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確かに、一緒にいる時間は一番長いかもなんだよ・・・。

冒険者ギルドに入ると、ものすごい人でごった返していた。

職員が総出のような見たことのない人数で対応にあたっている。


「うひゃぁ、列も長いし……うわ、やば……。」


ギルドの受付は長蛇の列で、他の職員も動き詰め。捉りそうな気配すらないので、いつものクセで掲示板に足を運ぶとものすごいことになっていた。

ここ3日間程でモンスター群の山脈侵攻と、昨日付けでモンスターパレードの規模拡大情報が貼り出されており、その情報収集やクエスト受領手続きで受け付けがこの大渋滞なわけだ。


しかもそのせいで他のクエストの受領が遅れており、貼り出されているクエスト量が、過去見たことない程スペースを埋めて重なってしまっている。


これじゃあ依頼主も報われないけど、国の一大事とあっては依頼主も文句を言っている場合でもないだろう。


「あれ? レティーシアちゃん。いつの間にこっちに来てたの?」


ギルド情報にアクセスできる魔水晶の列から声を掛けられた。魔水晶のデータベースは魔法が使えなきゃ閲覧できないのに、こんなに並んでるとこなんて見たことないよ。


魔法が使えない人はギルド職員を捕まえて詳細を聞いているものだから、そっちなんかはもう大混雑なんだけど。


「あ、ティグロ先輩。先輩はここのギルドで情報収集班なの?」

「そうそう。あっちで受付に並んでる奴もね。それにしても、ここ数日でこんな一大事になってたなんてね。こりゃ先生も帰ってこないわけだよ……」


「でしょ? ティグロ先輩もちゃんと情報収集くらいしとかなきゃだめだよ? こんなことも知らずに先生に聞いてたら今頃大変なことになってたんだから。主に先輩達が。」

「あはは。今頃倒れるくらい扱かれてたかもね……。」


「あはは……じゃあ先生に言っておくね?」

「……うん、ちょっと待って? ……なに? レティーシアちゃん2重人格なの? 悪魔でも裏に潜んでるのかな? 突然内側の黒いとこが透けてきてるよ……? 何が望みなんだい?」


「話のわかる先輩は嫌いじゃないよ?」

「……先輩を脅しにくる後輩はどうかと思うよ……。」


「あはは、先輩が何言ってるのかボク全然わかんない。可愛い後輩のために今週末にある昇級試験の概要、そのままギルド情報から調べてくれるの? ありがとう! 流石先輩、頼りになるなぁ。」

「……普通に頼んでくれてもそのくらい見てあげるけど……。」


「うん。だから先輩、これ一緒にやろ?」


そういいながら掲示板に溜まっていて、このタイミングでもクエストを完了してほしい依頼主が報酬を吊り上げているクエスト紙を見せる。


さっき掲示板を覗いた時にチェックしていた奴だ。


「え、いや……でも俺等情報収集中でね……?」

「うん、大丈夫だよ? 他の先輩にも同じ魔法の言葉、通じるから。」


「……レティーシアちゃんて前世が悪魔だったりするの?」

「え? ボクの前世は人間だよ?」


「……? そうなんだ? ……そこまで前世が人間だって言い張れる人初めて見たけど……」

「先輩。これ報酬がすごくいいの。しかも近場。簡単。」


「……。」

「夜までに帰ってこれるの。しかも報酬がいいの。簡単。」


「……。」

「報酬がね?」


「わ、わかったから! じゃあ、あいつらにも言っておいてよ。」

「おっけぃ。せーんぱーい! ティグロ先輩借りてくねー。」


ギルド受付に並んでいた先輩達も、こちらに気づいていたみたいだし、少し声を張り上げて伝える。

ものすごいブーイングがティグロ先輩に向かって飛んでいった。

まぁボクが知ったことではないので知らん顔しておこ。


「え!? 俺だけ???」

「え?だって簡単なのに人数増やしたら報酬減っちゃうじゃない。」


「……俺もこの貪欲さは見習うべきなのかなぁ……はぁ。」

「じゃ、ティグロ先輩、ボク用意してくるからちゃんと調べておいてね!」


「あーはいはい。いってらっしゃい。小悪魔ちゃん。」




クエストを受注し、一通り着替え等準備を終えてギルドに戻ると、律儀にティグロ先輩が待っていてくれた。情報を検索するだけだからそこまで時間もかからなかったようだ。


「おかえり。」


他の先輩の影はない。


「ただいま、ティグロ先輩。他の先輩達は?」

「情報持って研究室へ帰ったよ。」


「よくティグロ先輩だけ残してってくれたね~」

「それを君が言うの……? レティーシアちゃんが言う魔法の言葉とやらを伝えたら、そりゃ快く俺を生贄に捧げてくれたよ。」


「わぁ。優しい先輩達って好き。」

「はぁ。レティーシアちゃんとリンク王子が結婚したら、実質国は君の物になりそうで怖いよ。」


「国の運営とか興味ないかなぁ。」

「哀れな王子の姿が浮かんで悲しいよ……。」


「今のとこそんな予定もないんだしいいじゃん! さっさと行こうよ!」

「はいはい……。」




そうはいいながらもクエストに出ると張り切ってくれるあたり、ティグロ先輩もお人よしだよね。


今回のクエストは、王都郊外の小さな河川に出るモンスターの駆除と、その甲殻の採集だ。

この甲殻、実は研究科の授業で見たことがある。


ヒーリングポーションの材料だ。


今の時期に緊急で、さらに報酬上乗せでこのクエストを発注するってことは、今回の騒動に関連したポーション作りに関連している可能性が高いんじゃないかと見たボクは、今回の騒動の為になると思ってこのクエストを受注したのだ。


