Friends~ずっと、一緒だよ~
ドラマCD Friends
登場人物
・藤桐 クロエ トウドウ クロエ
…病気持ちの少女(享年十歳)。無理をしてしまう性格。
・相生 紫乃 アイオイ シノ
…友達思いの明るくて行動的な性格。
・朝霧 遥 アサギリ ハルカ
…包容力のある暖かい性格。リーダー的存在。
・落合 暁良 オチアイ アキラ
…大人っぽく普段は頼りになるがメンタルが弱い。美琴の双子の兄。
・落合 美琴 オチアイ ミコト
…兄とは対称的で子供っぽい性格。お姉さんな一面も。暁良の双子の妹。
・昶 出雲 ヒサシ イズモ
…大人しい性格だがとても恐がりで怯えがち。
・フィナ(猫)
…病院内で出会う黒猫。クロエの思念体。
・椎奈 薫子 シイナ カオルコ
…みんなに恩を感じている(享年十八歳)。とても優しい性格。
・少女1
…生きた魂を喰らう怨霊。
・少女2
…生きた魂を嫉む怨霊。
※この物語は、ドラマCDの台本用に製作したものです。ですので、少々読み辛い かと思います。そして長いです。それでも大丈夫だよ、という方は本編へどう ぞ!!!
十年前
紫乃 「十年前。当時、私たちが十歳だった頃」
SE:扉が開く音
紫乃 「クロエ! お見舞いに来たよ!」
クロエ「紫乃!」(満面の笑み)
遥 「昨日ぶり、クロエ」
美琴 「クロエちゃん! 今日はドーナツ持って来たの!」
出雲 「クロエちゃん、何の味が好き? たくさん買ってきたんだよ。抹茶とかイチゴとかプレーン。あとはー・・・・・・チョコとか?」
クロエ「みんな・・・今日もありがと。私はねー・・・・・・そうだなぁ。抹茶とかより、チョコがいいな!」
紫乃 「私はチョコ好きじゃないんだよね」
クロエ「え!? 知ってるけど! それ、チョコ好きな人の前であえて言う!?」
紫乃 「うん」
クロエ「えぇ!?」
暁良 「はぁ・・・。君たち全員、ちゃんとドア閉めたら? 全く」
SE:扉が閉まる音
暁良 「クロエ、体は大丈夫か?」
クロエ「うん! 今日は、注射を二回も打ったの。でも、頑張って 、どっちも泣くのを我慢したの! 偉いでしょ!」
暁良 「そうか、凄いじゃないか。がんばったな」
クロエ「すごく痛かったけどね・・・」
薫子 「ふふ。でも、クロエちゃん少し涙目になってたわよ?」
クロエ「わああぁ! 薫子お姉ちゃん! それは内緒だって言ったでしょ!」
紫乃 「かおるこ?」
クロエ「あ、えっとね。昨日の夜から同じ病室になった、薫子お姉ちゃん!」
薫子 「椎奈薫子っていうの。みんな、よろしくね」
紫乃 「あのね、紫乃ね! 相生紫乃って言うの!」
遥 「僕は朝霧遥です。僕たち幼稚園の時からずっと一緒なんです。ねぇ、暁良?」
暁良 「うん。あ、えと・・・・・・俺は落合・・・・・・」
美琴 「落合! (暁良の落合と同時に)私は落合美琴って言います! ピッチピチの
小学校三年生でーす! で、こっちは双子のお兄ちゃんの、」
暁良 「落合暁良と言います」(遮る)
美琴 「アキ兄はすんごく優しくてすっごくしっかり者なんだよ! テストで百点取ったときとか、先生に、クラスで百点は暁良一人だけだったぞ、って褒められて! 近所のお婆ちゃんが横断歩道で渡りきれなくて困ってた時も、助けてあげててね! しかもそのあと、お礼にもらった飴を私にくれたり、」
暁良 「(遮るように)う、うるさいな! それは今関係ないだろ!」(照れる)
薫子 「うふふ。見みんな仲がいいのね。美琴ちゃんの後ろにいる子は?」
出雲 「わ、私・・・・・・あの・・・」
美琴 「ほら、出雲ちゃん。私の後ろなんかに隠れてないで、さっさと出てきて。ほーら。怖くないよー怖くないよー?」
出雲 「・・・・・・。ひっ、ひさし・・・昶出雲って、言います・・・・・・」
薫子 「出雲ちゃん。かわいい名前」
出雲 「あ、ありがとう・・・・・・」(照れる)
薫子 「クロエちゃん、良いお友達がたくさんいるわね。羨ましいわ」
クロエ「うん! みんなとはね、これからもずっと・・・・・・ずっと、ずぅ――――っと! 一緒なんだよ!」
紫乃 「そう。クロエがあの時言った言葉は、当時の私たちの中では明確で、絶対な、事実で。必ず守るべきものだった」
紫乃 「薫子さんは私たちに実の姉のように接してくれた。とても優しくて、とても綺麗で、肺や気管支が弱いにも関わらず、たくさんのことを話してくれた彼女のことが私たちは、大好きだった」
紫乃 「でも、知り合って数ヶ月たった頃のことだった。薫子さんが病室から唐突に姿を消した。どこへ行ってしまったのか、詳しいことはよく知らないと、クロエは言い。クロエの両親にも病院が変わったのだと言われた。私たちは、その言葉を信じていた・・・・・・」
SE:砂嵐
紫乃 「そして、薫子お姉ちゃんがいないまま、次の夏が来た」(幼少)
SE :扉が開く音
紫乃 「クロエー! 今日も来たよ!」
クロエ「紫乃・・・・・・」
SE:扉が閉まる音
紫乃 「もう、外暑すぎるよ…。やっぱ病院の中って涼しくていいね! ずっとここにいたいよー・・・・・・」
クロエ「・・・・・・」(苛々)
紫乃 「? どうしたの?」
