誠とディオン
2018年、数回の掲載。
お付き合いくださり誠に誠にThanksです。
今回は和やかな旅路をお楽しみください。
相当な高さ横幅のある扉。
縦20横10メートル以上。
誠が押して動くわけがない。
「今までのとこみたいに鍵石探すの手伝ってくれって「アレ」」
遮るディオン、
指差す先には扉の鍵だろう光石。
ただ
10メートルくらい上。
「ジーに手伝ってもらっても無理…」
と話している間に、
扉は轟音とともに開きはじめる。
扉の向こうから現れたのは
1
見た目は硬そうな栄養バー的な何か、
手に持つと意外と柔らかくナンのような手触り。
誠は合掌。
「いただきま「わたしは2088ディオン」」
ディオンは食べる前に自己紹介が先だった。
「わりぃ、俺は青葉誠」
「ア・オバマ・コトー」
「なんだその妙な区切り方、ア!オバ! マコト!」
「ア!バオマ!」
腹の虫は鳴る。
イライラしてるわけではないが、天を仰ぐ誠。
「その生き物に念力で正しく教えてもらったりできないのか?」
ネコサンはテーブルの上を這う。
その這った部分は光り、文字が書かれている。
【青】【葉】【誠】
と書かれているのかもしれない、が草書体のような字体で誠には【青】と【誠】しかわからなかった。
が、書いてくれた文字をひとつずつ指差し、
「青空の青に葉っぱの葉でアオバ、誠実の誠でマコト、OK?」
「アオー、ハー、セイ? OK!」
「セイだけど、セイじゃない、マコト!やまかつみたいな言い回しはNo Thank youだよ!」
「セイ!セイ!セイ!セーイ!」
何だかわからないが愉快になってきた。
「わかったから!もうそれでいい」
勢いで持っていた例のブツを勢いよく囓ってしまった。
そして口内に広がるビターチョコのようなほろ苦さと後に続く甘み、ベリーのような酸味、そして水分とは無縁そうな手触りとは裏腹に見た目からは想像もできない水気を含んでいて乾いていた口喉を潤してくれて、水気がたっぷりなのにシャキシャキと繊維質な噛みごたえ。
夢中でその一本を食べ尽くしてしまった。
無言で噛みしめ味わい、あっという間に。
「見た目とはかけはなれた…美味、たしかに御馳走だった…好きな感じ」
その様子をじっと見ていたディオン。
「アオソラのアオ、セイ、もう一個」
「キミの食べる分だろ」
「キミ?わたしは食べなくてもヘイキ」
「なら遠慮なく」
誠は残りひとつを手に取り気障に半分に千切ろうとするが、硬い!!
『簡単に噛み切れたのになんで千切れんのだ!』
ジト目で見られている。
苦闘の末なんとか千切りディオンと半分ずつ食べた。
「呼称、ディオンでいい」
目はないが、ネコサンはふたりを見守る。
2
食べながら情報交換とはならなかったが、食べ終え落ち着いて。
「あ、」
誠は重要なことに気づく。
習慣、食後の歯磨き。
「歯ブラシってある?あと、水、危険じゃない水」
「…アー?」
ネコサンがディオンの腕で点滅発光している、何か伝えるときの仕草だ。
「あー!こっち」
暗い中能面型の人形が先導してべつの部屋へ。
そこには壁を流れ落ちる水。
水溜。
洗面室のように見えなくもない部屋。
『歯ブラシは…』
キンッ!キンッ!キンッ!
