試験開始!
「……。」
もうちょっと色々とうるさいと思っていたんだけど、研究室はいつに無く静かだった。
先輩達も相談は一通り終わったらしく、殆ど日常と変わらないことをしている。
まぁなんというか、流石はフラ先生の研究室に入ってくるような人たちだよね。
こんな事態でも落ち着いていられるんだから。
とは言え、ボクは試験勉強を残りの4日間……試験日が4日後だから実質3日間でしなくてはならないし、うるさすぎるよりはマシなんだけど……。こう本当に静かだと逆に気になってしまう。
違うよ? ……単純に試験勉強から逃げているだけなわけじゃないんだよ?
ほら、試験勉強とか始めると掃除し始めたりする、あの心境だよね……。
え? それを試験勉強から逃げているというんだって?
だって延々とモンスターの特徴とか特性とか種類とか生息地とか弱点、対処法、危険度に難易度、過去の事例……等々。
覚えることばっかでつまんないんだもん!!
覚えるのが苦手なわけでもないし、こういうのを覚えるのが嫌いなわけじゃない。
ただ短期間に作業的に知識を詰め込むだけというのはストレスが溜まるのだ。
発散したくても発散しているような時間もない。
「はぁ。せんぱーい。問題でーす。ワーラビットの特徴はなんでしょー? 3つあげなさい。」
「ん? 毛色に赤みがかかっている事。角が一回り大きく鋭い事。後ワーラビットは他の兎型モンスターとは違って昼行性だね。」
ちぇっ。流石にエリートが集まる学園なだけあって、こういうような問題はすらすらと答えられてしまうのね。兵科は脳筋の集まりとか、そういうわけじゃないらしい。当たり前か。
むしろ前線で体を張る兵科のほうがちゃんと頭を使わないと生き残れないか。
「何? レティーシアちゃん冒険者の昇級試験でも受けるの?」
先輩達皆に今週昇級試験を受けるって説明したわけじゃないからね。
先輩ってひとくくりに呼んじゃってるけど、11人もいるので色んな人と話してるんだよ?
ティグロ先輩だけ個人呼びなのは……えっと……。
他の先輩の名前を覚えてないとか……
ね? そういうわけじゃ、決してないんだけどね?
ほら、ボクにはグリエンタールってスキルがあるんだから、個人の名前なんて調べればすぐにわかるんだよ? ……でもね、覚える気がないことって中々覚えないよね??
ご、ごほん。
先輩達にはいつもお世話になっております。はい。
「そうなの。後3日しかないのに突然受けろって言われたの。」
「……3日後かぁ……。」
「先輩代わりに受けてよ~。」
「受けてあげたいけどほら、俺達先生が怖いからさぁ。」
む。受ける気もないくせに!
「男は時に自分よりも強い者へ立ち向かう勇気も必要だと思わない?」
「……君の口の回りようには脱帽するよ……。」
「はぁ、憂鬱だ~。」
そんな日常生活を過ごし、3日後。
試験日当日がやってきた。
この数日間、モンスター侵攻やモンスターパレード関連の大きな展開はなく、あったとすればロト国がモンスターパレードとの大規模戦闘が開始されたという情報がきたくらいだろうか。
つまりグルーネも開戦が近い。
山脈からのモンスター侵攻部隊も、そのタイミングを待っているのだとすれば国を東西に分けた大規模戦闘の開戦も間近に迫っているということになる。
そんな緊張の中、冒険者ギルド昇級試験が行われた。
冒険者ギルドに8時少し前に行き、受付に確認をする。
この時点で申し込みがされていなければしてやったりなのだ。
先生が申し込みをしなかったのがいけないのであって、試験を受けられなかったのはボクのせいじゃない。ってなることをかなり期待していたんだけど……。
あの先生忙しそうに動き回っていたはずなのに、ちゃんと申し込みされてしまっていた。残念すぎて涙がでてくるよ。
冒険者ギルド内にある大きな講義室のような所に、同じ試験を受けるであろう冒険者達がギルド職員によってそれぞれ案内されてくる。
受付開始が8時だった事もあり、ボクは一番最初に案内されたからか一番奥、一番端っこの窓際の席に案内された。
……あれ? なんか案内される席順がおかしい。一番最初に来たから奥に案内されたのかと思ったんだけど、後から来た人たちが軒並み廊下側の席から座らされていく。
ボクとは逆側になり、どうやら区別されているらしい?