クロエ「いや・・・暑そうだな、と思って・・・・・・」
紫乃 「ほんっとう暑い!! お母さんに聞いたら、今日、四十度超えるかも、って言われたんだよ? 四十度・・・・・・きっと身体が溶けちゃうくらい熱いんだ・・・・・・怖っ!」
クロエ「・・・・・・それは、怖いね。まぁ、私はそんな心配ないけど・・・」
紫乃 「ん?」
クロエ「っ、あ、えと。なんでもない・・・」
クロエ「・・・・・・・・・なんでも、ないんだけど・・・・・・」
クロエ「・・・・・・ねぇ、紫乃。・・・・・・・・・あたしのこと、忘れないでね?」
紫乃 「どうしたの急に」
クロエ「・・・・・・・・・そうだね、急にごめん。本当に何でもないの・・・・・・気にしないで」
紫乃 「・・・・・・。私は忘れないよ?」
紫乃 「だって友達だもん! 忘れるわけないよ。・・・・・・たとえ、暁良や遥、美琴に出雲。お父さんやお母さんが忘れても、私は忘れないよ! 絶対、絶対だよ!」
クロエ「・・・・・・うん、そうだね・・・」
紫乃 「そうだ。クロエ」
クロエ「・・・・・・なぁに?」
紫乃 「クロエ、猫好きだよね?」
クロエ「好きだけど・・・・・・」
クロエ「それがどうしたの?」
紫乃 「むふふー!」
紫乃 「じゃーん!」
SE:鈴の音
クロエ「鈴? 猫の形・・・・・・可愛いなぁ・・・・・・!」
紫乃 「うん! この間おこづかい貯めて買ったんだ!」
紫乃 「と、いうわけで! この鈴をクロエにあげます!」
クロエ「え!? いいの?」
紫乃 「うん! そのために買ったから!」
クロエ「うわぁ! ありがとう、紫乃・・・・・・!」
クロエ「これ、お守りにするね!」
紫乃 「ぅえ!? お守り!? そ、そんな神社とかの奴じゃないよ? ただの雑貨屋さんで買った奴だよ?」
クロエ「でも私にとって、紫乃が買ってきてくれたってことが、大事なの。なによりのお守りになるの。・・・・・・大切にする」(しみじみと)
紫乃 「う、うん!」
SE:鈴の音
クロエ「・・・・・・・・・紫乃は優しいね・・・・・・」
紫乃 「?」
クロエ「・・・・・・最初のころより、みんなは来てくれなくなっちゃった・・・・・・。けど、紫乃は毎日来てくれるでしょ・・・?」
クロエ「やっぱ、病院に来るのって・・・・・・面倒くさいよね・・・・・・?」
紫乃 「そっ、そんなことないよ!」
紫乃 「暁良と遥は私と違って・・・夏休みの宿題やってるし! 美琴はプールの大会で、今凄く頑張ってるんだよ! 出雲も夏休みの工作で賞取ろうって頑張ってるし!」
紫乃 「面倒くさくなんてないよ! みんな忙しいだけなんだって!」
クロエ「忙しいだけいいじゃん・・・・・・」(小声)
紫乃 「え?」
クロエ「忙しいだけいいじゃん!!」
クロエ「あたしは・・・・・・っ! ここから出ることも出来ないんだよ? この病気だって・・・・・・治る治るって言われていても、どんなに頑張っても、全然っ! 全然治らないんだもん・・・・・・!」(泣きそうになりながら)
紫乃 「っ・・・・・・大丈夫だよ! もっと頑張ればきっと病気だって治るし、そしたら前みたいに・・・・・・一緒に遊べるよ!」
クロエ「遊べないよ・・・・・・」
紫乃 「そんなことないよ! 頑張れば、きっと・・・・・・」
クロエ「遊べない! できないよ!」
紫乃 「クロエ・・・・・・! そんなこと、」
クロエ「(遮る)頑張れ頑張れって・・・・・・!! ・・・っ、も・・・・・・! あたし、何年も頑張ってきたよ・・・? なのに、頑張ってもない紫乃に、頑張れなんて言われたくない! きっと、ってなに・・・? ・・・無理なものは無理なんだよ・・・っ、・・・・・・怖いんだ。いつ死んじゃうかも分からない怖さが・・・・・・体も丈夫で何でもできる紫乃なんかには、分かんない!!」
クロエ「だって、どうせ紫乃も、自分のことしか考えてない。ずっとここに居るしかないあたしの気持ちなんて・・・・・・わかんない! わかってたまるもんか! わかってるように言わないでよ馬鹿ぁっ!」(泣く)
紫乃 「そっ、そんなの・・・・・・私も、みんなも、ちゃんとクロエのこと考えてるよ! だから私毎日ここに来てるんだもん! ずっと、一緒にいるって言ったから・・・・・・!」
クロエ「・・・・・・考えてるからここに来てるって何・・・? 嘘ばっかり!! あたしのこと可哀想だって思ってるだけでしょ!? 知ってるよ、そういうの『あわれみ』っていうんだ! そんなの、そんなもの・・・・・・いらない!」
クロエ「紫乃なんて大嫌いっ!!」
紫乃 「・・・・・・・・・なんでわかってくれないの・・・っ? 私、そんな風に思ったことなんて、」
クロエ「嘘つき! 大人も紫乃も平気で嘘をつく・・・! 紫乃には別の友達がいるから、私なんかがいなくなっても、平気なんでしょ・・・?」
クロエ「・・・・・・・・・・・・やっぱり私、一人ぼっちだ・・・・・・!」
紫乃 「私はクロエの友達だよ! クロエは一人ぼっちなんかじゃ、」
クロエ「もういい! 出てって! 出てってよっ! ・・・・・・紫乃なんかいらない! 大嫌い! 消えちゃえぇえっ!」(泣きながら)
