モンスターパレードの指揮はラインハート家の管理らしいよ?
「……」
「……」
あ、あれ?
忙しすぎてシルがこちらに気づいてくれない。
なんで声を掛けないのかって?
……声を掛けにくいからだよ?
だって真剣そうだし、大変そうだし、ボク達がここにいるってことは知らないだろうし。
「はい、ちょっとこれもっててくれる?」
そぉっと近寄り、何をしていいのかわからずキョロキョロしているとシルから自然に書類を渡されてしまった。何も言えずに受け取る。
「あの……?」
「うん? 何? あ。それとこれもお願いできるかしら?」
「う、うん。」
「どうしたの? ……あら? レティ?」
初めてシルと目が合った。
「う、うん。」
「……なんでこんな所にいるの?」
「え? それはボクが聞きたいというか、なんというか……。」
「今日はロカスエロに行くって言ってなかった?」
「シル、今何時だと思ってるの……?」
「え? 何時って……何時だっけ?」
素で時間を把握していなかったらしいシルは、時計を見るとため息をついた。
「はぁ。ごめんなさい。もうこんな時間になっていたのね。」
「え? うん。ちょっと遅いから心配でイオネちゃんと探しに……。」
「ごめんなさいね。ちょっと緊急の仕事ができちゃって。数日は帰れそうにないわ。」
「そ、そうなんだ……。モンスターパレードだっけ?」
「あら、もう誰かから聞いたの?」
「うん。」
「……夏休みには手伝ってもらおうと思ってのに、残念ね。」
「え? もしかして夏休みのバイトなくなっちゃうの?!」
それは困るよ!? 本当に半端な額じゃない借金ができて、返済にぼろぼろになる自分が想像できちゃうから!!
「わ、私達にも手伝えることはありませんか?」
同じ想像が頭を駆け巡ったのであろうイオネちゃんの顔も大分引きつっている。
「そうね……。とりあえずまだここまでパレードの本隊は来ていないの……。というか本体の場所がわからなくてまだ調査中なのよね。だから調査や偵察が終わらな……いと……。」
うん? シルがボクの顔を見て停止した。
さっきまで洞窟のダンジョンにいたし、何か顔についているだろうか? 急いで駆けつけたから、汚れていても確かにおかしくはないけど、流石に今はそんなこと気にしている場合じゃなくないかな?
「ねぇ、レティ。貴女、今日ロカスエロに行っていたわよね?」
「え? うん。昨日から行ってたよ?」
「昨日……? じゃあ、王都から出立したのであれば、モノブーロ村とピーノ村の間を通ってる道を通ったわよね?」
「うん。通ったよ?」
「……ロカスエロの商人キャラバンや冒険者キャンプ地はどうだった? 何か変わった事はあったかしら?」
「変わった事……? といわれても、ボクはあそこに行ったの初めてだから……。特に変な空気とかも流れてなかったし、あわただしいようなことも無かったと思うけど……。」
商人キャラバンとか冒険者キャンプ地っていうのは、多分ロカスエロダンジョン前に出来ていた小さな町のようなあれのことだよね??
「そう……。あ、貴女もしかして転移でロカスエロまでの道中を自由に飛べたりする?」
「うん、するよ?」
「……転移?」
あ、イオネちゃんにはまだ説明してないんだよ……?
ごめんね。後でまたするから。
「……ちょ、ちょっと待っててくれる?」
そういうと、シルは廃墟の奥に張られたテントへ急いで入っていった。
その間にイオネちゃんに転移スキルの事をさらっと話てしまう。
「えぇ!? そんなスキルが……? う~ん、まぁレティちゃんならありなのかなぁ。」
イオネちゃんは最近色々と驚きすぎて耐性が付き過ぎているような気がするよ……。
明らかに他の人……先生に比べたって驚きが少ない。
「でも、スキルなだけはあって自分しか飛べないみたいなの。」
「それは……ここに私が付いて来てしまって足を引っ張っちゃったかな。ごめんね?」
「ううん、全然! 絶対にそんなことはないよ?イオネちゃんがいてくれて、本当に心強かったんだから!!」
「レティちゃん……」
「レティ!」
イオネちゃんと2人でしっとりとしていると、テントから大急ぎでシルが出てきた。
その後を追って2人程知らない人も出てくる。
その2人はこちらに向かってくるのではなく、出口へ向かって行った。
「これから冒険者を雇ってロカスエロ辺りの山脈周辺からラインハート領までの間にある大きな森を探索するんだけど、とにかく最初にロカスエロ周辺で生活してる冒険者やダンジョン周辺に出来てる商人キャラバン街に今の事態を伝えなくてはならないのよ。」
……モノブーロ村にモンスターパレードとやらの対策本部を建てているということは、ロカスエロ周辺はかなり危ういと言うことになっているのだろうか?
ここはグルーネ国の国境から見てもかなり内陸部にあたる。
ロカスエロキャンプ地までは遠くて、とりあえず緊急で建てた本部にせよ、もしも先生達が慌てていた状況がこの件と一致しているのなら、先生達が急いでダンジョンの外に出たのも頷ける。
「ねぇシル。ボク、さっきまでロカスエロにいたんだけどね? フラ先生のクラン? の人とかと一緒に。」
「ええ、昨日の夜もそう言っていたわね。」
「でも150層に辿り着いたときに、モンスターが全然殲滅されてなくて……。管理されてないんじゃないかって先生達が言い始めたの。」
「ダンジョン管理が……?」
「うん。それで、ここのモノブーロが廃村になっちゃった時の事件があったでしょ?」
「ええ、レティが話してくれた事件よね。」
「あの事件の後、タキさん?っていう人がいるパーティだか、クランの人たちがいなくなっていないか? って話になってね?」
「え? タキさんて、エーレーメンの? ……それで?」
「なんか先生達って、ギルド証から色々ギルド情報にアクセスできるんでしょ? それ見てダンジョン攻略は止めて戻ることになっちゃったんだよね。」
「……」
もしも話が繋がっているのなら、ロカスエロ周辺の情報をここの人たちは知らない可能性が高い。話をすり合わせておいて、もし違う件なのであれば忘れてもらえばいいだろう。
「詳しい事はわからないけど……。」
「今回私達が動いてる状況と同じなんじゃないかってことね?」
「多分」
シルが先生達のパーティと出会っていないという事は、先生達はダンジョンを出てから一直線に王都に向かったわけではないという事だ。
流石にあのスピードであれば、ダンジョンから今の時間までに出てきていないということもないだろうし、ダンジョン内は一度掃除した後。モンスターに捉っている可能性はかなり低い。
と、いうことは。
先生達は真っ直ぐ王都には向かっていないということになる。
ではどこに向かったのだろうか??
この時点で、ボクには一つだけ確かめたい事があった。
もし、今回皆が忙しなく動いているこれが、モンスターパレード?? とかいう年に1度未開拓地から侵攻してくるっていう奴だとするのならば。
大きな矛盾点が確かにあるんだよね。
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