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実技試験は、いつもは外でやっているんだって。

一般昇級試験筆記試験合格者8人の最初の実技が全員終了すると、今回の実技についての採点がそれぞれに配られた。


口頭では発表されなかったのは配慮なのか、自分で採点の意味を把握するようにという意味なのか。


意外だったのは、最初に思っていた通りの採点基準5種についての実技試験なのかと思いきや、きちんと6種すべての評価項目に点数がついていたことだった。


ボクの試験はまだ先なので、後ろから皆の点数を覗けるんだけど、向こうからしてみたら年下の女の子で上級試験を受けに来てる子なものだから、覗きにいくと自分の採点を快く見せてくれるのだ。


「ねぇねぇ。これどういう採点になってると思う? なんかアドバイスとかある?」


一般昇級試験受験者で唯一の女性である2番の女性の採点を覗いていると話しかけられた。


「お姉さんの場合、的を射ぬけって言われたのに1発当てて止めちゃったから殺傷性・多様性の採点が低いんだろうね。」

「あ~なるほど、”抜け”ってことは赤丸全部潰して100点か。」


「こら、そこ! 試験中にアドバイスを求めるな! 君も、アドバイスをしちゃだめじゃないか。」

「え~、コミュニケイション能力とか、人の意見を聞けるっていうのは冒険者としての才能にはならないのー?」


女性がぶーたれて文句を言うけど、ダメな物はダメらしい。

先に注意がなかったので、今回は特にお咎めもないようだ。




「次はあれだ。」


先ほどの的とは打って変わって、今度は単なる岩のようなものが這い出てきた。

また3つなので3人ずつやるのは変わらなそう。


「30秒であの岩を出来る限り砕け。」


「えぇ!? 30秒!?」

「うっそぉ……。」

「まじかよ……。」


今度は番号の後ろから順番にやるらしい。19番、14番、11番の3人が横に並ぶ。


全員男性で、19番は1番と同じくらいの20代前半。見た目は1番と違い一言で言えばチャラいというのだろうか。気だるげだ。

それでも筆記をクリアしてるのだから、頭もあるし、やる気もあるのだろうけど。

14番と11番は40代前後だろうか? 少しおじさん。ボクはあのくらいの人たちに囲まれたらトラウマが出てくるだろうなぁくらいにはおじさん。


「開始!」


さっきの的当ての時にも使っていたのだけど、19番の男は魔道具を使っている。魔道銃だ。

多分あの人貴族だろうなという雰囲気もあるし、まぁこう言っちゃなんだけど、出来損ないの家督相続権が無い程度の貴族家のご子息とかだろう。


魔道具くらいを買い与えられる位には余裕のある家柄ってことだね。


魔弾が銃声と共に発射されるが、岩に当たってぺチンと魔弾が砕けた。

ひとかけらの損傷も見当たらない。


さっきは曲がりなりにも的は貫通していたので、単純に岩が硬いのだろう。

何発打ってもびくともしない岩に怒り狂った男が、岩の近くに寄り魔道具で殴るが、当たり前だけど筋力もない体型で殴った所で魔弾以上の威力がでるはずもなく。傷一つ付けられていなさそうだった。



他の2人のおじさん達は、槍と棍使いなのだろう。

特に目を見張るスキルがあるわけでもないけど、棍使いのおじさんの方は岩に傷ができ初めている。

削れ始めてはいたが、30秒があっという間に過ぎて実際は傷が少しついた程度で終わってしまっていた。


「次!」


そのまま全員が受けさせられるが、まともに岩が削れたのは1人だけだった。


10番の男性で、なんとこの人。拳で岩を削ったのだ。

あれはびっくり。思わず拍手してしまった。

砕いたというほどではなく、削れた程度だったけど、まともにダメージが入ったのはその人だけだろう。


試験内容からして、殺傷性に重きを置いてる試験ぽいだけに、10番の男性の評価は高そう。


この人、最初の試験でも短剣を5本投げて赤丸を射抜いていたし、もしかしたら現段階で一番評価の高い人はこの人なんじゃないかな?