決して報酬が平均の3倍近かったとか、支払いがニコニコ即金払いだったとか、内容と時間比率の割りに破格だったとか、そういう面だけで受けたわけじゃないんだよ?


もちろん甲殻の採集ってことは、モンスターは甲殻類。


蟹の鋏を極端に大きくした縦幅で2メートル位のモンスターだ。

蟹なので横の方がもちろん大きい。目測4メートルくらい?


防御力と攻撃力は高いけど、動きが極端に遅く遠距離攻撃手段を持たないので、遠距離から倒しちゃえば、普通に倒す分には難なく倒せるモンスター。


ただ、甲殻に傷ができるとポーションの完成度合いにケチがついてしまうので、基本このモンスターの甲殻を採集する時は前衛の人が鋏を押さえ込んで、甲殻の隙間から刃物や魔法でザクっとやってしまうのが基本なのだ。


「ティグロせんぱーい。よろしくねー。」

「はいはい……。」


いつもの魔道剣ではなく、石製の大剣を取り出した。

あ、魔道剣はアークゴブリンの時にぶっこわされちゃったもんね。


すたすたとティグロ先輩が蟹のモンスターに近づいていくと、慣れた手つきで鋏に大剣を挟ませた。

大剣はそれでもびくともしないから、単なる石じゃなさそうだ。


「はーい、いいよー。」

「はーい。」


髪留めの魔宝珠に魔力を流して水刃でザクっとやっていく。

精密な刃入れはやっぱり水刃を錐状にして刺し込んでしまうに限るね。


一瞬で頭を貫き絶命させていった。

鋏の握力がなくなったのかティグロ先輩も大剣を持ち上げて収納する。


「ああ、これもしかしてヒーリングポーションの材料だっけ? 緊急クエストってことは今回のモンスター侵攻に素材が足りてないのかな。」

「うん。多分そうだと思う。」


「あれ、レティーシアちゃん気づいてたの?」

「え? うん。もちろんだよ?」


「へぇ……。」


何よその目は。


「だからこのクエスト受けたんだよ?」

「へぇ。報酬がいっぱい貰えるからじゃなかったんだ?」


「もちろんそれが第一なんだよ?」

「素直すぎて煽りがいもないよ……。」


「はい、先輩。次々! いくらあってもいいんだから暗くなってくるまで頑張ってよね!」

「はいはい……。」



暗くなるまでに蟹モンスターを20体程討伐。

どれも傷つけることなく甲殻採集をし、ギルドに届けた。


報酬3倍。ホクホクすぎる。


今週もしかしたらシルが立て替えてくれていた金額レベルの諜報報酬も入ってくるかもしれないし。学生でも十分稼げている気がする。


ただまぁ、今回の大型侵攻を跳ね除けないと国自体が危ないので、いくら儲けても意味がなくなってしまうのだから、その件は引き続き頑張らないとね。


「ティグロ先輩! お疲れ様!」


報酬の半分をティグロ先輩に渡す。


「あれ、本当に半分くれるの?」

「え? なんで?」


「いや、報酬貰えるものだと思ってなかったから……。」

「いやいや先輩。ボクをなんだと思ってるの?」


「フラ先生から生まれた悪魔の化身。」

「むぅ!!」


失礼しちゃうよ!全く。


あの先生と一緒にしないでよ!


ボクはあんなに有無を言わさず色々させたりとか。


色んな事に説明不足だったりとか。


人の都合お構い無しにクエスト連れまわしたりだとか!?


そんな事一切しないんだから!!



……あれ!?


「あれ? もしかして今更気がづいたの……? レティーシアちゃん研究室のメンバーの中でも断トツで先生の影響受けてるからね?」

「う、嘘でしょ……?」


「そ、そんな絶望顔しないでよ……流石にそれは先生が可哀想だって……。」




人間失意に飲み込まれると本当に膝から崩れ落ちるんだね。

まさか自分があんなに鬼畜仕様な人の影響を受けてしまっているなんて……。


「い、いや、フラ先生に似てるって別に悪い事じゃないからね……?」

「……。反面……反面教師なんだよ。そう! 先生を反面教師に頑張るよ!」


「先生、不憫だなぁ……」






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[一言] 後輩(小悪魔)モードかわいい
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