気をつけていたのに、やってしまいました。。。
夜空一面を覆う魔法陣。
月の光の様に輝き、ただでさえ夜なのに明るい戦場をさらに照らしている。
魔法陣は時を刻むかのように刻々と移り変わっている。
「ばるはりとさま?」
「え?」
思わず悪魔が口走った名前を声に出してしまうと、シルから反応が返ってきた。
「って何? あの魔人……っていうか悪魔の人が祈願が叶うとかなんとか……。」
「バ……バルハリト……? あの魔人が本当にそういったの?」
「うん。今そういいながら空に魔法陣出してたと思う。」
「ま、待って。レティ、まず貴女魔人の言葉が理解できているの?」
「あ、うん。さっき先生があれは悪魔だって言ってたから、世界言語のスキルをとったら意味は理解できるようになったんだよ。発声が無理だから会話はできないけどね。」
「あのね。バルハリトって言ったら、神話の時代にあったとされる神魔戦争にでてくる悪魔の大公爵よ……? そんな名前がなんであの悪魔から……?」
「あの悪魔も上位悪魔なんだって。もしかして、そのバルハリトっていう大悪魔を呼び出すための生贄に大量のモンスターを集めてたんだったりしてね? ほら、それで人の活動圏に攻め込んだら、人族って他のモンスターや魔獣みたいに逃げずに応戦するだろうから、生贄を増やしやすいだろうし! ……な~んて! そんなわけな~あはは……」
あ~……。やっば。
ボク、何を口走ってるんだろう?
これ、どっちだろうなぁ……。
ボクがこんな荒唐無稽な事を口走っちゃったから、これからこれが本当になってしまうのか。
それとも、フラグという世界のシステムが、ボクにこの台詞を言わせたのか。
できればボクに責任のない後者であってほしいなぁ……。
「…………。」
シルもその可能性を考えているのか、空に浮かぶ魔法陣を見つめながら黙り込んでしまった。
実はボク、魔法陣読めるんだよなぁ……。
グリエンタールさんのお陰で。
そしてあの魔法陣はかなり大掛かりな犠牲を元に、何かを呼び出そうとしている。
大まかにはそういう意味の魔法陣だけど、なんせ夜空一面に魔法陣が書いてあって、隅から隅まで読むには何日もかかるし、魔法陣が動いてるせいで読み辛い。
何が、どんな規模で、いつ、どこに召喚されるのか。詳細は全くわからなかった。
ヴィンフリーデさんが詠唱を始めた時と同じような感覚が大気を襲っている。
大気が振るえ、啼いている。
この戦場で死んでしまった兵とモンスター、そして同時多発的に起こっているモンスターパレードでの犠牲とエリュトスとの戦争による犠牲。
モンスターパレードは、ロトが応戦している規模をあわせれば1000万対1000万くらいの規模だ。
少ない規模なんかじゃ決してない。
両軍合わせたその被害は、途方も無い数字になっているだろう。
それが、この数日で一気に起きてきて……
そしてまだまだ増え続けている被害の総数だ。
「……それならあの魔人が、自分のモンスターの軍勢が劣勢に立とうが、超級危険種が罠にはめられているのに気づいていようが。何もしなかった事に辻褄もあうのよね……。」
確かに、それが疑問だって言ってたもんね・・・。
「多分、あの魔法陣は予定よりも構築するのが早かったんじゃないかしら。どう考えてもこの後被害は増していくのに、生贄が必要な儀式ならこのタイミングで発動する意味がわからないもの。」
確かに、もうすぐ討ち取られそうなくらい負けてたからね……。
「ってことは、どういうこと?」
「あの魔法陣、動いてるじゃない? まだ構築中なのよ。」
「あの動きが止まったら?」
「上位悪魔らのさらに上、バルハリトっていう主位悪魔が召喚される可能性が高いのでしょうね。」
「……召喚されたら?」
「グルーネだけじゃない。人類そのものが終わりね。モンスターパレードが1000万の規模なんて可愛い物だと思えるくらいの地獄が、その先にあるってことになるわ。」
《ティオナ! フラ! ヴィンフリーデ!! なんとしても空の魔法陣が完成する前に、その魔人を討ちなさい!!》
《他に治療・工作・殲滅・回収を終え、手の空いた物は全員あの魔法陣を壊して! あれが完成したら我々の負けだと思いなさい!》
シルの突然の命令に、戸惑いながらも緩んでいた兵士の気が再度引き締まった。
シルが必要だと言った命令に疑問よりも行動で答えてくれるくらい、シルという指揮官はこの国で信用を得ているという証明だろう。
ボクは去年まで領土最奥の農民としてのほほんと暮らしていたから、こんな戦争や討伐なんか遠い世界の話だと思っていた中で、シルはずっとこんな事をもっと幼い頃から積み重ねてきたんだね。
立場や才能だけじゃ成し得ない信用が、疲れきっているはずの人々の体に鞭を打つ。
そう考えると、シルとはすっごい仲良しになれたけど、そんなに日も経ってないんだね。
1年どころか半年だって過ぎていない。
この魔法学園に入って、すっごい濃い日々を暮らしてきたから、なんかすごい長く感じるんだよね。
「嫌だなぁ……。」
ボクはまだこの生活を後2年半は続けるつもりだったのに、こんな所で横槍を入れられるのは。
「レティ?」
都合よく魔法陣が描かれているという事は、魔法構造が把握できるということ。
まだ、ちゃんと触っていなかったけど、多分あれが使えるんじゃないだろうか?
まぁ使えなかったら使えなかったで、悪魔が倒されるか魔法陣が壊れるか。
……それとも魔法陣が完成してしまうのか。それを待つしかないだけで、やってみるに越した事はないのだから、手段があるなら試すべきだ。
「特殊魔法術式 略奪」
ボクの掲げた右手の前に、手のひらよりも少し大きな魔法陣が浮かび上がった。
魔法構造の一部が欠けた魔法。
ただ、これがこの魔法の魔法構造として正しいのだ。
グリエンタール
純白の魔法Lv10 固有魔法”インターセプト”
略奪。つまり相手の魔法を奪う魔法だ。
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