あながち間違いではなさそう。

どれくらいの基準で合格できるのかはわからないけど。




2つ目の実技試験が全員終わった所で、また採点が配られた。


残念な事にお姉さんの殺傷性と多様性はかなり絶望的だ。

正確性はまぁまぁ。対応性・迅速性はそれなりで、適応性は低め。


その評点が書いてある紙をこっそりと見せてもらっていると、文字で”対応すべきはどこだと思う?”って書いてある。このお姉さん抜け目ないね……。


とりあえず殺傷性と多様性はこの際切り捨てて、正確性・対応性・適応性を伸ばすべきじゃないだろうか?? 指で指してあげた。


片目を瞑ってウインクしてくれる。

おじさん達に囲まれている中、お姉さんがいてくれてありがたいのでお互い様です。


「最後はこれだ。」


試験官がそういうと、今度は1体のゴーレムが這い出てきた。

おお、造型操作魔法術式は物としては知っていたけど見るのは初めて。


「勝つ必要はない。各自自分の能力に合わせてこのゴーレムに接敵した場合の対処をせよ。接敵時、パーティはおらず1人だったものとする。」


敵の能力を見定めて、自分の能力に合った対処をすればいいのね。

あのゴーレムの大体の強さは、クエスト難易度でいうなればF程度。

つまり、ここで試験を受けている人たちが個人で倒せるはずがない敵だ。


「制限時間は1分。でははじめ!」


軒並みの戦士が一度は切り結ぶ中、10番の男性、2番の女性は開始の合図と共に罠を張り、1分を余裕で逃げ切る。

19番の貴族の男は、逃げながら1分間銃を撃ち続けた。


全員の個人戦が終わると、今度は2班に分けられる。


1班目が1番、3番、6番、19番。

2班目が2番、10番、11番、14番。


この時点でわかっている各受験者の特徴は……。


1番。20代くらいの男性。剣を主に前衛戦士スタイル。

2番。20代くらいの女性。弓をメインウェポンに、短剣も扱う。

3番。30代中盤くらいの男性。剣を主に盾持ちスタイルの格好で戦う。盾はない。

6番。30代くらいの男性。短剣と短剣の投擲スタイル。

10番。20代中盤から後半くらい?多種多様な武器を扱える拳闘士。

11番。40代くらいの男性。槍を扱う前衛戦士スタイル。

14番。40代くらいの男性。棍を扱う特殊前衛スタイル。

19番。20代くらいの男性。魔道銃のみを所持する後衛。


こんな感じ。

まぁこの中でなんで? って思ったのは、格好と装備が一致しない3番のお兄さんくらいかな。

だってどうみてもあの格好盾が無きゃ成り立たないでしょ。


「この2班で先ほどのゴーレムと戦闘をしてもらう。今度は戦闘試験だ。制限時間は10分。危険と判断されたら即座に戦闘を中止させる。」


まぁ班分けはバランスを見てってところかな?


単純な継続火力(DPS)で言えば、魔道銃を持っている19番の男が一番高いだろうけど、万全で繰り出す一発の攻撃力は岩での試験の時に見せた10番の男が一番高い。


遠距離をメインにしている戦力が2番の女性と19番の男性だけだから……

まぁこんなもんなのかな。


「あ、ねぇねぇお兄さん。なんで盾スタイルなのに盾持ってないの?」


別に話しかけるくらいなら怒られないよね?


