ある~日、洞窟の中~!出会いたくないっ!
4kmの短距離走を走り抜け、モンスターの群れを討伐。
強制的にウルさんに回復させられて、さらに階段を下りる。
この繰り返しを何十回も繰り返してきた。
一瞬で疲労と筋疲労の両方を回復できるというのは、単純に訓練としての効果数日分が一瞬で得られるという事に違いない。
むしろ経験という部分においては、回復に時間をおくというスパンが無い分、忘れないうちに次の経験へ繋げられてさらに効率があがっているくらいだ。
……とはいえ、経験が消えないということは、精神疲労も一切消えないという事。精神疲労はどんどん蓄積されている為、これを続けていけばいつかは発狂するだろう。だろうというかする。絶対。……もうすでにしそう。
モンスターの群れも深層に向かうにつれどんどん手強くなっていき、99層にたどり着いた頃にはモンスター1匹の難易度も”F”から”G”というレベルに達していた。
ちなみに、一般冒険者への昇級試験資格である『過去1年以内に難易度”F”以上を25回以上』という条件には、難易度”F”以上のモンスター・魔獣を1種につき1回まで計上する事ができる。
つまり、ここから新種のモンスターを倒せば倒しただけ試験資格条件をどんどんクリアできるというわけもあり、一般冒険者へあがりたい登録冒険者が、ここまでの道中相当数いたみたいで、特にこの階層は結構人の気配がする。
「せいっ!」
ガンッ
ブシュッ
「やぁっ!!」
ザシュッ!
槍を胸に強引に突き刺した瞬間に、次の槍を作り出して首を刎ね飛ばす。
意外にこの戦法は効き目が高く、どこの部位でもいいので武器を一度突き刺せれば、首周りのガードがものすごく開きやすいのだ。
武器を刺されたということは、つまり相手の武器はここにある。
そう思ってしまったら他の部位に意識がいかなくなるのは当たり前かもしれない。
緑色の人の形に近い2足歩行の亀の首が地面に転がった。
ボクがやっと2体目を倒したところで、周りのモンスター駆除がすべて終わってしまった。
……試験資格条件は最低限自分も討伐に加わっていないと記録されないんだよね。
あわよくば増えればいいとも思ってたけど、思っていたよりは溜まらなそうかも。
今日の到達目標である100層まで後1層。
50層で休憩してからかなり調子よく進み、ボクも2層に1回ウルさんに回復してもらう程度で進む事ができるようになってきた。
「ボク、もしかしてすごい体力ついたかも!?」
討伐モンスターの登録を終えたところで自分でも驚くほどに疲れていない事に気づいた。
「ああ、そりゃこんだけ短期間に400km近くも走りゃ体力もつくだろ。ウルの料理も食ったしな。」
「ウルさんの料理?」
「ああ、ウルは調理師の称号をもってるからな。」
「調理師?」
料理人ってこと? 普段はお食事屋さんでも開いてるのかな?
「予想通りの誤解をしてるだろうから一応訂正してやるが、調理師ってのは魔法士の上級職のことだぞ? 正確には付与士の上級職の一つだな。」
「へぇ。 魔法士にも色々あるんだね。」
「わたしの料理はね? 魔力を込めながら作ると能力向上効果が期待できるの。素材の質や鮮度、料理の完成度に左右はされちゃうんだけど、普通の付与魔法は常駐させないと10分も持たないでしょ? でも私の料理なら最大で12時間も効果が続くんだよ?」
「え? 12時間? すごっ!」
「最大でだけどね。でも今日の料理だって素材の質もよかったから8時間以上は続くはずだよ?」
「それでもすごい! 常駐魔力も使わないんですか?」
「もちろん。」
「いいなぁ調理師! ボクも料理がんばろうかなっ!?」
頑張るも何も、殆ど料理なんてしたことないけど……。
単純に魔力込めて料理作っただけじゃだめかな!?
「あはは。調理師になるには、付与士関係の魔法適正がないとだめだよ? 付与士魔法と料理スキルをあげていくと調理士になれるから、そうなれたら後はどんどん頑張れば調理師になれるよ!」
「調理師って2段階あるんですね……。う~ん。ボクは付与士関係の魔法適正って無かったから、難しいのかも。イオネちゃんに頑張ってもらおうかなぁ。」
「お前の適正じゃ無理だぞ。お前はどちらかというと魔法士としては魔道士や錬成士よりだな。」
「錬成士?」
「魔法で生物や無機物を創造することを得意とする魔法士だな。」
「おお、ゴーレムみたいな?」
「そうだ。あたしの精霊魔法もその延長線上だ。」
召還士みたいなものね!
あ~それもいいなぁ。魔法って色んな事できるから迷っちゃうね。
「さて、次は100層。つまりボス部屋だ。」
「あ、うん。」
「扉が閉まってるな?」
今までは無かった扉が、階段の先に見える。
「閉まってるね。」
「ってことはボスがいる。」
うわぁ。ほらやっぱり。そうなると思ったよ。
「で? ボクが1人で倒せって?」
「あ?よくわかったな。」
「よくわかったな。じゃないよっ!! もうなんか慣れてきた自分が嫌だよ……。」
「100層のボスはクリエ・ヴォルクウルスだ。」
「うんうん。」
はいはい。どんなモンスターなんでしょう? 先生。
「じゃ、頑張れ。」
「え?」
「え?」
「え?」
ドゴゴゴゴゴゴという、見た目通りの重そうな音を立てながら扉を開いた。
……
ちょっと待て。
こういう状況って、敵の特徴とか攻撃方法とか? 注意事項を教えてくれて、ちゃんと準備してから普通入ってくもんじゃない? そうでしょ? そうだよね??
だってアルト様とホーラントさんですら、ぽかんとしてるよ?
メルさんとウルさんに至っては、まだ扉を開けたこの状況を理解すらしていないよ???
「シュヴァルツ・クラウンウルフの時に使ってた斬撃の様な魔法の使用及び攻撃魔法の使用はすべて禁止。近接武器なら槍じゃなくても何を作ってもいい。武器への付与効果は……ありにしてやるか。設置盾の様な防御魔法はちゃんと使う事。気を抜いたら死ぬ。以上。」
ウグゥオオオオオオオオオオオオオオ!!
うわっ耳が痛い!!
よく戦国時代のドラマなんかで聞いていた法螺貝の音をものすごく重低音にしたような鳴き声だ。
ここにも今まで通ってきたダンジョン内と同じく魔道具の光が設置してある。
遠くには、大きな影が見える。
……熊?
4足歩行の全速力でこちらに走ってきた。
……まずいまずい!
なにあれ!? でかっ!!!
ボクの目測が間違ってなければ、この間戦ったアークゴブリンと同じくらいでかい。
つまり頭のサイズだけでボクくらいある。
それが猛スピードで突進してくるのだ。
まずいでしょ!?
とりあえず心の拠り所として槍を創造しておく。
心もとないけど無いよりましなんだよね。
……
ボク、さっきまでそこで普通のモンスター相手に苦戦してたんだよなぁ。
いきなり槍でボスモンスターってどういう状況よ、これ。
あーでも……きてる……きてるっ!!ってかでかっ
でっか!!!
なんで!?
ここには6人いるのに、何でそう都合よくボクのところにくるのさ!!!
うわあっもうっ!!
どうにでもなれ!!
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