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前衛の皆って、こんな危険な橋渡ってるの??


……っあ。


気が抜けたと思ったら、緊張が解けて足から崩れてしまった。


ペタン。とその場に座り込む。


どっと疲れが一気に押し寄せた。


「おい、大丈夫か?」


いつの間にか、皆が後ろにいた。

全然それに気がづかないくらいには集中力が切れてしまっているようだ。


「槍スキルとれたんだろ?」

「あ、うん。とれたっぽい。よくわかったね?」


「スキルの有り無しじゃ動きが段違いに変わるからな。槍を投げた瞬間にクリアしたか?」

「……よくわかったね。」


なんか全部見透かされてたみたいで面白くない!


「あいつの解体と素材の回収は今夜中にあたしらがやっといてやるから、お前はもう帰って寝ろ。今日はウルの魔法で強制的に疲労を回復してきたけどな。あれはウルの料理込みで出来る芸当だ。流石にその様子じゃ、もうエネルギーも残っちゃいねぇだろうから、ゆっくり休んでおけよ。」


「フラ!? か、帰って寝ろって、ここから1人で帰す気? 流石にモンスターは少なくなってても、レティ子ちゃん1人で帰らせるのは危険よ……?」

「寝袋ならあるよ……?」

「ああ……そうだな、レティーシア。とりあえず次の層の階段前まで行くぞ。そこで見せてやってくれ。説明するより早いだろ。」

「あ、知らない人もいるもんね。」


「別にいつかバレんだろうが、今じゃないほうがいいだろうしな。」


皆の納得いかない顔も面白いけど、とりあえず今はそれどころじゃない。

ほんっっきで疲れすぎて動きたくない。




「うぅ。ウルさんの料理が食べたい~。」

「え? 何か作ろうか?」


次の層との間にあった物陰に移動すると、急にお腹がすいてきた。

夕飯食べてからそれほど経ってないはずなんだけど、あれだけ動けばそりゃおなかだってすくよ……。


後ろからアルト様とホーラントさんが、ヴォルクウルスの死骸を引いてこちらに向かっている。


「あんまし胃に物を入れてから寝ると体が休みきらねぇぞ。明日の朝作ってもらやいいだろ。」

「えぇ……。そんなぁ。」

「あ。じゃあ、これ飲んで寝たらいいよ。」


そういってウルさんに渡されたのは、手のひらサイズの小瓶だった。


「これ、沸かしたらスープに戻るから、それなら夜飲んでも大丈夫だよ? むしろ温まって睡眠効果もあがると思うよ。」

「わぁ。ありがとう! ちゃんと朝ごはんも食べにくるね!!」


「じゃあ作って待ってるね。」


「明日は何時くらいにくればいいの?」


ちなみに今は夜の9時くらいだろうか?

時計なんて今もってないのから、予想でしかないのだけれど。


「ここは101層から敵の質も結構上がる。で、さらに150層を越えた辺りでフィールドモンスターが魔法を使い始めるからな。今日の様に走って殲滅とはいかなくなる。少し早めに5時出発だな。」


「それなら丁度いいかも。」


いつも起きてるのが4時くらいで、支度してこっちに飛んで来れば4時半くらい。

ご飯貰って丁度いいくらいの時間じゃないかな?


