ここってそんなに危ない場所だったのかな?
「シルって、いつここに着いたの?」
「ん? 夕方前くらいかしら。お昼頃にギルドや家から連絡があってね? ……まぁ聞いているようだから言ってしまうけれど、今年のモンスターパレードは例年とは全く別物としてこちらに向かっているから対処するようにって。」
やっぱりシルはまだここについてから数時間しか経っていないんだ。
現在情報を集めている段階ということだろう。
「エーレーメンクランの事については何も情報ってなかったの?」
「え? ええ……。確かに今さっき確認してみたのだけれど、ゴブリンスタンピードの後処理としてピーノ村周辺で仕事を続けていたはずなのに、ここ最近ギルド情報の更新がないわね。」
「今って、どんな事態が起きているのか、こっそり教えてくれたりとか……できる?」
「別にこっそりじゃなくてもいいわよ? これがモンスターパレードだと位置づけられている限り、管轄は国や冒険者ギルドではなくてラインハート家だもの。私が采配権を有しているのだし。」
「……え? ……あ、うん……。シルってやっぱり偉い人なんだ……。」
なるほど。
出入りしている人達が、こぞってシルに報告を上げに来るのはそのせいなのね。
なんというか、話を聞きながら別の話を進めているんだけど、すごくない?
よくそれだけの話を一度に処理できるよね。
「あ、ちょっとごめんなさい。イオネちょっといい?」
「はい?」
「ポーションやら薬類の資源が十分にまだ届いていないらしいのよ。これから牧場に集まっている冒険者パーティを使って薬草類を取って来て貰うのだけれど、調合や錬金を任せたいの。できる?」
「えっ!! はい! もちろんです!」
その返事を聞いたシルが、小声で報告に来ていた大人に指示を出している。
「期待しているわ。この人に付いて行って貰えるかしら? 調合用の簡易施設を設置しているらしいから。もしこのまま大きな戦闘になってしまった時は、負傷者も運ばれることになるわ。そうなったらそのまま救護班の手伝いをお願い。……まぁ、すぐに戦闘になるなんてことは無いと思うけれど。」
「わかりました!」
やる事が見つかったイオネちゃんが拳を握って20代中盤くらいの女性について行ってしまった。
錬金や調合関係ってどこでも需要があってすごいなぁ。
「で? ……現状だっけ?」
「あ、そうそう。何でこんなに大事になっているの?」
「まだモンスターパレードと確定しているわけじゃないのだけれどね……。またモンスタースタンピードが発生したのよ。」
「え? またゴブリン?」
「いいえ、今度はホーンラビット種よ。」
ホーンラビットってあの角が生えてる兎さんだよね?
そんなゴブリンほどの知能もないし、どちらかというと可愛いイメージの魔獣なんだけど……
「そ、それって問題になるの?」
「当たり前じゃない。そこら辺にいるホーンラビットはそこまで凶暴でもないけど、貴女も遭遇したのならわかるでしょう? スタンピード系は1種ではなく複数の種類が大量発生するのよ?」
「ホーンラビットにも怖いのがいるの?」
「ええ、沢山いるわよ。」
「ええ!? それって今どうなってるの?!」
「もう駆除済みよ。それを駆除し終わったのが、ここモノブーロ村なのよ。」
なるほど、それで牧場にあんなに沢山のパーティが待機していたのね。
「それからスタンピードの連続発生に次いでロカスエロ北の未開拓地からモンスター大群発見の報告がギルドに齎されたってわけ。さらに、この時期でしょ? そういう事もあって、モンスターパレードの警戒をってことになって、今に到るのよ。」
「ここで取り仕切るラインハート家の人はシルだけ?」
「ええ。父や弟達は自領での備えもあるし、戦争の準備もあるから。ここは私だけで十分よ。」
「そっかぁ。ボクもできる限り手伝うよ。」
「ええ。頼りにしているわよ?」
「うん!」
「じゃあ早速だけど。」
「え?!」
さ、早速すぎやしませんかね!?
そういいながら渡されたメモには、ボクにして欲しいことがリストになって書き記されていた。
……随分準備のいい……。
確かに、これを見る限りボクを使うのが一番効率がいいのだろう。
どう考えても転移スキルの運用が必要で、さらには転移スキルの利点である千里眼のような使い方についてまで使用するように記載してある。
すっごい簡単に話していただけなのに、よく覚えてたよね……。
まぁ、こんな即席で集められた人員を使っている現状、知らない人間をどこまで信用できるのか?という場面もでてくることだろう。
それが重要なことであるならば、なおさらの事使える人間が限られてくる。
そういう理由でもシルがボクを使うのはかなり安心なはず。
……そうだよね?
それくらいは信用されてると思う。
これ、ボクじゃない人が受け取ったらシルは頭が狂ったのかと思われると思うんだよ?
まぁ、やるんだけどね。
シルの為なら、なんだってやりますとも。
ひいてはモンスターの大群なんかに国が蹂躙されるなんて事になるのは、ボクだって嫌だからね。
守りたい人だっているんだからね。
今日は何も出来なかったボクでも、明日は何かできるボクになろう。
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