怪夜
現実界2013年〜18年、
異世界から召喚された美少女が数々の勇者を召集し音楽と言う名の魔法で楽しい時間をつくり、そこに集う人々と鍋を囲み食すお祭りがありました。
この物語は、その美少女が来た異世界の未来の話。
エピソード4くらい。
あのお祭りを愛してくださった皆様へ感謝をこめて。
本作はほとんどフィクションです。
実在する人物、団体、地名とはだいたい関係ありません。
突然ですが時間旅行をしたいです。
具体的には過去へ。
もしも現実史の過去にいけるなら、
コールドケース現場やネットの海に流れている怪事件の現場に張り込みをして真相を見たい知りたい混ざりたい。
過去へ行きそれを見て帰って来れたらそれをネタに物書きになりたい。
外見は10代半ば、少女がはしゃぐ。
無表情で緩急も感じられない言葉を発しながら喜んでいる。
彼女の腕には顔のない生き物が纏い、螺旋に廻り喜びを表す。
同室内には無数の人形、人形たちはただじっと―――
ひとりで住むには広く、狭い空間で百四十余年
「人に会いたい」
「大地を見たい」
願いはそれだけ
その日から彼女は、
1
高級ホテルの社員用医務室にて美人女医に「また貴様か、これでも飲んどけ」と、投げやりにどデカい瓶ごと渡されるトランキライザー、他多種類の薬。
大量の薬をもらうのは22歳、男性。
職業、カジノディーラー。
以下はどうでもいい話。
彼の生活と彼の身に起こる不思議な現象、と、ついで程度の彼の紹介。
毎朝6時に好きなアニメキャラクターのみみもとささやきボイスCDをセットした目覚ましCDプレイヤーで起床。
そして出勤準備、シャワー、歯磨き、食事、歯磨き、着替え、etc.etc.etc.
歯磨きは2回。
住居は職場であるホテル、その中の社員用フロアに住んでいて職場フロアまでは徒歩とエレベーターで約120秒。
9時から17時までの労働、合間に休憩3回合計時間が1時間なら休憩入出のタイミングは客からの指名等がない限りほぼ自由。
日勤、夜勤、深夜勤務とシフトローテーションがあるが病気を理由に1年間、日勤固定にしてもらっている。
夕方、仕事が終わったら仲の良い上司の仕事が終わるのをわざとらしく待ち外食へ、優雅なディナーをご馳走になってから帰り、寝る。
週4くらいで夕飯をご馳走になっている。
なんとも図々しい。
そして、なんて羨ましい上司。
休みは週1、稀に2、休日は寝て過ごすか金があれば酒を飲み歩くかギャンブルか。
金がなくなったら部屋でネトゲ、だめにんげんだもの。
ギャンブルで先立つものがなくなっては上司に夕飯をたかっている。
恥ずかしく情けない。
とことん堕落生活、無職じゃないだけ救いだが、結婚はしたくないタイプのギャンブル中毒。
彼は月に一度、社内医務室へカウンセリングに通っている。
他社員は急病時と年一度の健康診断にしか使用されない、『あったらいいな』程度の医務室の常連。
理由はギャンブル依存治療ではなく、夜な夜な怪現象に襲われていると言う妙な理由。
毎月繰り返す、冒頭の投げやりなやりとり。
この投げやりな女医、自称霊能者でお祓いもできると言っていたので部屋の怪現象の霊視を頼んだが「この部屋には悪霊も何も居りはせん」で終わった。
2
夜9時から10時には就寝。
そして、深夜にベッドの足の方から音がして目が覚める。
『トントン、トントン』
と、壁を叩かれる音
この部屋は4階、ホテル西の角部屋。
音のする方向は壁と窓、壁の向こうは外。
地上数十メートル、北に向く部屋でベランダ的なものはない。
窓の向こうに広がる景色は真下に数メートルの歩道とガードレール、片側1車線イエローセンターラインの広くはない追越禁止道路、その向こうはブロック塀に金網フェンス、河川敷、そして幅10メートルを超える川。
