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迷宮のボスは獣ばっかりなんですか??

ドオォォォォン!!!


トラックが正面衝突でもしたんじゃないかという音が響き、ヴォルクウルスさんとやらが倒れこんだ。突然全速力を止められたのだ。受身の取りようも無い。


メキメキッと鳴った音は、ヴォルクウルスのどこかの骨が砕けた音だろうか。


倒れている隙に少し距離をとっておく。



単純に突進してきたスピードを利用して設置盾(アンカーシールド)を目の前に繰り広げただけなんだけど、あの巨体であのスピードが自分にすべて跳ね返ったんだから、相当なダメージを受けたはず。

だいたいね? ボス区分の敵が、部屋に入ってきたちんまい人族に対して全力で突進してくるってなんなの? 普通もっとこう……優雅に挑戦者を待ち受ける的な余裕は持ち合わせてないの?



グゥォオオオオオオオオオ!!!



うっさい!


威嚇ってのはやっぱり音量も重要。

恐怖で萎縮するのもあるし、この音の大きさでどうしても体が硬直してしまう。

突っ込んできた時に一番ダメージを受けたのであろう左肩を、プランと垂れ下げながらボクに対して敵意をむき出しにし、右腕を振りかざした。


さっきの全力突進でも設置盾(アンカーシールド)を突き破れないのは実証済み。

右腕が薙ぐであろう位置にシールドを置くと


ドォン!!


と、さっき程ではないにせよものすごい質量がぶつかった音を立て右腕が止まる。


その隙に懐に走りこむ。


腕を振るう為に下げた上半身へと突っ込む。

熊の胸の位置に真っ直ぐ飛びかかり、槍を一直線に構えた。


「えぇいっ!!!」



ぽす。



「え? ……。」


刺さるどころか傷一つつかない。


「うわぁっ!?」


槍が刺さると踏んでいたせいで、思わぬ結果に体勢を維持できなくなってしまった。

このままでは地面に一直線。

咄嗟に設置盾(アンカーシールド)を設置。その上に着地する。


「うわぶっ……」


はい。着地とかいって格好つけました。顔面から落ちただけですね。


っ!!


寒気を感じて顔を上げると、既に熊が上体を起こして右腕を振り上げていた。

やば。このままじゃ潰されちゃう。


咄嗟にまた頭上に設置盾(アンカーシールド)を設置。


ものすごい音と共に腕が止まった。

何度も何度も思いっきり叩きつけて痛くないの!?

そろそろ本当に怖いから学んで欲しいんですけど。


目の前にでかい肉球が見える。


……。


設置盾(アンカーシールド)の一部に穴を空けて、槍を通した。


「えいっ!!」


グサ。


あ。肉球なら刺さった。


とは言ってもさきっぽだけ。

正直ダメージとしてはささくれ程度で大したことも無い。

少し痛みはありそうだけど、これじゃ何のダメージにもなっていなさそうだ。


そのまま、足場にしていた設置盾(アンカーシールド)を消して、落下速度を利用して飛び降りざまに上段斬りを入れる。


……が、サーーーという音しかしない。

棒でカーテンつついてるような感触。

うん。とても空しい。


全くといっていい程攻撃が効かない。

相手の攻撃もボクの設置盾(アンカーシールド)を貫けないから効かないんだけど、そもそもダメージが通らないのと、防御してるからダメージが通らないのとでは差がありすぎる……。


このままじゃジリ貧ってやつなんじゃないでしょうか……。




ふと、他の5人が視界の先に入ると、完全に観戦モードでもちろん助ける気などさらさらなさそうだし、アドバイスをくれる気すらなさそうだ。


はぁ。


とにかく、現状を整理しよう。


まず、相手への攻撃は表皮を貫けないが、柔らかい所なら通る。

相手からの攻撃は、基本打撃か爪の斬撃で、設置盾(アンカーシールド)は通らない。


ボクがこれから狙うべき攻撃は、やっぱり生物の弱点である目を狙ってみること。

後は……弱点のようなものがあるのだろうか。


改めて観察してみると、一言で熊というには大分違う部分もある。

爪が鉤爪でもつけているかの様に異常に長いし、角が額に2本生えている。


角の間に、緑色の宝石みたいな光るものがついてるし。

色は茶色でお腹が黄色っぽい白っていうのは、そのまま熊っぽい。

う~ん、やっぱあの緑色の宝石も怪しい。狙うべき場所ではあるかなぁ。




……ってことは基本的に顔しか狙うべき場所がないってことか。

怖いなぁ。ほんと。

相手の一番怖いテリトリーに入ってかなきゃいけないってことじゃん。


そんなことを考えていたら、今度は熊が()()を振りかざした。


「うぇっ!?」


左腕が回復してるの!?

こんな速度で回復してくんのかいっ!!


