかりなさい!!」


ティオナさんの戦場を通る声で指示が飛ぶ。

ヴィンフリーデさん1人を城門の外に取り残し、破壊された城門が塞がれていった。


ヴィンフリーデさんのことを知らずにこの光景なんて見ようものなら、1人を犠牲にしているよう見えるけど、まぁここにヴィンフリーデさんの実力を知らない人はいないからね。大丈夫なことを信じて止まないんだよ……。


ティオナさんはモンスターの群れに突っ込んで、大型モンスターを各個撃破に回っている。

突っ込んだ時点で四面楚歌。

360度を敵に囲まれた中で大型モンスターを倒さなくてはならない。ものすごい戦闘力だと思う。

ちなみに人間同士の場合、どんなに囲まれても一度に4人を相手取れればいいと言われることもあるが、モンスターにそんな常識は通用しない。


仲間のモンスターの肉が裂けようが、命が吹き飛ぼうが、ティオナさん1人を狩れれば相手は勝ちなのだから。

つまりモンスターの死角から、別のモンスターの攻撃が飛んでくるわけなのよ?

それでも負けないティオナさんとヴィンフリーデさんは本当にすごいと思う……。

思うんだけど……流石に2人とももうボロボロ。

見ているボクの方が怖いし焦ってしまう。


モンスターの物だけではない血で体中は染まり、辛うじて体に引っ付いている程度の防具。体を覆っているそれぞれの白と黒のオーラも、途中途中で燃料切れのように消え始めている。


ここに来るまでにも大規模な戦闘をこなしているヴィンフリーデさんとティオナさんにも、流石に疲れと魔力の底が見えてきていた。

そもそも、この2人に関しては超級危険種を1対1で切り結んで、さらには一つの戦場を終わらせ、そして数百キロはある道のりを飛ばしてきたのだから当たり前なんだよね。


無理をしているティオナさんほどではないにせよ、ヴィンフリーデさんもかなりまずそうだ。光が弱まり金色に見えてきている。




ボクはというと、ティオナさんの命令で城壁に設置盾(アンカーシールド)を張り巡らせていた。


今の状況で一番あってはならないこと。

それは、城門以外の城壁を崩され、そこからモンスターが流れ込んでしまうことだ。

今はヴィンフリーデさんが唯一の穴である城門を抑えてくれているが、それが意味を成さなくなってしまってはもう抑えることができない。


城門内広場が片付き、城壁に補給と交代魔道兵がやっと配備できる様になってきた今、城壁のどこかが崩れてしまえば、そのすべてが無意味となってしまう。


その対応としてボクが狩り出されることになった。

実際、ティオナさんはボクが次元魔法を行使したところを見たことはないはずなんだよね。悪魔が次元魔法を妨害していた場面でしか一緒に戦場に立ったことがないんだから。


足場として設置した次元魔法を一目見ただけで、こういう事もできるだろうと把握したということになるのかな?それだったら流石の一言に尽きるけど、もしかしたら道中でヴィンフリーデさんに聞いていたのかもしれない。


やっぱり、いざ魔法を張り巡らせて周ってみると城壁はものすごく大きかった。

6キロもの範囲に及ぶのだから、そりゃそうなんだけど。

既に魔力が底を尽いていたボクは、ウルさんの食事バフがまだ残ってはいるのにもかかわらず、魔力回復毎にしか設置盾(アンカーシールド)を城壁に張ることができず、中々作業が進んでくれない。コストパフォーマンスのいい魔法とはいえ、これだけ乱発していれば底もつくのだ。


城壁の真ん中である城門部にはヴィンフリーデさんが居てくれるので、ボクの仕事は城門から一番遠い場所から。所々崖が低くなっており、突破されそうな城壁を優先しつつ、設置盾(アンカーシールド)で城壁を守っていく。