前面きらびやかなホテルだが裏側は暗く地味な雰囲気しかない。
川向うに住宅街はあるが、目算100メートル以上離れていてそんな遠くからはとてもイタズラなどできない。
この部屋の上階は過去に幾人もの社員が首をくくった事故物件として閉ざされた部屋、人は住んでいない。
下階の1階から3階は駐車場になっていて通風口や小窓はあるがそれらこの部屋の下には位置しない。
この部屋の右隣りは倉庫で住人はいない。
ノック音は窓ガラスを叩く音ではなく壁を叩く音。
横になっている間はずっとその音がする、しかし身体を起こすと音は消える、音がしているときに首だけ起こしても音は消える、
完全に横になっているときにしかその音は聞こえない。
盗撮等の手段で誰かに見られておちょくられているのではないかと部屋中をカメラや盗聴器等の不審物を探したこともあったが何も出てこなかった。
この部屋に住み始めて3ヶ月程経った頃から起き始めた謎の現象。
疲れているせいだと思い医務室でカウンセリングを受け始め、安定剤や睡眠剤をもらうようになったのは1年ほど前から。
病名は適当に書いてもらい、会社に日勤限定の申請書を提出。
まだ入社間もない頃ではあったが昼の上客層を自分の客に掴めていたこともあり日勤限定の許可は簡単に通った。
病気申告で日勤固定してもらっているが本当の目的はその怪音の正体を視ること。
そんな日を繰り返してきた。ポルターガイストと同居する日常。
青葉 誠
趣味はギャンブル、
好きな音楽はジャズ、
好きな映画はアクションホラーコメディ、
好きな食べ物はキュウリ、他野菜果物
炭酸水を愛飲している。
得意なスポーツはないが強いて上げるならばスポチャン、
勉学における得意科目はなく技術家庭科以外すべてダメ、ついでに泳げない。
どうしようもなく時間にルーズ。
手先は器用で記憶力も人なみより良い、しかし泳げない。
3
200X年 8月31日
精神安定剤1錠、睡眠導入剤2錠、胃薬1錠、鎮痛剤1錠、気持ちの良い夢の世界へ。
夢を操れるのなら、とびきり美女とのハーレム生活を希望したい。
夢邪鬼さん、ソコんとこヨロシク。
ーおやすみ
深夜、いつものように鳴り出すノック音に目覚める、いつもと様子が違う。
『ドンドン!ドンドン!』
軽いノックではなく、衝撃があきらかに強い。
そして、
身体が動かない。
おそらく、一般的に言う金縛り状態。
上半身を起こそうにも起こせない、首も動かない、呼吸はできるが口は動かず声が出せない、瞼は動く、瞬きができて眼球も動く、だが身体は指先ひとつすら動かせない、
壁を叩く音の振動は体に伝わってくる。
過去のノック音でこんなことはなかった。
壁を外から叩いていた音は外壁を強く叩く音から床板をやさしく叩く音へと変わった、何かを探るような叩き方。
室内に侵入してきた。
『トントン、…トントン』
音が近づいてくる気がする。
少しずつ、少しずつ、
そしてベッドの、ベッドマットの足もとのあたりに何かが乗った。
布団のせいか音は消えたが何かが足もとにいる、
ベッドのサイズから自分の足まではまだ少し、数十センチある。
指先すら動かず声も出ない状態。
眼球を足の方へ向けるも何もいない。
が、怖い。
【来るな、消えろ、消えろ、消えろ】
心中でそう唱えることしかできない。
恐怖。
見えない何かは一瞬、足の裏に触れた。
【冷たい】
それまで眼球を下に向け正体を見ようとしていたが、咄嗟に瞼を閉じた。
瞼に力は入れられないが、ただ瞼を閉じた。
見ることも怖かった。
音の現象が起きてからの1年数ヶ月。
日勤固定にしてもらい『この超常現象の正体見てやろう』と意気込んでいたり、『美少女だったら幽霊でも何でもいいからはやく楽園へつれてってくれ』そう思っていた時期もあった。
