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中編

突っ込みたい感満載ですが、流してください(笑)

 


「……なんですって?」


 数年後には確実に自分にブーメランのごとく返って刺さるだろうその発言に、ニュータイプの背後でゆらりと立ち上がる人影。

 年増発言に反応したのは明らかであり、私が蒔いた地雷でもある。


「それは私達に喧嘩を売ってると思ってよろしいかしら」


 にっこりと、それはもうにっこりと微笑んだのは、御年4〇ウン歳にしていまだに受付嬢として青いお嬢様方をご指導されてる美魔女お姉さまである。ちなみに既婚者子持ち(その子供がもんのすごくかわいい。詐偽レベルで)だが、ナンパされる回数ぶっちぎりでトップでもある。素敵。


 お姉さまの後ろにはずらりと姉御な方々が並ぶ。既婚未婚さまざまだが、仕事が好きで優秀な人材でもある。腰掛けなお馬鹿(ビッチ)とは格が違うのだ。


「な、え? ちょっと、関係ないじゃない!」

「テンちゃんを年増呼ばわりされて黙ってられないわ。年増を舐めないでもらいたいわね」

「お姉さま、カッコいいー!」

「小娘がずいぶんとやらかしてるじゃないの」

「テンちゃん敵に回して無事にすむと思ってるあたりお(つむ)が軽すぎてふわふわ飛んでるわー」


 ちまみに上からニュータイプ、美魔女お姉さま、私、総務主任、秘書課チーフである。ニュータイプは営業事務らしいが、あちこちでやらかしてるらしく今回地雷を撒きつつ、社内女子ネットワークで情報を求めたら、いやぁ来るわ来るわ黒歴史的ネタてんこ盛り。


 海斗をタゲった理由もそれが原因で間違いないだろう。


「多分うわさ聞いて勝ったと思って突撃かましたんだろうけどさ。あれ、あなたを釣るためのエサだからね?」

「は?」


 やったことの責任も取らずにおいしいとこ取りだなんて誰が許すものか。逃がさないための包囲網としてお姉さま方にヘルプしたけど、ケリつけるのは私だ。そこは譲らない。譲るものか。だからこその海斗の出張期間中に短期決戦決め込んだんだし。


「つまり、あなたに勝ち目はないんだわ」

「……え、なに言って」

「あなた、妊娠三ヶ月だそうだね」

「っ!?」


 ギクリとするニュータイプ。ざわりとする周りの人々。


「なら、その妊娠させた男に結婚迫ればいいじゃない」


 とは、同僚の弁。まぁ確かに。


「言えない相手なんだよ」

「っ、なにを勝手なことを言ってるの! 私は海斗さんと結婚するのよ!! さっさと離婚しなさいよ年増!!」

「だから私はまだ20代だ。そして離婚はしない」

「バカじゃないの! 海斗さんは私を選んだのよ! あんたなんてお呼びじゃないわ!!」

「選んだのなら、一線を越えてるんじゃない? でもあの映像を見る限り海斗は無実だ。だから海斗をスケープゴートにしようとしたんだなと思ったわけなんだが、違う?」


 仕事での徹夜は慣れてたけど、さすがにプライベートでもやるとは思わなかったわ。海斗が盛ったとしても気絶寸前の寝落ちが常だし。睡眠より安眠プライスレス。


 海斗の自白をもとに監視カメラの映像を取り寄せ、ニュータイプの身元を洗ってくれた兄(探偵。警察出身コネ有)には、後で海斗がお礼をするとして。その情報からニュータイプのお相手に辿り着くのに一晩かかった。私の睡眠返せ。あと、黒いオーラ背負(しょ)ってふふふと嗤いながら出張の準備をしてた海斗がちょっと怖かった。


「海斗をターゲットにしなければバレなかったのに。素直に幼馴染を大事にしてたらこんなことにはならなかったのに。あなたは、自分で自分の未来を潰すんだよ」

「なにを、あんたが知るわけ……」

「そのお腹の子は、課長の子。不倫の証拠をその身に宿してる」

「!!!」


 ウソ、と誰かが呟いた。


「課長に迷惑をかけられない、課長を守りたい。なら一人で責任を取ればよかっただけだけど。課長はあなたとは遊びだったんだもんね? 本気だったあなたは捨てられて、幼馴染の優しさを受け入れられずに、高スペック男を子供の父親にしようとした。その相手が海斗」


 既婚者なんだけどね。さらに難易度高いんだけどね。なんで落とせるとか思ったのかね。謎だねー。



「さて、この落とし前、どうつけるつもり?」


 おすすめは公開処刑だがどうだろう。




 なぁーんてね!