SE:なんか、物が投げられて落ちる音
SE:コップかなんかが割れる音。
紫乃 「っ・・・私だって・・・・・・私だって、そんなこと言うクロエなんか大嫌いだ! そんなクロエ、クロエじゃない! いらない!」
SE:扉が開く音
SE:扉が閉まる音
クロエ「・・・・・・・・・」
クロエ「・・・・・・ごめんね、紫乃」
クロエ「紫乃は・・・・・・紫乃のままでいてね・・・・・・?」
クロエ「ずっと・・・・・・・・・ずっと、だよ・・・・・・? ずっと、そのまま・・・・・・」
クロエ「(泣く)」
SE:砂嵐
紫乃 「翌日、クロエは発作を起こし、帰らぬ人となった」(幼少)
紫乃 「クロエとの喧嘩が、クロエと交わした最後の言葉となり、私の中に残ったのは、後悔だけだった」(幼少)
紫乃 「止まってしまったクロエの時間とは対照的に、私たちの時間は動いていく。そして、気づけば六年と言う歳月が流れていた」
紫乃 「クロエがいなくなってから、六回目の夏休み。私たちは・・・・・・」
SE:砂嵐
SE:着信音(紫乃の、はいまで)
紫乃 「んー・・・・・・ふぁ・・・・・・(あくび) もう誰だよ・・・・・・。安眠妨害、安眠妨害・・・・・・訴えますよーっと。ん・・・。はい、もしもし? 相生ですが・・・?」
遥 「もしもし、紫乃?」
紫乃 「んー・・・あ、遥くん? どうしたの? 紫乃ちゃん寝てたんだけど?」
遥 「ふざけてないで早く起きて。君ね、夏休みだからっていつまで寝てるの。
もうお昼になるよ?」
紫乃 「はーい、遥ママ・・・・・・紫乃、まだ眠いのー・・・・・・」
遥 「はいはい」(ばっさり)
遥 「それよりさ、なんでもいいから早く起きて着替えてよ。今紫乃の家の前なんだけど、すっごく暑い・・・」
紫乃 「んんん? なんで遥が家の前に居るのかな? ストーカー?」
遥 「違うよ。それがさ・・・・・・あっ、おばさん、こんにちは。・・・・・・・・・いえ、
今日は紫乃に用事があって」
遥 「あ、紫乃。おばさんが家の中に入れてくれるみたいだから、早く降りて
こいよ。じゃ」
紫乃 「(遮る)ちょ、ちょっと待って」
遥 「ん?」
紫乃 「早く早くって、何処に行く気でいるの? デート?」
遥 「君は時々本当に面倒だね。あ。で、本題だけど。さっき暁良から電話があって・・・」
SE:扉が開く音
紫乃 「美琴!」
美琴 「し、紫乃!?」
紫乃 「は、遥から・・・聞いたんだけど。大丈夫!? 救急車で、運ばれたって・・・!」(息切れ)
SE:扉を閉まる音
暁良 「騒がしいな。お前がドアを開けっ放しにしたせいで、声が外まで漏れてたぞ」
美琴 「アキ兄、出雲ちゃん、おかえりなさい。二人ともごめんね。ジュース買っ
てきてもらっちゃって」
暁良 「いや、これくらいなんともないが・・・紫乃、お前は一体一人で何をしている。
遥はどうした?」
紫乃 「え!? あっ・・・どうしよう。遥のこと、置いてきちゃった」
出雲 「紫乃ちゃん・・・置いてくるのはどうかと思うよ・・・?」
紫乃 「ううぅぅ・・・、ごめんなさい・・・・・・」
紫乃 「、・・・・・・美琴は、なんで救急車で運ばれたの?」
暁良 「遥から聞かなかったのか?」
紫乃 「この場所を聞いて、そのまま走りだしちゃったんだ・・・・・・」(苦笑)
暁良 「お前はもうちょっと人の話を聞こうな・・・?」
紫乃 「あはは・・・・・・すいません」
美琴 「うふふ。嬉しいものね。でも、大したことないわよ。ちょっとこの暑さで
くらっときちゃっただけだから」
紫乃 「それ大丈夫なの!?」
SE:バイブ音
暁良 「もうすぐ遥もくるぞ」
紫乃 「えっ、なんで分かったの?」
暁良 「今メールがきた」
SE:扉が開く音
遥 「ふわぁー・・・・・・、病院内は涼しくていいね」
SE:扉が閉まる音
紫乃 「遥! あぁああぁあ・・・・・・置いていっちゃってごめんね・・・・・・!」
遥 「大丈夫だよ。美琴の事が心配だったんでしょ? だから気にしなくてい
いよ。・・・・・・って、いうか。美琴が重症ならさすがの僕でも慌てるしね」
紫乃 「う。ごめん・・・・・・そうだよね・・・・・・」
遥 「まぁ、今に始まった事じゃないし、僕は気にしてないよ」
遥 「紫乃は、紫乃のままでいいんだから」
クロエ「紫乃は・・・・・・紫乃のままでいてね」
紫乃 「え・・・・・・?」
紫乃 「誰・・・・・・?」
遥 「紫乃?」
遥・クロエ「「紫乃」」
紫乃 「っ!?」
クロエ「紫乃」(複数回・紫乃の絶叫まで)
紫乃 「だ、誰!? 誰なの? 嫌・・・・・・・・・っ!」
紫乃 「やめてっ・・・・・・やめてよ! いやあっ!」
遥 「紫乃!?」
暁良 「っ、おい! どうしたんだ!」
出雲 「ちょ・・・・・・やだ・・・! 紫乃ちゃん落ち着いて!」
紫乃 「ひっ・・・・・・・・・! い、いやだ! 来ないで! 来ないでぇえっ!」
出雲 「もう・・・なんなの・・・・・・!」
美琴 「アキ兄! 誰か呼んできて!」
暁良 「わかった!」
紫乃 「やめて・・・クロエ・・・・・・」
遥 「え・・・・・・?」
