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流石、国の精鋭部隊なんだよね。

大型種の大群による一点突破を止めた次の瞬間には、後続のモンスターが森から飛び出してきていた。

隊列を少し横に広げるように位置取った防衛軍が、モンスターを包んでいくように両翼の先端が山側に突出していく。




モンスター軍の先鋒は、機動力が桁違いのウルフ種といった魔獣の群れが一気に飛び出してきた。

群れ毎なのか一定数に固まった魔獣が扇状に広がり、各防衛軍との交戦の火蓋がきられていく。


後方から飛んでいく魔法が闇夜を照らし、モンスターの群れに大きな打撃を与えていくが、如何せん数が多すぎて処理が追いつかず両翼・本隊共に交戦状態となった。


「我々は右翼頭上に!」


ヴィンフリーデさんの指示を受け、右翼軍の真上に光源魔法を設置していく。


左翼と本陣でも同じ魔法が同時多数的に設置されていくのが見えるのは、各遊軍が初動で同じ対応を任されている為。まずは夜であるモンスターの優位性を少しでも減らさせてもらうとするわけだ。


「我々はこのまま森を抜けようとしてくる雑魚共を蹴散らす! 合図があるまでに殲滅せよっ!!」


シルロ村北部決戦地である広大な平原に部隊を展開している防衛軍は、山道の出口を覆うように展開しているが、山道の出口は防衛軍側から見て右半分から右側数百メートルが森に覆われている。


殆どのモンスターは大群になって真っ直ぐ防衛軍と衝突しているが、一部モンスターがこの森を通って北東側に抜けていこうとするのを防ぎに入る。

思惑通り、ゴブリン種等低脳モンスターが多数抜けてきていた。


「強化魔法をっ!」


殲滅に散る前にイオネちゃんの強化魔法が全員に入る。


「助かる」

「お姉ちゃん、いくよっ!」


双子の2人は森の中だとは思えない速度で木々の間を抜けていく。

後ろを懸命に追いかけてみるも、あの距離を走って特訓したはずのボクでも全く追いつく事もできない。ボクが通る頃には、首と胴体が綺麗に離れた死体だけがゴロゴロと転がっていた。


あ、あの2人本当に魔法使えないの……?イオネちゃんの強化魔法が入ってるとはいえ、それはボクだって同じなのに。


2人の後を追っても意味がない。

ヴィンフリーデさんは森から山道までの間へ向かっていったので、ボクは反対側。森を抜けていったモンスターを追う。


「フィリシアさん! イオネちゃんをお願い!!」


正直なところ、ここ最近の猛特訓でボクは自分の走りには少し自信を付けていたのにもかかわらず、簡単に追いつけなくなった事に少なからず嫉妬したんだと思う。

本来であればフィリシアさんが向かった方が早いであろう事はわかっていた殲滅箇所へ咄嗟に走ってしまった。そりゃ、フラ先生達に全く追いつけもしなかったんだから、こんなものなんだろうけどね……。


「承知した!」


快く送り出してくれたフィリシアさんの為にも、こんな簡単な事もこなせないんじゃ自分を許せそうにない。一刻も早く殲滅して戻らないと。

ボクの担当する場所は一番山道から離れているのだから、殆どモンスターや魔獣の影はなく、10匹も数えない間に殲滅対象を確認できなくなった。


これ以上進んでもしょうがないのでイオネちゃんの場所まで戻ると、森の中を一通り駆け巡ったのだという双子と落ち合う。2人は強引に森の中を突っ切って枝や草葉に汚れた痕もなく、今ここに着いたかのような状態。

対してボクは強引に森の中を進んでしまったので、傷は癒せるものの肩や顔に緑色の痕が無数に付いていた。対抗心を燃やすわけじゃないけど、単純に感心してしまう。


全員が一瞬顔を合わせると、そのまま走り出した。

ヴィンフリーデさんが殲滅したまま陣取っているであろう森の入口側へ援護に向かう。


「リヒト・ゲフェングニス!」


ヴィンフリーデさんはすぐに見つかった。

見つかった……と言うかそもそも探してもいないんだけどね。

だって森の中で1人、ずっと金色に光り輝いているんだもん。

そりゃ誰の目にもつくよ。

もちろんモンスターにも。


さらにそれよりもわかりやすい目印がもうひとつ。

1人で森のほうへ流れてきているモンスターを塞き止めているのだ。

ヴィンフリーデさんの後ろにはモンスターの死骸の山がいくつも築き上げられていた。

その山の中には5メートルはあるであろう巨大な大型種から、上位種であろう他とは違う色や形のモンスターまでおり、森の頭を抜けて死骸が連なっている。


さっきからモンスターの死骸とパーツと液体が宙を舞って止まないのだ。




丁度援軍に着いたところで、どでかい光の十字架が何本も森に突き刺さり、森に入ってくる道を塞いだ所だった。

光の十字架は森を悠々と突き抜けるくらいの大きさで、本部からも視認できるほどに大きな物を()()()張っている。

モンスターが光の十字架の立っている場所を抜けようとしてくるが、触れた箇所から爛れ、崩れ落ちていく。結界のようなものだろうか。十字架の間を潜ろうとしているモンスターも、同じように崩れ落ちていく。