両手で潰しにかかってくるけど、もちろん設置盾(アンカーシールド)は通らない。


その瞬間に意識を飛ばした。


目の前に熊の顔が見える。


めちゃくちゃ凶悪な顔をしている。肉食獣らしく目が真っ黒で、口周りの皺を寄せ牙をむき出しにする表情。


こわっ。


そんなことを思っているうちに浮遊感に襲われた。


「はぁぁぁっ!!」


転移ざまに一閃。


転移してから動こうとした為、準備が間に合わず額よりも大分落ちてしまった。

熊のほうも、突然目の前に出てきたボクに硬直している。


丁度いい位置にきた左目を薙ぐ。



ぐじゅっ!

ウォォォオオオオオオオオオオ!!!


「おしっ……」



ブンッ!



「ぶえっ!?」



視界に一瞬黒い影が映り、音が聞こえたと思った瞬間、体が宙に投げ出された。

天井が目の前に見えると同時に、激痛が全身を襲う。


どうやらヴォルクウルスが突然目の前に現れた異物を、反射的に振り払ったのだろう。

まだ裏拳でよかった方だ。


爪が入ってたらかなりまずかった。


「うっ……」


全身打撲だろうか。体を動かすのが辛いけど、大分上空に飛ばされたお陰で時間はある。

自己治癒能力を強化。さらにこのまま落下したら地面に叩きつけられてしまう。


熊から見て死角になる位置に意識を飛ばす。

転移先では、落下速度はリセットされるようで、落下速度によるダメージを受けることはなかった。


筋肉挫傷のような痛みが全身に走る。





「何? あれ……? 瞬歩ってやつ? でもあれって結構高度な前衛スキルじゃなかったっけ?」

「いや、瞬歩は相手との距離をつめるスキルだからね。使えたとしても、今みたいに距離をとる為には使えないはず……なんだけどな。」

「レティーシアさんは魔法防御が高いのになかなか有効には使えていないのであるなぁ。」

「そりゃ仕方ねぇだろ。前衛戦闘は今日が初なんだぞ?」


「はぁ?」

「へ?」

「え?」

「フラ……お主、教師として以前に、ちょっと人としてどうなのであるか……。」


「それでもよく持ってるだろ? あいつ。このまま倒せんじゃねぇか?」

「それはどうなの……? 攻撃が一切通ってないじゃない。なんで槍に付加効果をつけないのかしら? このダンジョンに入ってすぐ使ってたし、できるのよね?」


「忘れてんだろ。」

「れてぃーしあちゃん、頑張って……」




向こうでなんか先生達が話してるけど遠すぎて聞こえない。


向こうで音を出していてくれるお陰か、熊がまだボクの位置を把握できていないようだ。

今のうちに回復をしておきたい。


グルルルゥゥゥゥゥゥウウウ


うん? さっきまでとは唸り方が違う?

うううん? 熊さんの毛が赤くなってきてない??

燃え……え? ……燃えてる??


ふと見ても観戦モードの5人は何もしていない。


何もしてないんだからいい加減あの暢気な方攻撃してよ。まじで。

なんで見えないボク探してんの?

脳みそも大きいはずなのに馬鹿なのかな?


え? あれ。こっち見た。


左目は完全に塞いでいる。やっぱり有効だったみたいだ。


……そんなことよりも、全身が燃え盛り始めた。

先生の精霊武装のように炎を纏っている。

先生は全身が炎化して透けるけど、この熊はそうではない。

本当に炎を纏っているかんじ。


「つまり精霊武装っていうやつじゃないってことね。」


第2形態とでも言うのだろうか?

明らかにボクを見つけている熊が、まだ遠くにいるのに右腕を振り上げる。


あーまずい。

これ攻撃パターンも変わる奴か。

急いで設置盾(アンカーシールド)を設置。



ぶわっ



という熱気と共に、横薙ぎの炎の塊が視界を多い尽くした。


「うそぉ!?」


予想よりも遥かに激しい攻撃に、思わず腰が引ける。





「あ~あ。変身しちまったな。」

「これ、レティ子ちゃん大丈夫なの? ああなると近づくだけでもダメージ受けるのよね?」

「まぁ……ヴォルクウルスは近接で倒すボスじゃないからね。」


「あの毛皮、魔法耐性も結構高いのよねぇ。私は1人でとか戦いたくないわ。」

「もうちょっと筋力の上がるお料理にしてあげればよかったかなぁ……」

「この状況はもう、筋力どうのと言う状況ではないであるなぁ。」




ちっ。


”隠れる”みたいなスキルとかないのかな。

そしたら流石にボクを探すのはやめて、あの人たちのとこに行くんじゃない?

そう!!

こういう時のグリエンター……はい、とれてなーい。


あーはいはい。とてもボクの為になるスキルでほんと。涙がでちゃうよ。




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