城壁にシールドを張り始めてから1時間くらいが経過しただろうか……。

やっと両側の城壁に設置盾(アンカーシールド)を設置し終わった。


とは言え、このままじゃ本当にまずい。

いつティオナさんがモンスターの群れにのまれてしまうのか、気が気でないくらい張り巡らせているオーラが弱っている。

ヴィンフリーデさんも同様でもう限界だ。

さっきから魔法なんか一度も使っていない。

2人とも気力と剣技だけであの量のモンスターを止めているのだ。


「ティオナさん! 終わりました!!」


また突っ込んでいこうとするティオナさんに転移で近寄り、抱きしめて止める。


もう傷も癒せていない。

体中が痣だらけで、かなり深く抉られているような傷も負っていた。

この状態で、よく四肢が無事だったと思うほどには酷い状態だ。

既に意識も混濁していたのだろう。

後ろから抱きしめて止めると、そのまま脱力して気を失った。


すぐに砦につれて帰ると、リンク様の治癒をしていた治癒師が慌てながら迎えてくれた。

すぐさま治癒に移ってもらう。

治癒師の2人が女性でよかった。

もうティオナさんの体には殆ど防具と呼べる装備が残っていなかったのだから。




次はヴィンフリーデさんだ。

そう思い砦から出ると、丁度見たことのある人にヴィンフリーデさんが抱きかかえられている所だった。

女性とは思えないフォルムの筋肉をした茶色い姫騎士隊の人だ。


「よく頑張ったわね。ヴィンフリーデ。少し休みなさい。」


その隣にはシルがいる。

そして押し寄せるモンスターと交戦する7人の騎士。


「レイラ、ライラ。ヴィンフリーデを医務室へ連れて行ってあげて。ティオナもきっとそこにいるだろうから、貴女達は看病をしなさい。」

「了解。」

「はいっ!」


そこまで指示を出し、ヴィンフリーデさんを運ぼうと砦の方を向いたシルと目が合った。


「……どうにか間に合ったのかしら?」

「ティオナさんとヴィンフリーデさんの限界までにはね……。」


「ごめんシル。報告しておかなきゃいけないことがあるよ。」

「……? 何?」


「……。」

「どうしたの?」


「……シルのご両親が……行方不明かも……。」


シルの動きが一瞬止まった。

目を瞑り一つ頷くと、再度ボクと目を合わせる。


「……でしょうね。お父様やお母様がいたらこんな状況にはなっていないもの。むしろ少し安心したかしら。既に亡くなっているかもしれないって覚悟はしていたから。」


そういうシルの表情はとても悲しげだった。

当たり前だけどね。

まだ死んでしまったと決まったわけでもない。

だけどシルの両親や、一緒に消えてしまった戦術兵の皆を捜しに行くには、この状況をどうにかしてからでないといけない。


刻一刻と迫る時間が絶望を刻んでいく。


この戦いは山脈防衛の時とは違い、この砦を落とされてしまっても、ある程度の規模、蹂躙を許してしまうだろが、再起はできる。

山脈軍を再編した部隊もまだ後続として控えているし、時間さえある程度稼げればもっと大きな部隊の構築も可能。それにロトのモンスターパレードさえ落ち着いてしまえば他国からの援軍も期待できるはず。

……まぁロトが陥落なんてことにならなければ、の話だけど。


でも、もしここを落とされてしまったらシルの両親を探しに行くことはできない。

そうなれば生存は絶望的だ。


ここで負ける事は許されない。

尽きた魔力がどうにか回復しないか数字を追いながら打開策を考える。


……あれ。おかしい。


どうも魔力が回復しないと思ったら、ボクの魔力回復量が12しかない。

さっき空間収納にしまっていたものはすべて出したはず。

それどころか、空間収納にしまっていた物をすべて戻したとしても、それよりはあったはずなのに。


確かにウルさんの料理による回復量の上昇効果は切れてしまったようだ。


思っていたより効果が短かったのは、料理自体が即席だった事と、効果効率を極端に求めたせいで、効果時間の考慮は一切いれていなかったからだろう。


それにしたって、12って。


グリエンタールの魔力増幅効果は……消えていない。

その時点でおかしいのに。なんで?

料理の反動だろうか……?


今は一刻も早く魔力は回復して欲しいけど、あの時点で魔力は必要だったから仕方ないとは言え……。

反動ならいいんだけど。


いつ元に戻るんだろ……。





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