「たいちょ! 任務完了したよっ!」


ライラさんが報告するとヴィンフリーデさんが振り返った。

全身がモンスターの返り血で黒く染まっている。


モンスターの血の色はその種類によって変わる。

何十種類もの血が入り混じった色。


「よし、所定の位置まで引く。レイラ。信号弾を。」

「おっけ。」


全員で森を抜けると、レイラさんが空に向け赤色の信号魔法を放った。

後ろから光の十字架が眩い光を発しているので、無色だと見えないほどなのだ。


フィリシアさんが何も言わずにヴィンフリーデさんの体に向けて水魔法をぶっ放した。

一瞬で黒く変色したモンスターの血が洗い流されていく。


《作戦を第2フェーズへ移行。左翼A3・A2は後退。A1とM1はサポートに回れ。》


ボク達が森から抜けると、横ばいに広がった戦線が動いているところだった。


引けー! 引けー! 

という怒号が左翼側から聞こえ、明らかに戦線を押されているかのように後退を始めたのだ。

片翼が崩れ、『凹』型だった陣形が『ノ』の字のように押され始めた。


《各隊戦術兵を最前線へ! なんとしてでも踏ん張りなさい! ……山岳工作隊、今!!》


シルの号令と同時に、山から爆発音が聞こえる。


《M1は後退サポート後、制空権を確保にまわれ!》


「姫ぇ!! まっかせてぇ!!」


空からものすごい大きな声が聞こえた。多分地声だろうけど、返事をしたってことは遊軍1番隊のはず。ってことは森を抜けたばかりのボク達から見て真逆の左翼側にいるはずなのだ。数キロは離れている場所から声が届いたことになる……。この爆音飛び交う戦場の中で、だ。


「……ティオナ様。恥ずかしいわ……。」

「もうなれたよ私……」


双子の2人が苦笑いをしながら俯いてるし、シルのことを”姫”と呼んでるってことは、あれが双子の主、ティオナさんってことなんだろうね。




モンスター軍は、今が好機とばかりに次々と左翼に流れながら数を増やしていく。

森から右翼側へ合流に向かうボク達M3隊は、その間のモンスターをなぎ倒しながら進む。


「レティーシア殿! 航空戦闘の経験は!?」

「ありません! でもいけますっ! 頑張ります!」


「その意気やよし! フィリシア、ついてきなさいっ! レイラとライラはイオネ殿と右翼のサポートへ回れっ!」

「了解。」

「はいっ!」

「わかりましたっ。」


空へ飛ぶ。

飛ぶと言っても飛行魔法があるわけじゃない。

次元魔法”飛天”を応用しているのだ。


ボクの場合、飛天はほぼ無限に使えるが、ヴィンフリーデさんとフィリシアさんはそういう訳ではないので、比較的高い木々と空を行き来している。




山脈側の空からは飛行型のモンスターが、闇夜を背に空を覆い尽くしていた。

空からは戦況がよく見える。

右翼側はモンスターの層は薄く見えるが、とはいえ互角。拮抗している状態だ。


本陣側から、左翼に視界を移すにつれ、モンスターの数が尋常じゃない量で増えていく。魔法も飛び交っているから、モンスター側にも魔法が使えるだけの個体がかなりの数いるのだろう。そんな中で、各部隊激戦区ではモンスターに囲まれている10人程が戦線を保っていた。


さっきシルが言っていた”戦術兵”だ。


個人が突出した能力を持っている場合、軍隊として運用するよりも、個人として運用した方が強い個人がいる。その人たちのことを、戦術兵と呼ぶのだ。

1人1人が着かず離れずの距離でモンスターに囲まれながら互角以上に渡り合っている。


もちろんモンスターの中にも、かなり凶悪な”特級危険種”と呼ばれる個体がそこかしこに見受けられている。難易度表記がZを越えるモンスター群だ。難易度がZを越えると、ZⅠ、ZⅡと表記されていき、現在設定されている最高難易度はZX。つまりZ10だ。

それを受け持っているのは戦術級パーティ。戦術兵が個人で能力を発揮するのであれば、戦術級パーティはもちろんパーティで高い能力を発揮する。




この最前線にいる上級兵がどこかでも崩れれば今にも戦線が崩壊しそうな状況の中。




ボクの後ろからはゴゴゴゴゴという地鳴りが響いてきた。




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