あの人たちも昇級試験だよね?
そんな事を思いながら知り合いもいないのでキョロキョロだけしていると、ようやくボクの後ろに強面のイカツイおっさんが案内されてきた。
こちらを睨まれる。
ひぃ。
冒険者ギルドで囲まれてから、どうもおっさんが苦手なボクとしては目を合わせたくないので、それ以降は前だけを見て静かにしておいた。
「これで全員だな。これ以降に来た者は時間超過で今回の試験資格はないものとする。……皆も知ってのとおり、今は大きなモンスター侵攻が懸念される時期で国家が、そして我々冒険者ギルドとしても大変な時だ。そんな中だからこそ、昇級はしておきたいであろう諸君の為に、昇級試験はここ、王都に限って執り行われる事となった。各地のギルドから来ている諸君はご苦労だったな。」
部屋に入ってくるなり、冒険者ギルドの試験官らしき人がそのまましゃべり始める。手には書類を大量に抱えており、後ろ側の入口からも別の職員が入ってきてそのまま待機した。
「それじゃあ、このまま筆記試験を執り行う。合格判定は7割以上。筆記を合格したものは実技に進める。筆記で残念ながら7割に届かなかった者は今回はそれまでだ。そのまま帰って貰って構わない。もちろん参考の為にその後の試験を見学する者はしていってもかまわないぞ。筆記を合格できた物は、その後の実技で合格を取れなくても1年以内は筆記を免除できるからな。」
そういいながら手に抱えていた書類を各自に配り始めた。
「質問はあるか?」
廊下側から配りながら質問を聞いているが、誰も一言も発しようとはしない。
「あ、そうだそうだ。もし試験中にモンスター侵攻の一報が入ったら試験は中止だ。運が悪かったと思って諦めろ。」
諦めろってことは再試験みたいなものはしないってこと?
試験を受けるだけ受けて、最中に白紙にされるとか、それは流石に勘弁してほしい。
一番精神的にくるじゃん。
廊下側の列を配り終えると、違う書類の束からこちらの列への筆記試験用紙が配られた。
やっぱりあっちとは試験内容が違うらしい。
向こうは上級への昇級試験なのかな?
そう思いながら見渡すけど、明らかにそこまで経験を積んでいるようには見えない人が多い。
むしろボクの後ろにいる人の方が遥かにそういう空気を出しているんですけど。
そんな事を思いながらキョロキョロしていると、やけに試験を受けに来た人や、試験官と目が合う。
あ。試験中にキョロキョロしてたら、そりゃ怪しまれるか……?
ご、ごめんなさい。
俯いていると目の前に裏にされた試験用紙が配られる。
裏に問題文はなく、3枚の用紙が目の前に置かれた。
魔法学園で筆記試験をやったことがないし、前世でも試験を受けたことが無いボクは、筆記試験というもの自体これが始めてなんだよね。
うわぁ。なんかすっごい無駄に緊張する。
あーなんだろ。モンスターの特性とか……ああ。いっぱい覚えたのに隙間から抜けていく気がするよ……。かむばっく!!
「じゃあ質問はないようだから、これ以降言葉を発した物は失格とするぞ。……はじめ。」
始めの合図でみんなが一斉に試験用紙を裏返した。
ボクもそれに見習って裏返す。
カリカリカリと部屋中に記入音が鳴り響いた。
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