「えぇ~!? そんな早い時間に起きるの~!?」


メルさんがものすごく嫌そうな顔してるけど。

まぁ皆が遅れてくれる分にはボクとしては構わない。おいてかれるよりは遥かにマシだしね。


「じゃ、ゆっくり休めよ。」

「うん。じゃあ、お疲れ様でした。」


「? ……お疲れ?」

「? ……え?」

「? ……お疲れ……であるか?」

「うん? 寝袋使う?」


さっきの戦闘中に気づいたけど、使い慣れていくうちに転移までの所要時間が大分短くなってるんだよね。急げば1秒から2秒くらいで発動できるようになった。


自分の部屋を覗くと、既にシルがネグリジェで部屋にいるのが見える。

……遠くで観察してるのも楽しいな……。

ま、変な趣味に目覚める前に、ただいまを言おう。


「シルゥ~~~! ただいまぁ~!」


「きゃあぁっ!!」


おお、シルの悲鳴なんて珍しい物を聞いたよ。

録音しておけばよかった……。


「レティ!? あなた一体どこからでてきたのよ!? ……え? 今どこから入ってきたの? 扉が開く音なんてしなかったと思うんだけど……。」

「ふふーり。」


「……何その顔。後貴女、ちょっと臭うわよ。」

「えっ……。」


嘘でしょ? あ、でも1日走り続けて汗流しまくって、洞窟の中で転げまわって……。あ、そうだ。ゾンビ液も浴びたんだった……。


「早くシャワーを浴びてきなさい。」

「はぁい……」


ぐぅ。もうちょっとシルを驚かせて優越感に浸ろうと思ったのに!!


一瞬でマウントを取り返されてしまった!悔しい!!