「あ、ああ。よくわかったな……。昨日クエストで壊しちまってな。修理が間に合わず今日になっちまったんだ。全く。ついてねぇ。」

「へぇ。……創造土魔法構造(クリエイト)(アイアン)騎盾(ナイトシールド)


ボクが隠れるくらいの盾を作り出す。


「これでどう? 使えそう?」

「は……? え? いや、魔法で武器や防具が作れるのか?」


「普通にそこら辺で売ってる鉄盾よりは防御力があると思うよ? お兄さんも全力が出せずに失敗したら後悔するでしょ?」

「あ……いや……それはそうだが……。いいのか?」


「あ、職員さんがダメって言ったらダメだけど。」

「……ううん……どうしましょう? ギルドマスター。」


奥にいたおじいちゃんに職員が話しかける際、ギルドマスターという呼称を使った為、全員にその役職が判明することになった。

一段と空気が引き締まる。


「まぁいいだろう……。」


許可も出たので渡してあげる。ボクが隠れるくらいなので、お兄さんの身長からすると3分の2くらいの大きさだ。


「ありがとう。使わせてもらうよ。」


第1班が戦闘準備に入る。


この班は役割が明確に分かれているので判り易い。

3番の男性がタンク。

1,6番の男性が軽装前衛戦士。

19番の男性が遠距離魔道士だ。


試験官の合図と共に戦闘が始まると、3番の男性がゴーレムの懐に飛び込んだ。

盾の防御力がわからないので横薙ぎに払われるゴーレムの腕を恐る恐るという状態で受け止める。


思っていたよりも大分頑丈だったのだろう。

いけると踏んだ3番のタンクが単調なゴーレムの腕振り攻撃に合わせて弾いていく。


攻撃をする毎に体勢を崩すゴーレムを少しずつ削る他のメンバー。


ただ、どうしても火力不足は補えず10分で倒しきるには到らなかった。


3番の男性が終わるなりボクに向かって歩いてくる。


「盾ありがとう! これ、ちなみに売ってもらったりできるの?」

「ううん。無理だよ?」


「そ、そうかぁ。残念だけどしょうがないか……。」

「あ、違うの。それ魔法武器だからマナを定着させてないと、そのうち魔素が分解されて消えちゃうから。魔法が使える人でもマナを一定期間ごとに定着させ続けるのって大変だし、そもそも魔法が使えないと分解も阻止できないから。」


「そ、そっかぁ……。そうなんだ……。なるほどなぁ。ありがとうね。君のお陰で悔いの残らない試験になったよ。」

「いえいえ、まぁ見ててなんかね、おかしかったし。」


盾が無いのに、あるように左腕を上げながら戦っていたものだから、あのまま攻撃されてたら腕が持っていかれていたと思うんだよね……。

目の前でわざわざ嫌な光景を見たくなかったっていうのが、実は盾を渡した本当の理由だったりする。


そんなこんなで3番の男性の人に挨拶をされていると、第2班の戦闘が始まっていた。


今度は純タンカーがいないので、槍と棍の男性が2人で動きを制限し、女性の弓で牽制。火力は10番の男性に純粋に任せる作戦らしい。


ゴーレムの動きが単調なので長物で簡単に動きが制限されている。


10番の男性がタメに入り……。


ゴーレムの右ひじ部に放った拳が、腕から先を砕き落とした。

やっぱりあの男性だけちょっとここのメンツに入ると戦闘力が高いね。


牽制する腕が1本無くなった事で、棍を操っている男性も火力に参加し始める。

じりじりと削り続けるが、10分での決着はならなかった。


残念。首も取れて残すは両足と左腕だけだったんだけど。



でも結果としてはよかったんじゃないだろうか?

この中で唯一の貴族っぽい19番の男性が苦虫を噛み潰したような顔をしている。


ただ、ここで暴れたりや横柄な態度を取る事はしなかった。

多分魔法学園生であるボクの事を上位貴族だと思ってるからだろうね。流石に自分より上位の貴族がいる場で横柄な態度を取るほど馬鹿ではないらしい。


ま、ボク平民だけど。



最終的な合否は、また筆記のように審議の後発表されるらしい。


その間に、今度はボクの実技試験が執り行われる。

今のゴーレムで勘弁してくれないかなぁ……。してくれないよなぁ……。




何が出てくるのかなぁ。


蛇が出るのか鬼が出るのかって気持ちだよ。


はぁ。




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