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今まで取得したすべての力を使って。

インターセプトの欠けた魔法構造部分に、空に浮かんでいるどでかい魔法陣の内容が手のひらサイズに圧縮されて記載されていく。


うげ……魔法陣が魔法陣だからだろうか。ものすごい速度で魔力量が減っていくのがわかる。


「ごめんシル、ちょっと次元収納に閉まってる物、ここに一旦出すよ!」

「え? い、いいけど、何をしているの?」


「転写!」

「え? 転写?」


「そう! あの魔法、奪えないかと思って!!」

「え……えぇ……?」


ぽんっ


ぽんっ


びちゃ。


ああ……。蜘蛛肉の瞬間冷凍品が、そのままの形で外に投げ出されたせいで、飽和食塩水があたりに零れ落ちてしまった。

もちろん中身も一緒に。

他の瞬間冷凍品は、まぁ冷凍されててカチカチに凍っているから、解ける前にもう一度戻せばいけるだろうけど……。


空に浮かんでる魔法構造の内容が多すぎて終わる気がしない。

魔力回復量を完全に戻した所で、自分の魔力量が持つのかが勝負の分かれ目になりそうだ。


あ、そうだ。どうせダメになるなら……。


「シル! そのお肉ウルさんに渡して調理して貰える?! 高級品だからいい料理が作れるはずだよね?! できれば魔力量が増えたり魔力回復量がいっぱい上がる奴だと嬉しいかも!」


「わかったわ。」


《ウル。ちょっときて。》


「はいはーい?」


すぐそこにいたのだろうウルさんが、呼ばれて1分も経たないうちに顔を出してくれた。

魔力が尽きるほうが早そうなこの状況では嬉しい限り。


「レティがあの魔法陣を止めようとしているようなんだけど、魔力が足りないんですって。即席で作れる料理で、魔力ができるだけ回復する料理、作れるかしら?」

「おっけぃ! あの魔法陣壊せなきゃまずいんでしょ?? じゃあ私が持ってる食材もフルに使って、最上級な奴を作るよ!」


「お願いするわ。」

「まっかせてよ! ……あれれ? これ、こないだの蜘蛛肉じゃない。凍ってるけど使えるの? 確か取ったの1週間も前だよ? ……ん? 全然腐ってないね。」


「ええ、溶かせば普通に食べられるわよ。昨日実食済みだから大丈夫。」

「へぇ……今度方法教えてね?」


「この戦いが終わったらレティに好きなだけ聞けばいいわ。」

「……これいいなぁ。凍らせればいいのかな? でも……」


ウルさんが蜘蛛肉を大量に抱えてブツブツ言いながら、隣にある調理場まで運んで行った。


「調理時間はどれくらいとれるの?」

「後3分くらいしか余裕がないかもっ!」


「3分で料理なんて作れるのかしら……。」


前世には3分○ッキングなるものがあったけど、あれは放送枠が3分なだけであって、実際には”出来上がったこちらの物”がなきゃ3分で調理は終わらないモンね……。


「はい、できたよー!」

「はやっ!」

「さ、流石ね。」


ウルさんの料理は、時間を掛けないで作るっていう条件の場合、出来上がりをレンジでチンするより早く料理ができるようです。魔法ってすごいね……。


両手がインターセプトの魔法陣の構築中で離せないため、ウルさんが食べさせようとしてくれた。


「はい、解凍の手間もあったからそのままボイルして、他の食材の美味しい部分を溶かして作ったこの特製ダレにてお召し上がれ!」


「あふっ! あっふい! でもおいひいっ!」


手が使えないので口の中を火傷してでも口に入れないと落としてしまう……。


「お次はこちら、焼売の皮で包んだ焼き蜘蛛肉だよ! 他にしいたけ、ねぎ、豚さんのお肉、にんじん、しょうが、調味料にお豆腐でタネを作ってあるよ!」


今の時間でどうやってその量を調理したのよっ!?


「はいっ!」

「あひっ!」


さっきのボイル肉を食べさせてくれた時もそうだったんだけど、ウルさんの身長的にボクに食べさせようとすると、背伸びして手を伸ばしてやっと届く距離なのよ。


つまりぎりぎりの高さにおいてってくれるので、料理の逃げ場が口の中以外にありえず……。

うぅ……口の中の皮が火傷で剥けてきました……

でもおいしいです……


「次は小籠包だよ!!」


ちょっと待って!!

そ、それはダメだってぇぇぇ!!

ってかなんで小籠包なんてこっちの世界であるのよぉぉ!!


「ひぃぃっ!」

「ウ、ウル。(わたくし)が食べさせるから貸して……?」


「? ……はい、シルヴィア様もあげたいの?」


餌付けみたいに言うなしっ!


