簡単だと思った?残念!鬼畜難易度でした!
変な会話に花を咲かせすぎて、思っていたよりも時間が経ってしまっていた。
ダンジョン内で大分のんびりした物だけど、ボス部屋からまだ次の層には進んでいないので、敵も沸いたりしないのだそうだ。
ボスのリポップも1日置きなので、あと半日以上はかかるわけだし、セーフティスポットのようなものだったらしい。
先生達が交代で見張りや火の番をちゃんとしていたのは、ダンジョン内であることは確かなのだし、万が一のことがあった場合はちゃんと対応できなければ生死に繋がってしまうから。言われてみれば当たり前といえば当たり前か。
まぁ、そもそも何も見張りもせずにセーフティスポットだから。とかいって何が起きるのか未知数なダンジョン内ですやすや寝れるわけがない。そんなことが出来たら神経を疑うレベルだよ。
一通り朝食や支度を終え、キャンプアイテムを片付ける。
「なぁ、レティーシア。そういやお前、このキャンプアイテム。学園に置きに戻れるか?」
「え? うん。出来るよ?」
「わりぃ、これ次元収納に入れとくと結構魔力回復量削られんだよ。あたしの研究室のどっかそこらへんにでもいいから、置いてきてくれねぇか?」
「うん。わかった。魔法科の研究室の方でいいよね? 兵科の方だと邪魔だろうし。」
「ああ、どこでもいいぞ。」
「わかった。行って来るね。」
大したことでもないので、自分の次元収納に一式仕舞いこみ、魔法科の研修室に飛んだ。
「やっほー先生。」
この先生とはフラ先生の魔法科研究室の研究員の先生のことね。
ボクが人がいる前でわざわざフラ先生と名前をつけて呼ぶのは、この研究員の先生達がいて混同しちゃうからだよ。
「あれ? レティーシアちゃん。今来たのかい? 全然気づかなかったよ。ごめんね?」
「うん。今来たんだけど、ちょっとフラ先生に頼まれて、キャンプアイテムを置きに来たの。どっかそこら辺の空いてる所においといてもいい?」
「うん……? 先生とは一緒じゃなかったのかい? キャンプアイテムってことは冒険者の活動にでているんでしょ?」
「うん、一緒だよ? これから戻るの。」
「へぇ……? うん、状況がよくわからないけど、そうだね、そこら辺に置いといてくれていいよ。もし邪魔だったら俺等で片付けて後で先生には伝えておくから。」
「じゃあ、お願いしまーす!」
帰りは一応部屋から出たタイミングで転移を発動した。
正直、行きは転移スキルの事を研究員の先生には言ってなかったことを素で忘れてたんだけどね。まぁあの人たち研究に夢中になると全然周りが見えなくなるので大丈夫でしょ。
「置いてきたよー。研究員の先生が片付けちゃうかもしれないから、そしたら後でフラ先生に話しておくってさ。」
「おう、わかった。」
「ううむ。便利であるな……。」
「便利ね。」
「便利だね。」
「れてぃーしあちゃん、結構力持ちなんだね……。」
キャンプアイテムをあんなに大変そうに運ぶのはウルさんくらいだと思うよ……。
「じゃあ次の層に行くか。149層まではあらかた今までと同じだ。ただ敵の強さが如実に上がり始めるからな。ここからは遅れたらまじで死ねるぞ。」
「そ、それならもうちょっとペースを落としてくれてもいいんだよ?」
「時間がもったいねぇだろうが。」
「先生がボクを運んでくれても……。」
「おう、いいぞ? ほら、こいよ。」
「……うわ。やっぱ自分で走る……」
「けっ。じゃあ行くぞ。」
「はぁい……。」
「今日は体力の付く朝食にしておいたからね!がんばって!!」
お姫様だっこされながら言われても……。
なんか……ありがたみとか。薄れちゃうんだよ……?
バン!