 てか、すでにこの場が公開処刑の場なんだけどさ。

 周りはどこの課長!? とお相手探しを始めたようだ。私でも一晩かかってるからなぁ、すぐには気づけないだろね。


「てか、なんでその幼馴染みくんに頼らなかったの? 一番手っ取り早いだろうに」

「はっ、あんなの。欲しいならあげるわよ。若いのが好きなんて年増は最低ね」

「いや、だから私は海斗より下だし、私が年増ならあんたも予備軍だ」

「なんですって!?」


 ごちそうさま、と手を合わせた私はお茶を一口。んー、カイさんの淹れたほうじ茶が飲みたい。


「課長になんで言わなかったの?」

「だから!! なんの話よ!?」

「うん、これ以上騒ぎ立てると自分の立場が悪くなるよ? って話かな」

「……脅しのつもり?」

「単なる事実だね」


 そろそろ昼休みも終わるし、いい加減落ち着いて話がしたいかな。仕事忙しいから明日に持ち越したくはない。なんせ、今日で終わらなかったら海斗が来ちゃうからね!


 できれば個室をキープしてから関係者を集めたかったなぁと思うけど、ここで始めたのは向こうだしもう知らん。あとでどれだけ騒ぎになろうと知るものか。


「ユマ!!」


 ざわめく食堂に新たな役者が乱入した。ニュータイプの幼馴染みくんである。


「なんで来るのよ!?」

「いいから、黙ってろ。天川さん、神田さんと離婚して俺と結婚してください!!」


 ニュータイプもバカだけど、君は愚か者だな。幼馴染みくんよ。なぁーんか、ちょっと怒りが沸いてきたよ。


「だが断る」

「ユマに神田さん譲ってください。お願いします!」

「うん、よし。歯ぁ食いしばれ」

「は? なぁっ!?」


 思いっきり拳が唸りました。渾身の右ストレート。脇腹を締め抉るように撃つべし。奴は尻餅をついたが、痛いのは私の手である。ヤバい、海斗に怒られる。はっ、仕事が!


「あんたなにすんのよ!?」

「やかましいわこのおバカニュータイプが倫理も道徳観もどこに捨ててきたんだむしろ持ってたのかその手はザルか大事なもの全部落としてきてなにが楽しいんだああその頭自体がザルか納得」

「は、え?」

「お前ら、自分に落ちない相手はいないとか、痛いこと本気で思ってるクチか」


 怒るニュータイプに私が返したのは冷笑である。ちなみにノンブレスである。超本音である。


「海斗を譲れだと? お前ら海斗をなんだと思ってるんだ。オモチャか? 人形か? 年上の、しかも先輩を、お前らの都合でいいように使おうとか、何様なんだこのたわけが」

「な、そん」

「じゃぁわかってるんだな? 海斗の気持ちがどこにあるかとか、こんなやり方で自分の意思無視されてどう思うのかとか、本気で心配して後輩の相談に向かったのに一服盛られて裏切られたその心を、お前らはちゃんと理解してるんだな?」

「「…………」」


 ようやく黙ったか。ようやくわかったか。てか、今か。


「こんだけの騒ぎを起こして、まだ海斗を失望させるなら、もう好きにしたらいい。ただし」


 冷笑から笑みを消した。ブリザードは海斗の方が得意だができないわけじゃない。いつもは面倒なのと、そこまで怒る相手がいないだけだ。


「海斗は私ほど優しくはないぞ?」


 謝ってすむといいな?


 あくまで他人事の一言に、ふたりは真っ青を通り越して真っ白になった。


 

続きます。

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