紫乃 「い、いやああぁ―――――――――――――――あぁぁ・・・っ・・・・・・・・・はっ、あははははは―――――――――――っ!!」
遥 「し、の・・・・・・?」
紫乃・クロエ「ずっと、ずぅっと・・・・・・」
クロエ「一緒だよ」(微笑む)
クロエ「ふふふ・・・・・・ふ、あははっ! ははっ! あっはははははっ、ははははは!」
美琴 「どうしたのっ・・・・・・紫乃!」
遥 「違う・・・・・・」
遥 「紫乃じゃない・・・・・・!」
出雲 「何言ってんの・・・・・・? 遥くん・・・・・・」
遥 「いや、自分でもよくわからないけど! こいつは・・・紫乃じゃない・・・・・・!」
出雲 「遥くんまで・・・! どうしちゃったの!?」
クロエ「みんな、ずぅっと一緒って・・・・・・言ったよね? あははっ! はははは―――!」
SE:砂嵐
遥 「ん・・・ここは・・・? あれ・・・? さっきまで美琴の病室にいたはずなのに」
遥 「(そうだ・・・・・・あの後、あいつの笑い声で、頭が痛くなって、意識がとんで・・・・・・気がついたら、ここに・・・・・・)」
紫乃 「(やめて・・・・・・クロエ・・・・・・)」
遥 「あの時紫乃が言った、クロエって・・・・・・クロエ? なま、え?」
SE:頭痛
遥 「うっぐ・・・・・・!」
遥 「(また・・・・・・! 頭が・・・! 今度は、笑い声なんか、してないのに・・・!)」
暁良 「っ?」
暁良 「遥? その声、遥か?」
遥 「あき、ら?」
暁良 「おい、どうしたんだ! 大丈夫か?」
SE:頭痛がフェードアウト。
遥 「(・・・・・・? 痛みが、引いた?)」
遥 「・・・・・・・・・大丈夫。ちょっと、頭が痛かっただけ・・・。今はもう平気だ・・・。他のみんなは?」
暁良 「わからない・・・・・・」
暁良 「でもお前・・・・・・どうしてこんな所にいるんだ?」
遥 「暁良が病室を出た後、紫乃・・・・・・いや、あいつ。紫乃の中にいた誰かの笑い声で、頭痛がして・・・・・・そのまま意識が・・・・・・目が覚めたらここにいて」
暁良 「同じだ・・・・・・」
遥 「え?」
暁良 「俺も同じなんだよ・・・・・・」
暁良 「病室を飛び出した後、あたりに誰もいなくて・・・・・・人を呼びに受付まで行ったんだ。でもどこからか、笑い声が聞こえて、頭痛がして・・・・・・意識が無くなったんだ・・・・・・」
遥 「受付って事は、暁良は一階から来たのか」
暁良 「あぁ、ここは多分、二階だと思う。階段は一応、二階分上がった・・・・・・と、思うから。まぁ、ここが普通の場所なら、な・・・・・・」
暁良 「俺はここまで壁伝いに来たが・・・・・・暗くて歩くのもままならない。ここで誰か来るのを待つか?」
遥 「いや、進もう。行かなきゃ駄目だ」
暁良 「ああ」
遥 「とりあえず、美琴の病室へ行ってみよう」
暁良 「美琴・・・・・・あいつはまだ動ける体じゃないんだ。大丈夫、だよな・・・・・・?」
遥 「心配すんなよ。きっと病室にいる。やっぱ暁良はお兄ちゃんだな」
暁良 「ばっ、馬鹿か! 心配なんかじゃ・・・・・・でも、一応? あいつは? 家族、だし・・・」
遥 「はいはい。さっさと行こう、暁良」
遥 「(・・・・・・なんで僕は、こんなにも冷静なんだろう。軽口も、言える。正確な対処も、考えられる・・・・・・)」
少女2「とーりゃんせーとーりゃんせー」(本当小さい声で。次の台詞までフェードイン)
暁良 「・・・・・・なぁ、遥」(不安そうに)
遥 「(でも・・・・・・なんでこんなことに・・・? 紫乃の言ってた、クロエって・・・・・・)」
暁良 「おい。遥!」
遥 「な、何っ!?」
暁良 「何か聞こえないか?」
遥 「? ・・・・・・本当だ。でも、なんだこの音・・・・・・声?」
少女2「(フェードイン)とーりゃんせーとーりゃんせー」(だんだん大きく)
少女2「こーこはどーこの細道じゃー天神さーまの細道じゃ」(不気味に)
SE:物音
SE蛍光灯がついたり消えたり
少女1・少女2「(笑い声)」
少女2「あ、生きてる人間がいる」
遥・暁良「!?」
少女1「生きてる魂だ」
少女2「喰べちゃおうか?」
少女1「そうしちゃおうか!」
暁良 「っ!? なんだこいつら!?」
遥 「逃げないと・・・・・・!」
少女1「どうして逃げるの?」
遥 「っ! 来るな!」
少女1「・・・・・・来るな・・・・・・?(ぽかん) ・・・・・・ぷっ、来るなだって! あははははっ! お兄ちゃん、怯えている顔がとーっても! 美味しそうだね・・・・・・?」
遥 「うわっ、ぐ、ぐっ・・・・・・」(首を絞められる)
暁良 「遥!?」
遥 「息、が・・・・・・」
暁良 「はっ、遥を離せ!」
暁良 「!? なんで・・・・・・触れないんだ!?」
少女1「触れない? 触れるわけないよ」
少女1「だって私たちはもう・・・・・・」
少女1・2「シンデルンダカラ・・・ネ?」
少女1・2「きゃはははっ! はははっ! あっははああぁっ! ははははっ! はははは!」(狂ってください)
暁良 「くそ! やめろっ! もうやめてくれっ! 遥を離せえっ!」