と、100層に入る時にもあった扉を勢いよく開くと、またフラ先生が先頭で走り始めた。
フロア構造や、広さは今までとさほど変わらないけど、岩肌の色や鉱質が違うのか、ダンジョンの空気みたいなものが一気に変わった気がする。
フロアの色が暗い青から暗いよどんだ緑色みたいになったせいもあるのかな。
明らかに、進む速度は100層に来るまでよりもペースが遅くなった。
集めすぎたり、事故を警戒しているのだろう。
槍のスキルは取れたので、今度は剣を作り出して応戦した。
ただ、明らかに101層から敵の強さが今までと桁が違う為、魔法で数を減らしてからね。
魔法さえ使えれば大して苦戦する事もないし、何よりも昇級試験要項のカウントも手に入る。
そのせいもあって、150層までは99層へ行くよりも比較的簡単にたどり着いた。
「レティーシアさん。」
150層にたどり着くとすぐに、ホーラントさんに呼び止められる。
ホーラントさんから話しかけられるのは珍しい。
「は、……はい!?」
思わず不審者レベルの対応をしてしまった。
ご、ごめんなさい……
「ぬ、ぬぅ……。レティーシアさんがよく使っている次元防壁だけど、あれは乱発しても魔力量的には問題ないのであるか?」
設置盾の消費魔力量は、自分の体を守る程度の大きさであれば5程度。
魔力回復量は、数ヶ月前よりも少しあがって今は72ある。ただ、次元収納に12ほど使ってしまっている為、現状60。という事は、1分間に12回使わない限り魔力回復量でカバーできる。
1分間に盾を12回貼りなおすということはまずないので、実質は他の魔法で魔力を枯渇させない限りは、ほぼ無限に張れるということだね。
「うん。単発で使ってる分には魔力も減らないですよ?」
「減らないのであるか! それはまた……。い、いやすまん。それならこの先、魔法が飛んできたら魔力を減らすくらいの勢いで全部防いでみてごらんなさい。必ずや君のためになるよ。」
「は、はい……?」
よく思うんだけど、こういう場面って、どうボクの為になるか普通に説明してくれてよくない??
そっちの方が目的意識を持てて手っ取り早いと思うんだけど。
ま、いいんだけどね。ただ、そうならそうと言っておいてくれれば、キャンプアイテムを置きに戻ったときに、ボクも今は使う必要のないアイテムを置いてこれたのに……。
とは思う。
「レティーシア!!」
次の瞬間、フラ先生に突き飛ばされた。
尻餅を着いた先にどろっとした粘性の液体が降り注ぐ。
岩肌をジュワァという音と共に焼いた。
「わざわざ敵が、魔法を見えるところから使ってきてくれるなんて思うなよ? 魔法の優位性は敵も味方もかわらねぇ。先に見つけたら不意打ちでがんがん打たれるからな!!」
そう注意されてる間にも細い岩が横降りの雨のように降り注いできた。
音もしない。敵の姿も見えない。位置もわからない。
なにより、何がくるのか予想すらできない。
……はっきり言って、ここまで順調に来すぎていたからか油断していた。
こんなの100層のボス部屋より出鱈目じゃない。
めちゃくちゃ怖い。怖すぎる。
なんとか、岩を横目に捉え魔力の消費なんて考えてる間も無く設置盾を連荘で起動していく。
もちろん自分の分だけではないので、平行起動が10枚や20枚なんて当たり前の数をどんどん張っていく。
その間にも魔法の見本市かというくらいの色んな魔法が降り注いだ。
混ざり合わさりすぎて視界も酷くなっていき、一定時間毎に視界をクリアにする魔法も必要とされる。
設置盾の弱点は、途中で気づいた通りで、魔法の発生点を設置盾よりもこちら側に設定されてしまうと貫通してしまうこと。
ただその場合、近くで魔力が凝集することを感じられる為、どうにか備えることはできた。
1つや2つ程度であればさほど問題にもならないけど、この状況は非常にまずい。
如何せん数が多すぎるのだ。
ボクが捌いてる魔法の数は優に常時20を超えているはずなのに、その2倍から3倍の魔法が一度にぶち込まれる。
アルト様と先生が魔法ごと叩き切り、ホーラントさんが引き付け、メルさんが防御。ウルさんが真ん中で付与や補助の魔法を掛けてくれるお陰で、ボクの魔力回復量も飛躍的にあがっている。
ただ、魔法で釘付けにされている為、未だに1匹のモンスターや魔獣の姿すら確認できない。
誰かがこの魔法の嵐の中を抜けなくてはならない。
状況は悪化の一途を辿っている。
「先生! このままじゃやられっぱなしだよ?!」
「ちぃっ! 思ったよりも放置されてたみてぇだな! 数が異常すぎる!」
「フラ! そもそもここからは1パーティで入る領域じゃないって言ったでしょ!? どうするのよ! ジリ貧だし149層まで引いた方がよくない!?」
「先生!倒しちゃっていいならボクが倒しちゃうよ?」
「できるか!?」
「でも設置盾が全部消えるかも!!」
「ぬぅ! わかった!自分にすべて攻撃を引き付けるのである。10秒は耐えてみせる! 10秒あればできるであるか?!」
「10秒あればいける! ただ敵の居場所が全然わかんないから、全部処理は無理!」
「十分!! 金剛を発動する! メル、頼むのである!!」
「おっけぃ!! ちょっと早いけど行くわよ!!
《Prélude》
《Raindrop》 」
え!? 音楽……??
静かな音が流れ始めた。
どう考えてもメルさんの魔法だけど、突然嵐の様に降り注いでいた魔法が止んだ。
効果はわからないけど、迷ってる場合でもないんだよね。
時間もない。
「複合構造・清澄次元魔法術式・月虹光輪」
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