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女スパイの活動冒険記!粗がひどくてごめんなさい。

「うへぇ……。」


エリュトスの砦に侵入してから数分。思わず声が出てしまった。

音も遮音しているのでいくら声を出そうが周りに聞こえることはないのだけど、気持ちの問題。声を出してしまった事に後悔する。


そう思うくらいには静かなのだ。


将官と思われる人の指導する声が響く中、兵卒の緩んだような私語は一切聞こえない。

黙々と作業をする作業員も機械かと間違うくらい皆が同じペースで動き、効率的に作業をこなす。


一番目を奪われるのは訓練風景だろう。

崩れる事のない隊列。

終わる事のない演習。

止む事のない怒号。


ボクが先生に受けるものとは違う種類の辛い訓練風景に目が離せなくなった。

……自分がこの国に生まれていなくて良かったと思ってしまう。


さて、ボクがここですべきは軍隊規模の調査。

それとできるのなら編成もね。

この世界の戦争は特に魔法部隊による戦力が大きいんだから、魔法部隊の戦力っていうのは出来ればみつけておきたいんだよね。



この砦は改築に改築を重ねているようで、急造の継ぎはぎ部分がやけに多く内部構造もそれに伴って異常なくらい複雑になっている。

確かに、ここまで複雑ならもしも侵攻を受けた際にも攻められづらいんだろうけど、構造が複雑という以前に作りが雑すぎて歩きづらい。


こんな場所を日常的に歩いていたら足を悪くしちゃうんじゃないかな……?

所々整備されていなければならないブロックがはみ出ているし、割れた足板なんてそのまま。酷い所なんて10歩歩く間に段差の高低差が30センチくらいあるところもあった。


足元を見て進んでいると、すらすらと進んでくる兵士にぶつかりそうになる。


「わわっ!」


咄嗟に壁に張り付き難を逃れた。


「な、なんであんなに早く歩けるの……?」


う~ん。もしかして歩きにくい地形の歩行訓練用なの?


……流石にそんなようには見えないけど。

そんなわけの判らない内部を進むと、演習場が広く見渡せる部屋にでた。

突き出しになっている場所に椅子が用意されている。

今は誰もいないけど、演習場を一望できる所から見て将官用か来賓用の部屋だろう。


丁度いいのでそこから眺める。


今ボクの目の前で演習をしているエリュトス軍の規模は大体200人くらいの集団が3つ同時に演習をしていることから、中隊規模が3つ。この1演習場内が1個大隊となるのだろうか?


もちろん整備兵や衛生兵など裏方部隊は砦を通ってくる間に見かけたのでこの演習には参加していないはず。


……ということは、少なくとも1つではなく、複数の大隊規模は戦争に参加するということになる。


むしろここに参加している中隊が前線の兵士で、それぞれに後衛の兵士が付属するのであれば、3個大隊はいるということになるだろうか。そうなれば規模は既に2000人程度ということになる。


これに、街に待機しているであろう義勇軍や、少ないだろうけど冒険者の戦争参加者なんかもいるそうだし、何よりここに到るまでに魔法兵を1人も見ていない。


この世界では単なる兵士の1個大隊なんかよりも魔法兵の1個小隊のほうが遥かに脅威。

街に待機している義勇兵は、正直街の人と見分けがつかないかも知れない分規模の測りようがないんだよね。わからない兵力はどうしようもないんだし、最低限魔法兵の規模だけは把握しなきゃ帰るに帰れないよ……。


そう思い半日ほど砦をうろうろしていると、隠し扉に入っていく兵士を見かけた。

しきりに辺りをきょろきょろと伺い、不審な動きをしているので後ろからついていくと、壁に偽装された仕掛け扉をくぐって行ったのだ。

そんなにきょろきょろして警戒していたのに、真横に不審者がいても案内してくれるあたり、ご苦労様としかいいようもないわけだけど。


「おい。こんな明るいうちに砦側の通用路を使うな。どこにスパイがいるのかもしれんのだぞ。」


暗く続く1本道の先、人影が見える。


あ、スパイここにいますよ。こんにちわ。


「す、すみません!急ぎの報告がありましてっ!!」

「緊急か? ここでは砦側に声が漏れる。こちらに入れ。」


そういうと人影の後ろに光が差した。

扉を開けたようだ。ボクもそそくさと間を縫ってお邪魔する。


カチリ。


扉に鍵のかかる音がした。


……あれ? 扉に鍵穴がない。これ、どうやって開けるんだろ?

まぁボクには関係ないからいいんだけど……。


扉を抜けた先はさらにトンネルになっており、所々に光源魔道具が設置されているため通路がかろうじて照らされている。


その抜けた先からは眩いほどの光が差し込んでいる為、ここからでは向こう側が見えない。


「何があった。」

「侵入者がいるかもしれません。」


えっ。


心臓が一気に跳ね上がった。

ボク、なんかヘタでもうった?


「舗装中の床に軍靴とは違う足跡が見つかりました。」


うっわ。やっば。それボクですわ。

足元悪いなぁとか思いながら、確かにべちゃべちゃした道通りました……。


足跡って……。まさかそんなとこまで普通見る?

嘘でしょ? この人優秀すぎじゃん。


「舗装中の床というと工事区画のか……? あそこは砦に入ってかなり深部になるが、そんなところにまで進入されているとでも言うのか?」

「それもそうなんですが……」


「どんな足跡なんだ?」

「それが女物のブーツの様な足跡でして……ヒール状の足跡が……。」


「そんな馬鹿げたスパイがいるか!? 足音が響くだろう……流石にそれは兵士の家族か誰かでも歩いたのではないか?」


こ……ここにいます。音はね? 消せるから大丈夫なんだよ??


「そうかとも思い入場記録を見たのですが、今日は女性の来客もなく……。それにこう言ってはなんですが、兵士の家族であればこの砦にヒール系の履物で訪れたりするでしょうか?」


なるほど……だからあんなに歩きづらかったのね。


「確かに……そうだな。わかった。放置しておくわけにもいかんな。調べさせろ。もし兵士共の仕業なら調べた時間に応じて罰を与えることとする。全員に告知せよ。」

「はっ。ではそのように。」


そういうと報告に来た兵士は、来た方向ではなく向こう側へと走り去っていった。

やっぱり一方通行でこっちからは戻れないのね。


将官と思われる男が光の先へと歩いていくので、ボクも後ろからついていく。


確かにここで遮音効果を消したらカツカツと音を鳴らしているだろう。魔法が使えない区域がもしかしたらあるかもしれない。今度からは身なりにも気をつけよ……。


光の先へ行くと、吹き抜けになった大きな空間にたどり着いた。

地下に3階分くらいの深さが吹き抜けになっており、ものすごい広い空間が作られている。


これまでのトンネル内とは打って変わり、魔道具の光がそこかしこにはめ込まれている為、外とは完全に遮断されているのに真昼間よりも明るい。




吹き抜けになった地下を覗くと、爆発音が聞こえてきた。


……ビンゴ。


魔法演習場だ。




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