人形が急に壁石を削りその欠片を手渡す。
『これ歯ブラシ代わりってか?…ヤスリよりも酷くないか…』と思ったが渡されたその石片は先程の金属音が嘘のような手触り。
ネコサンからのテレパシー
『ガム、歯、磨けるガム』
さっきキンキン音立ててたコレが、ガム
そんなバカなとは言わず、厚意を無駄にしない。
噛んでみる。
たしかにガムだった。ついでに水分も染み出てきて吐きすてながらガムに見えない石片だったガムを噛む。
謎の歯磨きを終え、人形とディオンは入り口で待っていた。
「歯、磨かないの?」
「あの食べ物はそういうの必要ないようにできてる」
「先に言ってほしかった…喉が乾いた…」
発言後近づいてきたドール一体が丁寧に茶碗っぽいものに水を注いでくれた、が、
『その水、手首から出てましたが…飲めるんですか!!』
厚意は無駄にしない。
いただきます。
再びもとのテーブル、椅子へ戻り。
これからどうするかの会議。
と言っても、することは1択。
紅い光石の扉からその先へ行きどこかわからないここではないところを目指す。
「その扉の先に行くにして、その準備は!扉の開け方、食料、衣服!色々必要だと思うんだけど?」
大型の無面人形が一体うずくまり、伏せる。
すると背中が開いた。
「必要なものはこの中に、この子たち数体連れてく」
「今まで気にしてなくかったが、俺は寝てたときのジャージ姿なんだな」
裸で寝てなくてよかった。
「着るもの作れる子も連れてく」
「まさかここの人形全員の大所帯で行くとか?」
「荷物係の1体、食衣係の1体、防衛係の1体、ネコサン、セイ、わたし」
「道程がわからないわりには少数すぎなんじゃ?」
不安をよそに誠が目の当たりにした各人形の能力は凄かった。
3体の性能を披露され、勢いで拍手。
連れて行く人形にはディオンが名前をつけた。
ジー、ギー、ユー。
いざ紅光石の扉へ。
「しかしだ、開け方もわからないのにどうしろと」
「ネコサン、わかる?」
呼びかけにほんのりと光る。
「昔のセイは何でもできたらしい、ソラ飛んだり、何もないところからモノ出したり消したり、扉開けたり」
「『扉開けたり』だけ、なんか地味なんだけど…ピッキング的な何か?そんなの…」
と喋りながら何気なく紅く光る石に手を添えると、壁は開いた。
「わー…」
「ピッキングですらないけど!空飛べたり物を消したりの方が遥かに良かったんじゃない!?何だコレ!!」
「それは転生前のセイの能力の一部、きっとそのうち別な事もできるようになる…はず、とネコサンは言ってる」
レベルアップには段階が必要。、
今はこのパッシブスキルが唯一できること、何もないところから大剣を出したり、ドラゴンを喚び出したり、そのドラゴンと一緒に飛んだりできるようになるはず。…なったら、いいな、…いいね。
「さー、いってみよー」
ディオンは淡々としている
が、嬉しそうに見えなくもない。
とりあえずは良し!
お供ドールズ、ユーが放つ光で道を照らし勇み歩き出す。
先に進みだしていた誠に遅れて立ち止り室内を振り返るディオンの横顔
『 』
140年過ごした部屋と人形へ、
出発の挨拶か別れの挨拶か、聞きとれなかったが口元は動いていた。
3
道中雑談
「俺を召喚するよりも、ここの上?地上に住んでる人とかディオンの姉さん?を召喚した方がそうとうよかったんじゃない?」
「ネコサンは縁のある人しか探せないし喚べない、長い時間かけてやっと見つけたのがセイ」
「話変わるけど、そのネコサン、『ネコさん』てより『スネーク!』とか『アメーバ!』って見た目なんだけどなんでネコサンなの?」
「??ネコサンはネコサン、なんとなくネコサン」
「ネコがわからないなんて、やっぱここは地球じゃないのかもしれない、そんな気はしてた…、で何て星?異世界?きっとこの世界には可愛いにゃんこはいないんだ」
誠はたいそうな猫好き。
「…何を言ってる?」
言ってる意味は理解してないが引き気味のディオン。
「連れてきたドールたちもネコサンも、凄い能力だらけじゃん?もっと何かないの??特にネコサンに期待してるんだけど」
『ある程度、然程遠くない距離なら、縁がなくても視ることはできる』
「触れてなくても喋れるんじゃんジャン!って今ちょっと驚いたんだけど!?」
『この程度の発信なら触れずともできる、触れるときは情報量の多いときだ』
「すげぇ、テレパシー使う生物。ただののっぺらぼうスネークじゃない」