遥 「・・・・・・あき、・・・・・・ら・・・・・・!」(苦しそうに)
遥 「に・・・・・・げ、・・・・・・」(苦しそうに)
暁良 「何言ってんだっ・・・・・・!」
遥 「早、く・・・・・・」
暁良 「馬鹿かっ! お前を置いて逃げられる訳ないだろ!」
少女2「逃ガサナイヨ? セッカクノ生キタ魂」
少女1「久シブリノゴ飯。味ワッテ食ベナキャ。逃ガスツモリナンテェ・・・・・・」
少女1・2「ナインダカラ!」
少女1・2「アッハハハハハッ! キャハハッ! ニガサナイ! ニガサナイヨ!」
暁良 「・・・・・・・・・くそ!」
暁良 「絶対、絶対に助けにくるからな!」
遥 「・・・・・・」(笑う)
暁良 「っ!」(走り出す)
暁良 「はぁはぁ、はぁっ!」
暁良 「くそ、くそ! くそ!」
暁良 「(どうして俺は・・・・・・こんなにも、無力なんだ・・・・・・!)」(悲しんでください)
遥 「(あいつだけでも・・・・・・)」
少女2「一人逃がしちゃったけど、まぁいいよね?」
少女1「こっちの方が美味しそうだしねっ。だから―――――――、お前は逃がさない」
遥 「ぐっうぅぅ・・・・・・」
少女1・2「いただきま?す」(ハート的な)
遥 「(ここで、終わり・・・・・・?)」
遥 「(・・・暁良、美琴、出雲、・・・紫乃・・・・・・)」
遥 「・・・・・・・・・クロエ・・・・・・」(ぼそっ、と。思わず、みたいな)
薫子 「消えて」
少女1「!?」
遥 「(この、声・・・・・・)」
少女2「なんでお前が・・・・・・ここにいるんだ!」
少女1「邪魔をするなぁああ―――――――!」
薫子 「(遮る)消えなさい」
少女1・2「いや・・・・・・いやだああぁ! いやああぁ―――――――――――――っ!」
遥 「ゲホッゴホッゴホッ・・・・・・」(むせる)
遥 「っ、ぁ・・・・・・ごほっ! ・・・・・・ん、はぁ・・・・・・」
遥 「・・・・・・?」
遥 「誰も、いない・・・・・・」
SE:砂嵐
遥 「(紫乃)」
紫乃 「はる・・・・・・か・・・・・・っ、遥!!」
紫乃 「っ!?」
紫乃 「(ここ・・・・・・何処・・・? 今、遥の声が聞こえたはずなのに・・・・・・)」
紫乃 「私・・・・・・何してたんだろう? 美琴の、お見舞い行ってから・・・・・・分かんない」
紫乃 「ここ、病院だよ、ね・・・・・・? 私、病院に、いたよね・・・・・・?」
紫乃 「でも、全然雰囲気が違う・・・・・・」
紫乃 「遥・・・暁良・・・美琴・・・出雲・・・・・・。どこ行っちゃったんだろ・・・・・・」
紫乃 「? ・・・・・・・・・あれ? ・・・・・・待って。ここには、もう一人いたはず・・・・・・。もう一人、会わないといけない子が・・・・・・」
クロエ(回想)「しーのっ!」(ノイズ入り)
紫乃 「どうして・・・・・・?」
紫乃 「どうして・・・・・・何も、思い出せないの・・・・・・っ」
SE:鈴の音
紫乃 「? 鈴の・・・・・・音・・・・・・」
フィナ「こっち」
紫乃 「え? 誰・・・・・・?」
紫乃 「(暗くてよく見えない・・・・・・)」
SE:鈴の音
紫乃 「また鈴の音・・・・・・」
紫乃 「右の方から、聞こえてくる・・・・・・こっちに来いってこと?」
紫乃 「・・・・・・。行って、みよう・・・・・・」
SE:鈴の音(数回)
紫乃 「(・・・・・・。結構歩いて来たけど・・・・・・ここ、なんか元いた病院と間取りが違う・・・)」
フィナ「ニャー」(リアルな猫っぽく)
紫乃 「きゃ!? な、なに!? ・・・・・・って、なんだ。猫か・・・・・・」
紫乃 「でも・・・・・・どうしてこんな所に・・・? ・・・・・・ね、君は一体何処からきたの?」
フィナ「ニャー」
SE:鈴の音
紫乃 「この音・・・・・・」
フィナ「やっとここまで来てくれたね」
紫乃 「!? だ、誰? 何処にいるの?」
フィナ「あなたの前にいるよ」
紫乃 「え・・・・・・? だって、私の前って、猫・・・・・・」
紫乃 「え、猫ってこと・・・? 嘘・・・いや、・・・・・・なんで、猫が話せるの・・・・・・?」
フィナ「あなたには猫に見えているのかもしれないけれど、あたしは猫じゃない」
紫乃 「え・・・・・・」
フィナ「あたしはフィナ。死んでしまった、ある一人の女の子の記憶と感情から作られた思念体」
フィナ「あたしの役目はあの子を止めること」
フィナ「あの子は怨霊へと姿を変えてしまった。でもあなたなら、あの子を止める事ができる」
紫乃 「私? 私なら止められる・・・・・・? どういうこと? あの子? あの子って・・・・・・誰の事なの?」
SE:頭痛
紫乃 「ぐうっ・・・・・・!」
フィナ「・・・それを教えるのはあたしの役目じゃない。一人で無理に思い出そうとすると、頭が痛くなるだけ・・・・・・」
フィナ「だからそれは、彼女の役目」
紫乃 「彼女・・・・・・?」
フィナ「あなたもよく知っている人。・・・・・・薫子」
薫子 「紫乃ちゃん・・・」
紫乃 「・・・・・・? あなた、は?」
薫子 「ふふ・・・・・・。忘れちゃったのかしら?」
