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入学しました!!

ボクには、前世の記憶がある。


聞いた話だと、子供の頃に前世の記憶を持っている子はいるらしいけど、成長するにつれ記憶は消えていってしまうという。


でもボクにはまだはっきりと残っている。

一人でずっと。白い部屋で過ごした日々を。


お父さん、お母さん。元気かな?

ボクは元気だよ。

こっちでは、もう元気なまま15歳になったんだ。


これから学園生活がはじまるんだよ。


たくさんの漫画や、小説や、ゲームやテレビなんかで見た。憧れの学園生活。

人よりもいっぱい、いっぱい色んなこと経験して、青春して。

笑ったり、泣いたり、哀しんだり、怒ったりしよう。


ボクは元気だよ。






いってきます。








「……んぅ……ん? ここ……どこだっけ」


壁紙が一面真っ白な部屋に既に開け放たれたカーテンから朝日が眩しい。

2段ベッドの柵が視界の端っこに映った。


「あ、そっか。寮に入ったんだ……」


ベッドの柵から身を乗り出すと、下には2つの机とまだ片付けていない荷物が見える。

そういえば同居人がいたはずなんだけど、姿が見えない。


ふと、机の上にある置時計に目を移すと、7:40を指していた。


「…………」


「……」


「えっ? 今日入学式じゃない!?……やばっ!」


入学式は8時から。もう皆集合してる時間。


「うっそおおお! 夢であってえええぁぁぁあ……」

大急ぎで支度して飛び出す。

「食べるもの! なんか! パンでいっかもう!」


パンを口にくわえながら、学園へ向かう。


寮は学園の敷地内にあるため、走れば5分もかからないだろう。でも8時に始まる時点でもう入学生は整列しているはずだ。まずい。特待生が初日に遅刻とか。ひっじょーにまずい。


寮は学園入り口の裏側にある。

玄関から飛び出し、とにかくまっすぐ進み、学園正面を抜けたら右折するだけ!


「うわぁ! あぶなっ」


どしんっ


全速力で人にぶつかってしまった。

あ。パンが落ちちゃったわ……


「ご、ごめんなさいっ! 急いでたもので……大丈夫?」


どうやら後ろからぶつかってしまったらしい。前のめりに倒してしまった男子生徒に手を差し出す。


あれ……? 既視感(デジャヴ)? ボクは前世でも学園になんて通ったことないから、そんなはずは無いんだけど……。


気のせいかな?


倒してしまった人は制服の色が赤だ。同級生なら青いはずだから、多分上級生かな?


「って。突然ぶつかってきやがって。お前な……ん……」


振り向きざまに手をとろうとして、そのまま固まってしまった。

まって、そんな時間ないから。貴方もこれから入学式やら始業式に出るなら後10分で遅刻よ!

こちらから手を引っ張って起こす。


「急いでるから! ごめんねっ!!」


呆けてる彼を尻目に、入り口にできていた人だかりに飛び込む。


はい!ぎりセーフ!



「あ、レティ。来た来た。やっとおきたの?」


そう言いながら同じ色の制服の女の子が近づいてきた。

シルヴィア・エル・ラインハート。寮の同室の子で公爵令嬢様である。

漆黒で艶のある長髪に漆黒の瞳。整った顔立ち。優雅な立ち居振る舞い。

もう、どこをどうとっても絵になる子だ。可愛い。後、その主張しすぎなたゆんたゆんな脂肪羨ましい。


「ちょっとシル! 起こしてくれたっていいじゃない!」


入寮したのが2週間前だったこともあり、同室だったシルとはなんか仲良くなった。相手はなんと公爵令嬢様だってことにびっくりもしたけどね。ボクが貴族に物怖じしないのは、子供の頃から。もう仕方ないよね?


「ふふ。一応起こしたのよ? カーテンも開けておいてあげたでしょう?」

「うっ、確かに……もう! 遅刻しかけたせいでお約束なんてやってきちゃったじゃない!」


ボクがこの世界に生まれてから農家の仕事を手伝っている間なんて、それこそ日が昇る前には起きていられたのに。

なんでこんな日に限って起きれなかったんだろ……。

やっぱり昨日の夜、緊張してなかなか眠れなかったせいかな。


自分の不甲斐なさに少し肩を落としたくもなる。




「お約束?」


「な、なんでもないっ! なんでもないのっ!!うぅっ!」


ふん! だよ!!


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