シャワーを浴びる間に肌を確認しておく。

あれだけジュウジュウ焼かれたので、痕が残っていないのか心配だったんだよね……。


見えないところはシルに確認してもらおうかな。

……とりあえず見える限りでは、痕は残っていないようだ。


うん。安心。


ボクは色素がないので、肌が日に焼けて黒くなることがない。

その代わり日焼けには弱いんだけどね。

肌がすぐ赤くなって焼けて痛みを感じちゃう。

まぁ、今日のはそういうレベルの話ではないんだけど。




血が中で固まってしまったブーツのお掃除が大変だった。

何度お湯で流しても赤い水がでてくる。


しょうがないので疲れた体にムチをうって、ごしごしと中を洗っておく。

明日も不快なままじゃ嫌だもんね……。

他の防具のメンテナンスもちゃんとやっておく。


「ねぇねぇシルー。この黒天鋼って錆びたりするのー?」

「錆び……? ああ鉄みたいに変色したり腐食したり? そういう話は聞いた事ないわね。」


「へぇ。ステンレスなのかな?」


まぁ前世にあったステンレスも、特定の条件下では錆びるのだから、ちゃんと予防しておくに越した事はないだろうけどね。よくよく見ても細かい傷すらついていない。

今日あれだけ動いて、大きな熊に殴り飛ばされたり、モンスターに囲まれたりしたのに。


「ステン……? まぁ詳しい事は辞書に載ってなければヨルテさんにでも聞いてみれば?」

「確かに。今度行った時、聞いてみよ。」


防具のメンテナンスも終わり、ボクも部屋着に着替える。

ダンジョン攻略中でも、こんなゆっくりできるなんてすごい嬉しいことだよね……。


「で? どこから入ってきたのよ。(わたくし)を驚かせるために気配と姿でも消してたの?」

「ううん。まさか。そんなことしないよ?」


「ほんとかしら。」

「さっきまでロカスエロにいたの。」


「ロカスエロ……? ああ、北部ダンジョンの?」

「うん。」


「さっきまで……? 貴女たまに……じゃないわ。よく何言ってるかわからない時があるわよね。」

「むぅ! 転移スキルを取ったんだよ?」


「転移スキル……? はぁ? 3大次元魔法の転移?」


あ、やっぱりこの”転移”って言葉はシルに通じてる。


言語翻訳の違いなのかな……


「え? 本当にそんな魔法が使えるの??」

「ううん。魔法じゃないの。グリエンタールのスキルで……。」


「はぁ?? ……なにそれ。なんかもう呆れかえって言葉も無いわ。」

「えぇ……あ、そうだ! シルもこれ飲む?」


ウルさんに貰った小瓶をおいたまま忘れていた。

折角だし、寝る前にちゃんと飲んでおこうかな。


「なぁに? それ。」

「ウルさんから貰ったの。寝る前にどうぞって。」


「ウルさん? ウルさんてプトレマイオス・シグナスのウル・リードリヒさん?」


うっ……やっぱりアルト様と同じ苗字なんだ……。

パーティ名とかクラン名とか知らないよ……。聞いたほうがいいのかなぁ。


「よ、よくわかんないけど、そのウルさんで合ってると思う……。」

「ああ、フラさんのところのクランの人だものね。一緒にいたの?」


「うん。ウルさんて有名な人なの?」

「フラさんとか、有名なトップの3人ほどじゃないけど、調理魔法師としては最高峰だもの。有名よ?」


「有名な3人?」

「あれ? レティは本人から聞いてないの?フラさんのクランの話。」


「ううん、全然……?」

「あら、そうなのね。まぁ本人に聞けばいい話だから、別に(わたくし)が説明する話でもないのだけれど。あのクランはグルーネTOP3以内には確実に入るからとても有名なのよ。」


「ああ、そういえば……フラ先生って冒険者ギルドで有名な人だったっけ……。」

「今更何を言っているのよ……。」


そういえばフラ先生って自分たちの事全然話してくれないもんなぁ。

まぁボクから聞いてないってのもあるのかもしれないけど。


とりあえずウルさんから貰ったビンを開けてみると、固まったスープが入っていた。

2人で分けるとちょっと少ないけど、一人で飲むよりもきっとおいしいもんね。

熱を入れると、とろっとしたスープになった。


なんだろこれ。寒天かな?

どうやって固めてたんだろ。


「うわ。おいし。」

「温まるわ。ウルさんの料理って、露店で売ってるんだけど効果と味がすごいのに、価格が安いからすぐ売切れちゃうのよね。」


「へぇ。お店とか出してるんじゃないんだ。」

「あの人も冒険者パーティの一員だもの。お店を出すよりも料理を作りおきして、販売員を雇って露店で出した方が時間にも場所にも都合がいいんじゃないかしら。販売員もお弟子さんを使っているようだから、人経費もタダでしょうしね」


「へ~……流石に付与効果が長時間付くだけあって、やっぱり売りに出したら売れるんだね。いいなぁ調理師。冒険に出てる間も儲かるなんて。」


お料理かぁ。今から頑張ったらできるかなぁ。


「調理師は結構大変よ? 食材の調達とかにお金もかかるし、とにかく量作らないとスキルもとれないし、レベルも上がりにくいらしいわ。」

「え~、そうなの? じゃあイオネちゃんに任せよ。」


「……イオネも大変ね……」

「まぁ、ボクは付与士関係のスキルがないから調理師は難しいんだって。」


「貴女は魔道士か魔法兵士向きよね。」

「あ、そうだ! ついさっきなんだけど、槍スキルとれたんだよ!」


「ええ!? そ、それは本当にすごいじゃない。純粋な魔法士が前衛スキル持ってるなんてなかなか聞かないわよ? 一体どんな訓練したのよ……」

「え? ……なんか大量に集めたモンスターの群れに囲まれながら一人槍で突かされたり、大きな熊に単身槍1本で突撃させられたり……」


「た……逞しいわね……。」

「逞しくはなりたくないかな……。」


よくよく見てみると、足とお腹の筋肉が今日1日だけで異常についている。


足を伸ばすと太ももの筋肉がでてくるし、必要のない脂肪が極限まで排除されてしまった為、お腹もシックスパックだ。……胸もちょっと縮んだ気がする……。なんか悲しくなってきた。


「はぁ。今日だけで1か月分くらいは疲れたよ……。」

「もうすぐ夏休みよ? うちでちゃんと仕事してもらわなきゃいけないんだから、ちゃんと体力は残しておいて貰わないと困るわ。」


「あ、モンスター殲滅?」

「イオネに聞いたの?」


「ううん、フラ先生に。」

「ああ、あの人も毎年参加してくれているものね。」



「ふぁ……。」


「眠そうね。」

「うぅ。明日も4時半には戻らないと……」


「あら、じゃあ今日はもう寝ましょう」

「うん……」


うとうとしだしたボクを、ベッドの上までシルが担いでくれた。


おやすみなさい。


シルも一緒に寝よ……。




むぎゅう。


「ちょっと!?」




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