薫子 「私はちゃんと覚えてるわよ。相生紫乃ちゃん。初めて会った時は、まだ、小学校三年生だったかしら」
紫乃 「っ、この声・・・・・・。薫子・・・・・・お姉ちゃん・・・・・・?」
薫子 「思い出したかしら?」
紫乃 「うわぁ・・・! お久しぶりです!」
紫乃 「薫子お姉ちゃん、あのとき急にいなくなっちゃうんですもん。すっごく心配したんですから! でも・・・・・・どうしてこんな所に?」
薫子 「紫乃ちゃん・・・・・・。私の手に、触ってみて?」
紫乃 「え・・・・・・えぇと。・・・・・・っ・・・・・・あれ? なんで・・・・・・」
紫乃 「触れない・・・・・・?」
薫子 「(苦笑)」
薫子 「私、もう死んじゃっているの」
紫乃 「ぅ、嘘! だって、足あるし! 何より・・・・・・ちゃんと見えてるじゃないですか!」
紫乃 「うっ」(触ろうとする)
紫乃 「っ」(すり抜ける)
紫乃 「どうして・・・・・・」
紫乃 「どうしてすり抜けちゃうんですか・・・・・・? これじゃあまるで・・・本当に・・・・・・」
紫乃 「・・・・・・っ、やだ・・・・・・!」(泣く)
薫子 「・・・・・・私ね。あなたたちと出会う前に、もう余命を宣告されていたの」
紫乃 「え・・・・・・」
薫子 「・・・・・・きっと明日にでも死んじゃうんだ。もう生きられないんだっ、って思ってた・・・・・・。でもね? 簡単に余命を告げられても、実感がわかなくて、じゃあもうどうでもいいや、って思っちゃうの。・・・思っちゃったの。だから、あの子に出会うまで、私はとっても空っぽだった。でも、あの子が同じ病室になってから、私の世界は・・・・・・満たされた」
薫子 「私より幼いのに、病気を克服しようと頑張っていて。幼いながらに死を理解していたはずなのに、不安がるそぶりも見せず・・・・・・卑屈になっていた私に話しかけてくれた。それに、あの子がいたから、私は紫乃ちゃん・・・・・・いえ、あなたたちに会うことができた。決して長くも幸福とも思えなかった人生で、初めて幸せだと思えたの」
薫子 「あなたたちは、残り少なかった私の人生を、ほんの少しでも、かけがえのないものにしてくれた」
薫子 「だから私は・・・あなたたち六人がお互い憎み合う事になるなんて、嫌」
薫子 「私と同じ、?しあわせ?を知ってもらいたいの」
紫乃 「六、人・・・・・・? 何言ってるんですか? 私たちはずっと、五人・・・・・・」
薫子 「紫乃ちゃん。遥くん。出雲ちゃん。それに暁良くんに美琴ちゃんの、五人よね」
薫子 「でもね、あと一人」
薫子 「あと一人、大事な人がいるわ」
紫乃 「大事な、ひと・・・・・・?」
薫子 「そう。私をみんなに出会わせてくれた・・・・・・」
薫子 「クロエちゃん」
紫乃 「うっくぅ・・・・・・」
SE:頭痛
紫乃 「あ・・・・・・く、ぅ・・・・・・」
クロエダイジェスト「紫乃」
紫乃 「・・・・・・クロエ・・・・・・? ・・・・・・っ、クロエ・・・!」
紫乃 「え・・・でも、どうして・・・・・・どうして私たちは、クロエの事を、忘れて・・・・・・私、あんなっ・・・・・・あんな酷いことをしちゃったのに・・・・・・っ!」
薫子 「・・・・・・大人たちのせいよ」
紫乃 「・・・どういう、事ですか・・・・・・?」
薫子 「・・・・・・。耐えきれなかったのよ。紫乃ちゃんたちは覚えてないかもしれないけれど、クロエちゃんというかけがえのない存在の死を知った、まだ幼かったあなたたちの心では、到底・・・・・・」
紫乃 「受け入れることは出来なかった・・・・・・?」
薫子 「・・・ええ、だから大人たちはそれを忘れさせようと必死になったの」
紫乃 「でも、忘れさせるなんて・・・・・・」
紫乃 「っ・・・・・・、・・・・・・そんなのおかしいよ!! クロエは・・・・・・私達の友達なのに!」
薫子 「あなた達を守るためにしたことでも?」
紫乃 「っ! ・・・・・・っ、・・・・・・・・・・・・!」(言い返せません)
フィナ「薫子」
薫子 「なに? フィナ」
フィナ「もうすぐ・・・・・・時間だよ」
薫子 「そう・・・・・・」
紫乃 「・・・・・・時間?」
薫子 「死んでしまった魂を具現化させる時間は、限られているの」
紫乃 「ぇ・・・・・・き、消えちゃうって、こと・・・・・・?」
薫子 「そういう事になるわね。あぁ・・・・・・・・・意外と速いわ」(苦笑)
紫乃 「っ・・・・・・! 薫子お姉ちゃん、体・・・・・・透けて・・・・・・!」
薫子 「・・・・・・。ねぇ、紫乃ちゃん」
薫子 「今のあなた達は、クロエちゃんの悲しみや後悔、憎しみ・・・・・・たくさんの負の感情から生み出された世界・・・・・・あの世とこの世の境にいるの」
紫乃 「・・・え・・・・・・?」
薫子 「生きている人間がこの世界に居続けると、そのうちこの、クロエちゃんが生み出した世界に飲まれてしまう」
薫子 「この世界には、紫乃ちゃん以外の四人もいるの。みんながこの世界に飲まれえてしまう前に、クロエちゃんを止めて」
紫乃 「でもそんなこと・・・・・・どうやって!」
薫子 「それはクロエちゃんの親友の、あなたにしかできないことよ」