『痺れたいのか』
「いやいや、冗談!」
『この先、約1512000メートル先に大型空間』
「それは冗談?」
「ネコサン、嘘つかない」
ディオンは驚くこともなく淡々としている。
見た目は10代半ばから後半程度だが、140年以上生きてきた彼女にとっては大したことではない。
たった22年のうちの数日と140年の数日の感じ方、
ディオンとのその差を実感した瞬間。
時計はなく時間など正確にはわからないが約20日後(睡眠回数で数えた)、
その大型空間に到着。
ドールズ、ユーの発光を切っても空間を明るく照らすを天井に散りばめられた照らす光鉱石、そして、高さ大きさは測れないが月のように目立つ輝きの光石。
大きな白金の輝き。
まるで夜の星空。
今までの道中、扉にあった紅の光石以外はほぼすべて蛍のような緑色基調。
この空間が何のための空間かを調べるため、調査をする。
が、その前にディオンへ伝える。
「この天井は夜の星空によく似てる」
伸びきった髪で左目は隠れてるが、
天井を見つめる右目はとても輝いている。
しばらく邪魔せず一人で調査。
と、めずらしくネコサンが用もなく首に巻きついてきた。
珍しいペアで調査。
人類かどうかはわからないが、生活痕、と言うか文明痕。
何かがこの空間にいた形跡と、8つの扉を見つけた。
「行き先選ぶ系ー、ネコサン先の透視頼める?」
『既に始めている、待て』
ディオンの口調はネコサン譲りなんだろうと誠が感じた瞬間。
「質問、なんでディオンはアオバマコトは言えないんだ?」
『ここの言葉の発音問題だ、言えないわけじゃない。言えてだろう?【ア・オバマ・コトー】』
「ア・オバマ・コトー…」
遠くからディオンの呼ぶ声が聞こえる。
「セーーーイ!」
140年以上の歳月生きているらしいが、まるで子供のように感じる瞬間もある。
4
最初の扉をでてから幾日歩いたのか。
時間は全くわからない。
時計が欲しい。
居住空間から持ってきた栄養スティック、ドールズギーの作ってくれるそれ。ひとつ食べたら10日くらいは食べなくとも思考低下にもならないし空腹感に襲われることもない凄い食べ物だった。
今日まで何本食べた。
最初は自力で歩いていたが今では3mドール、ジーの手のひらに、座っている。
俺もディオンも。睡眠もジーの手のひらの上で寝ている間にも移動を続けている。
ディオンは元々あまり喋るタイプでもなく表情の変化も豊かな方ではなかったが、ハッキリとわかる。
出発直後の期待に満ちた表情、プラネタ空間で見たような輝きは全くない。
出発時からずっとドールズユーが暗闇を照らしてくれている。
ユーだけではない、今では移動乗り物となっているジー、食料や飲料水の精製を体内でしているギー。
このドールたちの動力は何なのだろうかと当然に現れる疑問、考える時間は相当にあったが、解体するわけにもいかないのでそういう考えはやめた。
出発前の食事を入れて10と数本。
半年近くは経ってる。
たぶん、おそらく。
途中に天井光石のプラネタ空間に出たときがいちばんテンション上がった。
その空間で8つの扉を発見、ネコサンの透視で見える範囲にはどれを選んでも何もないということで、ディオンの直感で行き先決定。
特殊能力『扉開』を使い先へ。
その後、暗闇の中で山やら谷やらを登ったり降りたり。
しかしディオンが選んだこの道、自然物でなく人工的につくられた道であることはわかる。
自然にこんなものができるわけがない。
人面のようなモニュメント付きの階段、
壁にはデスマスクにしては大きすぎるヒトの顔の穴など。
不気味さともに、何らかの知的生物の痕跡。
しかし、疲れた。
何もしてないのに。
気の紛れる何かが欲しい。
「くぇーーーーっ!!!!」
思わず叫んだ、その声が響く。
チラッとディオンの方を見るが無表情。
結構な大声だったにもかかわらず叫んだことに反応はない。
だが、全く関係のないあることに気づいた。
ディオンの左目、いつも髪で隠れてて見えない。
見たことがない。
どこぞの幽霊族の人みたいな感じで隠れている。
隠れているのか隠しているのか。
急に見たくなる好奇心。
思わず溢れたひとこと、
「その長い髪、切ってやろうか」
「………………気が向いたら」
「よし、休憩ついでにすぐ切ろう」
跳ねるようにジーから降りる。
ジーを屈ませ背中から布を出し準備をはじめようとして気づく。
ハサミがねえ!ハサミが!ねえ!