「はい、レティ。ゆっくり食べてもいいわよ。」

「ありがとうシルぅ……。」


もぎゅもぎゅ。


「……ちょっと楽しいわね。」

「でしょ!?」


ボク動物じゃないんですけど……。


「どう?魔力量は。足りそう?」

「あ、そうだった。うーんと……。あ、回復してる!」


インターセプトの欠けた魔法構造に、あの夜空一面に輝く魔法陣の6割以上の転載は終わっている。

この分なら余裕で足りそうだ。よかった。


「大蜘蛛のお肉は魔力の流れをよくしてくれるから。これがあったおかげかな。」


思いつき万歳。




「姫ぇ!! 討ち取りましたわよぉ!!」


ティオナさんの戦場をぶった切る大声が聞こえてきた。

どうやらあの上位悪魔も倒したよう……だが、魔法陣が消えない。

少し余裕もできたので、ティオナさんのところに転移眼を使ってみよう。




「あら、まだ息があるの?黒いだけあってゴキブリ並にしぶといわね。」

■■■■(殺してや)……」


ぐちゅっ。


うぇぇ……。

飛んできた瞬間、ものすごいグロいものを見せられてしまった。


心臓の辺りで胴体と頭が分断されている悪魔の、脳漿がそこら中に飛び散っている。

下半身は細切れにされ、再生されないように先生にずっと焼かれて、爛れ落ちては再生を繰り返して、もはや原型をとどめていない。


脳から一線。剣を突き刺したところから見てしまった。

しばらく夢にでもでてきそうだ……。


人間で言えば脳の部分に剣が貫通しているのにもかかわらず、胸から上しかない悪魔の口がまだ動いて声を発している。


■■(ぐっ)■■■■■■■■(復活をお目にかか)■■■■■■■■■(れ無いのは惜しいが)■■■■■■■■■(ワレもあの方の一部)■■■■■■■■■(と成れるのであれば)■■■■■■■■(至上の喜びよ……)。」


それだけ言うと……

ぐしゃっという音と共に突然悪魔の体が液体のように溶けて流れた。


「はぁ。やっと終わったわね。」

「おっ、こっちも回復しなくなったな。これで本当に終わりだ。」


見た目は傷や防具に壊れた箇所もないので、それほど苦戦したようにも見えないのだが、ほぼずっと全開で戦い続けてきたのだろう。疲労が目に見えるかのように顔に出ている。


「消えないわね……。あれ。」

「消えねぇな。」


夜空一面の魔法陣は、未だ空を照らし続けてたまま。


「ヴィンフリーデでも壊せないの?」

「魔法陣ってのは物理的なもんじゃねぇからなぁ……。流石にヴィンフリーデでも、大地は割れても空は斬れねぇだろうよ……。」


「鬼がでるのか蛇がでるのか?」

「悪魔がでんだろうがよ。」


「どれにしても最悪よ。今の悪魔よりも確実に強い奴よね? 姫様は何か気付いたのかしら? 慌てているようだったけれど。」

「人類が対抗できる相手であれば儲けもんだな。」


「ほんと、最悪よ……。」


2人がとりあえず一息ついたところで意識を戻す。


「悪魔はどうだった?」


シルはボクの意識が戻ってきた瞬間にいつも話しかけてくれるけど、わかるんだろうか?


「気配がするのよ。」

「……ボクまだ疑問を口にしてないよ?」


「いつものことじゃない。」

「そうなんだけど……。悪魔はなんか突然水みたいにばしゃってなって死んじゃったっぽい。けど最後の言葉どおりなら、自分もあの魔法陣に取り込まれるんだって。」


「やっぱり独立してるのね……。後は、誰かが壊すか、レティが止めるか……、それか、主位悪魔の召還を許して立ち向かうか……。そのどれかになるわね。」

「う~ん、コピーまで後1割切ったから、奪うには奪えそうだけど……。魔法陣の主導権を奪ったからといって止められるかどうかはまだ微妙なとこかなぁ。」


「そうね……。ま、ダメで元々よ。まさかこんな置き土産を置いていかれるなんてね。もっと確実に殲滅するような戦略を考えておくべきだったわ。」


1週間の準備期間しかなかったのに、2倍以上の戦力差をよくこの少ない犠牲で倒しきった物だと思うけどね。

ただ、この召還魔法でもしもボク達の誰もが手に負えない悪魔なんてでてきちゃって、結局国が滅んだんじゃ、シルはくたびれ損じゃないか。


ここ1週間で合計10時間も寝ずに。

起きてる時間のすべてを費やして……。


そんなのダメだと思う。

努力は報われるべきだ。

すべてとは言わないけど、その努力を報いに変えられる手伝いはボクにだって出来るんだから。



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