薫子 「それじゃあ・・・・・・、さようなら」
紫乃 「やだ・・・・・・っ、嫌! さよならなんて言わないで・・・・・・!」
紫乃 「きっと・・・・・・きっと、また会えるよね?」
薫子 「ぁ・・・・・・っ」
薫子 「・・・・・・うん、きっと。またいつか」(泣くような笑うような声で)
紫乃 「・・・・・・・・・うん・・・!」(嬉しいけど悲しい)
SE:消える音
紫乃 「(泣くアドリブを少々)」
フィナ「彼女は役目を終えたんだ。そんなに泣くことじゃない」
紫乃 「でも・・・・・・折角会えたのに・・・・・・っ!」
フィナ「クロエを止められるのは、あなただけと薫子も言っていたでしょう? 泣いていても何も解決しない」
紫乃 「っ・・・・・・」
フィナ「どうする?」
紫乃 「・・・・・・取り敢えず、美琴の病室があった場所に行ってみる。みんなもそこに集まると思うから・・・・・・」
フィナ「分かった」
SE:砂嵐
出雲 「美琴ちゃん・・・・・・」(小さい)
出雲 「美琴ちゃん」
美琴 「・・・・・・? 出雲ちゃん・・・・・・?」
出雲 「よかった、やっと目を覚ましてくれた・・・・・・」
美琴 「・・・・・・っ! みんなは?」
出雲 「わかんない。私が起きた時にはもう誰もいなくて・・・・・・」
美琴 「ここは私の、病室・・・・・?」
出雲 「多分・・・・・・。でも、外もここも暗くて・・・・・・私、怖くて、外にでられなくて・・・」(泣く)
美琴 「あー・・・ほらほら。泣かないの、出雲ちゃん。停電にでもなっただけよ、きっと」
出雲 「・・・・・・誰の声も聞こえないし・・・・・・足音もしないんだもん・・・・・・」
美琴 「大丈夫。ここは病院なんだから、人がいないなんてありえないわ」
出雲 「・・・・・・うん・・・・・・」
美琴 「なんだったら、一緒に外に出て人を探してみましょう?」
出雲 「えっ・・・・・・でも、美琴ちゃん・・・・・・そんな体だし、危ないよ・・・・・・?」
美琴 「ここにいたって仕様がないし、アキ兄たちも・・・・・・」
SE:扉が開く(ガラガラ)
美琴「!?」出雲「ひぃっ」
美琴 「誰!?」(キツめに)
暁良 「ぅ・・・・・・っ、ん・・・・・・は、はぁっ・・・」
美琴 「っ、アキ兄!!」
出雲 「ぇ・・・暁良くん・・・・・・?」
暁良 「み、こと・・・・・・」(走ってきた)
美琴 「もう! いきなり現われて・・・・・・何処に行ってたの? 心配したのよ!」
暁良 「それは、いいっ・・・・・・! 早くっ・・・・・・ここから・・・・・・」
美琴 「・・・・・・っ、ちょっと。どうしたの? いいって、なにが?」
暁良 「ここから・・・・・・早く逃げないとっ」
出雲 「逃げる・・・・・・?」
暁良 「でも、駄目だ・・・・・・紫乃は見つからない・・・・・・、美琴も体調が・・・・・・!」
美琴 「ねぇ、アキ兄ってば!」
暁良 「っ、なんだよ!」
美琴 「どうしちゃったのよ。紫乃と遥は? どうしたの?」
暁良 「紫乃は・・・・・・分からない。遥は、・・・・・・・・・遥は・・・・・・!」
出雲 「遥くん? ・・・・・・遥くんがどうかしたの?」
SE:何かが現れる音
クロエ「見捨てたんだよねぇ」
暁良・美琴・出雲「っ!?」
クロエ「ふふっ」
出雲 「ひ、人の声・・・・・・? 良かった。誰かいたみたい・・・・・・」
美琴 「待って出雲ちゃん!」
出雲 「え・・・っ?」
美琴 「今・・・・・・見捨てた、って・・・・・・・・・」
クロエ「・・・・・・っ、ふふふっ」
クロエ「美琴ちゃん」
美琴 「えっ・・・・・・?」
クロエ「暁良くん」
暁良 「・・・・・・!」
クロエ「出雲ちゃん」
出雲 「ひぃっ・・・・・・!」
暁良 「・・・もう、やめてくれ・・・・・・!」
クロエ「久しぶりだねぇ、みんな?」(微笑む)
SE:頭痛
美琴 「ゃ、なにっ、これ・・・・・・!」
暁良 「また、頭痛が・・・・・・っ!」
クロエ「(これからもずっと・・・・・・ずっと、ずぅ――――っと! 一緒だよ!)」
美琴 「・・・・・・クロエ・・・・・・ちゃん・・・・・・?」
出雲 「え・・・・・・?」
美琴 「クロエ、ちゃん・・・・・・だ・・・」
暁良 「・・・クロ、エって・・・・・・いやでも、あいつは、あの夏・・・・・・!」
出雲 「クロエ・・・・・・?」
暁良 「でも! どうしてお前がここにいるんだ・・・・・・!」
クロエ「だって! 私はずっとず―――っと、一緒だって言ったよ?」
クロエ「約束なのに・・・・・・忘れちゃったの? 酷いなぁ」
出雲 「こ、この子、誰・・・・・・? 忘れるって、何を・・・? やだ、気持ち、悪い・・・・・・!知らない、私は・・・・・・、何も・・・・・・!」
暁良 「違う・・・・・・! クロエじゃない! だってあいつはあの夏、病気で死んだはずだ! 生きてるはずない・・・・・・!」
SE:クロエダイジェスト「みんな、大好き」(ノイズ入り)
出雲 「っ、も・・・・・・なんなの、これぇっ! やだ、やだやだやだ! 知らないっ、クロエなんて子、私は知らない! いやぁあぁぁっ!」