「休憩はOK、髪はまだ気が向いてない」
「切るものがなかった、安心してくれ」
安心て何のだ…。
と考える間にネコサンが首に巻き付いてきて伝わる映像
【扉】
そしてまたディオンの腕へと戻っていく。
「落ち着いた?」
「もしかしてこの先!?」
『目標扉まで約700000メートル』
「意外と近いじゃん!もっとはやく教えてくれって!」
『調子に乗ると思ったからだ』
予想通り、調子に乗っていた。
そのテンションは続き、
様々なやりとりをしつつ歩を進め
奇妙に遺跡地味た道をひたすら歩き目的の行き止まり、扉前へ到着。
そこにあった扉は予想もしない大扉。
「この向こうに人いんのかな…って、ネコサンの映像じゃ比較物なくてわからなかったけど扉大きすぎじゃん?」
『中の様子は視えない、暗いとかではなく視えない』
「開けるところ探そー?」
無駄だろうとわかっているが、とりあえず押してみる。
JCG 003 邂逅、出発、プラネタ、ふしぎ発見
お供ドールのこと、中に入れたかったのですが。
どう入れたもんかと悩んだのでやめて
ここで簡潔に。
お供ドールの能力紹介!
荷物ドール ジー
食衣ドール ギー
戦闘ドール ユー
ドールの動力は謎です。
ネコサンと同じく、この世界の不思議です。
荷物担当のジー
背面部背骨ラインの両脇が開く仕組みになっていて、
何えもんには負けますが何か色々たくさん入ります。
今回の旅の出発にあたり、たくさんの布、衣類、食用バー、水、娯楽品はないのでその程度ですが、あの生活空間にあった当面分の食料等を全て詰め込んでもまだ余裕のある凄い子です。
戦闘型ではありませんが約3mと身長が高く、誠とディオンを両手あるいは両肩に乗せて移動してくれるパワーのあるドール。
食、糸、水、製造担当のギー
どういう仕組みかは謎ので何を原料にしているのか不明ですが空気中の元素説あり、体内で栄養バー的なアレみたいなモノや水、糸を作れます。
地味ですが。この子すごいです。
糸はいつでも作れます。
糸は指先から、
水は手首から、
食料は腹部ポケットから出ます。
栄養バーは1本で300時間程度は活動できる長持続な栄養があります。
某豆のようにケガが治ったりはしません。
1本の精製には640〜760時間、味にこだわらなければもっと早く作れます。水作りは栄養バーとの同時進行ができないので水の精製をするとバーの精製が少し遅れます。
水の精製はギーへの貯め込みではなく即作即使用or保存です。保存は水筒と言うか大瓶に移しジーの背中行きです。
出発前に食べた御馳走程の味のモノは1つあたりに1年程度の時間を掛ければ可能。生命線ドールです。
高さは2m程度。
戦闘担当のユー
お供ドールの中で1番小型約1.5m、ですがたぶん強いです。
争う相手が蜥蜴の一匹も現れないので出番はあまりありません。
扉の先の暗闇を照らす照明の約をしてくれたり地味な活躍でした。
武器は指先からのビーム、他には腕が刃になったり体内に隠し武器が仕込まれていたりするそうです。個人的に■ケットパンチがあったらいいなと期待してます。活躍をおたのしみに!
ドール共通、
ヒト型で二足歩行のように見えるが、反重力装置で数ミリ浮いている。足を動かさずスーっと移動したらそれっぽく見えるしそうもできるがなぜか人のように一歩々々左右交互に足を動かし歩いている。
名前を貰えず元の場に残されたドールたちはいつか、迎えに来てくれるのでしょうか。
他の子らも迎えに来て、名前をもらえたりしたらなんだかほほえまですね〜。
来月はまた27日更新になるかと思われます。
来年もよろしくお願い申し上げます。