これまでに音で目が覚めたら身体を起こし音が止んでも音がするのを待ってみたり、窓を開け外を確認してみたり、室内外にカメラを設置してみたこともあった。
結果は外のカメラには何も写らず、室内カメラには恥ずかしくなる程に寝相の悪い自分が写っていただけだった。
今、実際に得体の知れない何かが足裏に触れた瞬間からそんな考えは消え、恐怖だけが頭を支配。
足裏に何かが振れてから、数秒、数十秒、時間を数える余裕なんかない。
だが足裏に冷たい何かが触れた後、何もなくなった。
どのくらい時間が経ったかわからない、しかし何も起こらない。
おかげで、怖いが少しの余裕も出てきた。
ホラー映画が好きだ。
『きっと映画だとこの安心したタイミングで瞼を開いたら、眼前に顔面蒼白目元だけ真っ黒な生首とか子泣き爺とか長髪老婆とかが眼前にいるんだろう』なんて考える余裕ができた。
『瞼を開けて妖怪とか幽霊とか何かが見えるのなら、もし見えるのなら、美少女がいい…。ここに何かがいて、それが見えるの確定で男か女の選択なら、俺は女を選びたい。』
意を決し瞼を開いた
が、見えるのは天井、ホッとした…
瞬間に安心から突き落とされる恐怖再び。
足元から激しい振動が身体の両側面を登るように上がってきた。
天井しか見えない、声は出せない、指先ひとつ動かせない、今度は瞼も閉じられず眼球も動かせない。
音はしない、激しい振動が両耳まで辿り着き頭の中を揺さぶる。
まっすぐ見ていた天井の焦点すら合わなくなり、天井と自分の間の空間が大理石の柄みたく歪んでいく。
両耳から衝撃に襲われ続けて
おそらく、気絶した。
直前、頭の中に聞いたことのない言葉で声が響いた気がする。
『―――――――――』
4
暗闇の中、誰かの声か何か、様々なノイズで聞こえてくる。
それは頭の中に直接響く感じがする。
みみもとCDのようにささやかれてるものではない。
聞いたことのない言葉なのか、悲鳴なのか、機械音なのかまたは別の何かか。
やはりあの部屋の何かに呪い殺されてあの世へ向かっているのか。
だとしたらあの女医の霊視は大ハズレだ。
死後の世界は信じてなかった、だからもしこれがあの世行きの途中で現世に何か伝える手段があるのなら、あの世があることを誰かに伝えたいとか考えた。
が、特に何も思いつかなかったので
『オマエはインチキ霊能者だ』
と、あの女医に取り憑けたら囁き続けてやると決めた。
考える頭はある、金縛りにあっていた体のことを思い出した。
相変わらず体は動かないが動かそうとして力の入る感覚はある。
幽体的な状態でなく体がある。
頭を掻き混ぜられる感覚の前にできなくなったまばたきもできた。
そして今はしっかり目を開けている。
それでも暗く何も見えない。
電気も星の明かりものない闇、いつぞ体験した停電時の室内がこんな感じだった。
心音に気づく。
これはもしかして、まだ生きてる?
安堵、そしてため息。
「――…、どうなってんだ」
あ、喋れた。
指も動かせる、なにげなく首を右に傾げると視界に色を捉えた。
真っ暗闇の中で、光っているわけでもない『色』が奇妙に視える、少し離れた位置に青白い能面のような顔。
おそらく、また気絶した。
JCG 001 某と深夜の怪
ここまでお読みいただきありがとうございます。
長すぎず〜短すぎずな程度で連載作として続けていけたらと考えてるけど、書物って難しいですね〜。
誠ちゃん(22歳)の出来事にお目を通していただきありがとうございました。
前書きの流れとは全く違うはじまり。
自分で書きながらいったいどうなってんだ状態です、でも青葉くんは重要人物のはずです。
たぶん、きっと。
最初に出たんだから重要人物なはず。
謎が謎を呼び、謎は謎のまま特に意味もなく終わる。
そんなおそろしい事にならないよう努力します。
どうぞ、今後もよろしくお願いします。
10/27は特別な日です。