夏のホラー体験 お化け屋敷
元彼の体験談です。お話風に書いてみました。
僕が、この遊園地で学生時代にアルバイトを
していたのは、もう十数年前に遡る。
年中、いろんなアトラクションがあり、
夏のプールはもちろんのこと、
遊具も豊富なこの遊園地はいつでも
人気が落ちない。それだけにこの遊園地の仕事は
大変だったが、やりがいのある仕事だった。
僕がやっていたのは、館内の案内や、
アトラクションの操作がメインだったが
閉園後には、アトラクションの中に、
落し物などがないか、の確認をして回る、というものだ。
夏の時期は特にお化け屋敷の人気が高く、
お客さんを怖がらせているのだから、
キャストとしても、中から聞こえる悲鳴に、
だいたいの目星をつけて、
次の客を案内する、という手順で行なっていた。
ところが、ある時期から、一ヶ所だけ、怖くはないが、
何故、あんなところにお人形が置いてあるのか?
という話が出るようになった。
お化け屋敷の特性上、ホンモノの人間が驚かせたり、
グロテスクな人形が出迎えてくれるのは当たり前の
ことなのだが、綺麗な西洋人形が、大きな部屋の中に
ポツンと人形のサイズに合った椅子に座っているだけ、
だという。
そんな部屋、あったかな?と、とりあえず入る前に、
その人形の特徴を伝え、出てきた時に、
「巡り会えましたか?」
と、尋ねてみることしてみた。
出てきたお客様からの意見の統計を取ると
その人形を見た人と、見ていない人間がいる、
ということがわかった。
人形を見た人に確認すると、そこにはドアがあり、
近づくと、自然に、ドアが開き、中が見えるのだという。
何があるのか、部屋を覗き込むと、人形には不釣り合いの
大きさのスペースの奥に、ポツン、とその少女の人形は
悲しそうな表情で座っている、というのだ。
その場所以外は真っ暗で人形にだけピンスポットが
当たっているので、誰しもがそれ以上の違和感を
感じていなかったのだ。
逆に見てない人の話を聞くと、そんな場所に、
ドアなんてなかった、という。
毎日、巡回している僕でさえ、その場所を見つけることは
出来ていない。もちろん、点検なのだから、
お化け屋敷の中の電気は煌々とついているし、
万が一、その場所が開かなくても、存在くらいは
確認出来てるはずなのに、何故、見つけられないのか?
僕にはさっぱりわからなかった。
試しに、一緒に仕事をしていた相棒も、僕も
数回、チャレンジしてみたが、その部屋はおろか
ドアさえ見つけることは出来なかった。
段々と、噂が噂を呼び、その部屋目当てのお客様が
増えたこと=来園者数を伸ばしたことは喜ばしいことだが、
僕には、やっぱり、腑に落ちないことがある。
毎日、どんなに点検しても、その部屋も、ドアすら
見つけられないのだ。
業を煮やし、園長に直接、お化け屋敷の設計図を見せて
くれるように頼んだが、さすがに、1度目は断られた。
それでも、入園者数を伸ばしてるのは確かだし、
変な噂も立ち始めた。
もちろん、見える人と、見れない人が出てくれば、
噂は都市伝説になる。そのうちに、見えた方が、
嘘つき扱いされるようになるのだ。
手の空いているキャストを営業時間内に入れたことも
あったが、そのキャストも少女の人形なんてなかった、
という。
園長自身にも入ってもらい、確認するも、
園長はそれを見てしまい、真っ青な顔をして、
唖然としながら出てきた時には、
どうしたのかを、聞いてしまったほどだった。
閉園後、お化け屋敷に関わる全員のキャストを呼び寄せ、
断固として拒否していた、設計図を見せてくれたのだ。
その場所には、ドアどころか、部屋すら存在してない、
家で言えば大黒柱のような、お化け屋敷を支える
大きな柱の壁であることが判明したのだ。
では、何故、一部のお客様には見えて、
見えないお客様が存在したのか?
それ今でもわからない。
一度、霊感のある彼女を内容も告げずに
その遊園地に誘い、お化け屋敷へ誘ったことがあった。
彼女は、断固として拒否をした。
理由を尋ねると、お化け屋敷は嫌いだから、という
単純な答えが返ってきたが、どんなに頼まれても、
ここのお化け屋敷には入りたくない、と言った。
彼女も、そこまでの霊感の持ち主ではなかったようだが、
何かを感じとることは出来ていたらしい。
後々、種明かしをすると、試されたことに
腹が立ったらしいが、それでも、そこには近付きたくない、
と一言呟いた。
そのお化け屋敷は、今でも変わらず
某遊園地に存在している。
後書き編集
どこ、とは営業妨害になるので言いませんが、
現在も経営している遊園地です。
今でもお人形が出るかどうかは、不明です。
私は近づきたくもないので、遠慮します。
私的には、絶対近づきません。お気づきの方もいらっしゃると
思いますが、最後の彼女は私自身です(笑)