美琴 「出雲ちゃん!」
SE:ドアを勢いよく開ける音。走りだす音。
美琴 「待って! 出雲ちゃ・・・・・・!」
SE:転ぶ
美琴 「あうっ・・・・・・!」
暁良 「み、美琴・・・・・・!」
クロエ「あれぇ? 暁良くん、逃げないの? あのときみたいに。遥くんを見捨てたみたいにさぁ・・・・・・!」
美琴 「はる、か、くん・・・・・・?」
暁良 「っ・・・・・・! 違う!」
クロエ(右)「遥くんが逃げろ、って言ったからって・・・・・・友達を見捨てるなんてねぇ」
美琴(左) 「アキ兄、今、遥、って・・・・・・」
クロエ(右)「逃げたんだよね。自分が大事で」
美琴(左) 「どういう、こと・・・・・・? ねぇ、アキ兄・・・!」
クロエ(右)「ほっとしたでしょ? 逃げろって言われて」
美琴(左) 「遥と、なにがあったの? ねぇってば・・・・・・っ!」
クロエ・美琴「なんとか言ったら?」「なんとか言ってよ・・・・・・!」
クロエ(右)「暁良くん?」
美琴(左)「アキ兄・・・!」
暁良 「・・・・・・っ、違う、違う違う違う! 違うんだぁっ! うわぁぁああぁっ!」
美琴 「アキ兄!? ま、待って! 置いていかないでっ・・・・・・!」
SE:気にせず部屋から出ていく音。
美琴 「嘘・・・・・・なんで・・・?」
美琴 「・・・・・・っ、アキ兄、出雲ちゃん・・・・・・!」
SE:拙くも立って足を引きずりながら出ていく音。
クロエ「・・・・・・なんで?」
クロエ「なんで? なんで皆逃げるの? 置いて行っちゃうの? あたしたち・・・・・・友達なのに・・・・・・」
クロエ「やっぱり、私は・・・・・・・・・」
クロエ「・・・・・・ふふっ、ふふふふふっ・・・・・・!」
クロエ「あはっはははっははははあぁあああぁ―――――――――っ!」
SE:物音
SE:砂嵐
紫乃 「フィナ、ここは何階? みんなが何処にいるか、分かる・・・?」
フィナ「・・・・・・ここは二階。みんながいるのは三階だよ」
紫乃 「そっか・・・・・・やっぱり、元いた病院とは違うんだ・・・」
フィナ「・・・・・・あのさ」
紫乃 「ん?」
フィナ「あなた、あたしの言うこと、随分と信用しているようだけど・・・・・・いいの?」
紫乃 「なにが?」
フィナ「だって、喋る猫なんて・・・・・・怖くないの?」
紫乃 「怖くないよ。だって、あなたといると、とても・・・・・・安心するんだ」
紫乃 「なんでかなぁ。分かる? フィナ」
フィナ「・・・・・・さぁ、なんでだろうね」
紫乃 「え!? 聞き返さないでよ!」
フィナ「ぷっ」
紫乃 「あぁっ! フィナ、今笑った! なんでよ!」
フィナ「笑ってない。紫乃の勘違いだよ」
紫乃 「むぅ、勘違いじゃないよ! だってクロエ、絶対今笑ったもん!」
紫乃 「ぅ、あれ・・・・・・? なんで今、私、クロエって言ったんだろう・・・・・・」
フィナ「・・・・・・っ、・・・・・・あのね、紫乃。あたしは・・・・・・」
暁良 「うわぁぁっああぁあぁ!!」
紫乃・フィナ「!?」
SE:物音
紫乃 「暁良!?」
SE:物音
美琴 「っ」(病室から出てくる)
美琴 「出雲ちゃん・・・・・・!」
紫乃 「今、病室から出てきたのって・・・・・・っ、美琴?」
紫乃 「っ、待って暁良! どうしたの?」
SE:手を掴む音。(ぱしっ)
暁良 「し・・・紫乃・・・・・・? クロエが・・・・・・! クロエが、今ここにいて・・・・・・」
暁良 「約束なんて知らない・・・・・・! あいつは死んだ! 死んだんだ・・・!」
暁良 「なのに・・・・・・いったいなんなんだよ!!」
紫乃 「っ・・・・・・」
SE:叩く(ビンタ)
暁良 「っ」
紫乃 「しっかりしてよ! どうしちゃったの? 暁良らしくない! 」
暁良 「・・・・・・」
暁良 「・・・・・・っ、そうだな・・・・・・。すまない」
紫乃 「さっき・・・・・・美琴が病室から出てくのを見たの。多分、出雲のことを追いかけて行ったんだと思う。行こう?」
暁良 「・・・・・・あぁ」
美琴・出雲「きゃぁぁああぁ――――――――――――――――ぁっ!!」(少し遠く)
紫乃 「!?」暁良「美琴!」
SE:走る音。
紫乃 「出雲!? 美琴! 何処ーっ!」
暁良 「美琴! おい! 何処にいるんだ! 美琴!」
暁良 「返事をして・・・・・・く、れ・・・・・・っ」
目の前に血だまり。(SE:血の音。ぱしゃんっ、とか?)
暁良 「ぐっ・・・・・・うっ!」(吐きそう)
紫乃 「暁良! どうしたの? なに、が・・・・・・」
紫乃 「ひぃっ・・・・・・! 何これっ・・・・・・血・・・・・・? っ、ぐ! うあ、ぁっ・・・・・・っ!」
クロエ「私から逃げた罰だよ?」
暁良 「っ・・・・・・クロ、エ・・・・・・!」
紫乃 「どうして・・・・・・! こんな、こと・・・・・・!」
クロエ「ふふふ・・・・・・今度は。今度はあなた達の番だよ・・・・・・」
SE:物音
SE:笑い声
紫乃 「クロエ! やめて!」
暁良 「・・・・・・っ」
暁良 「(また俺は・・・・・・何もできないまま・・・・・・?)」
美琴 「アキ・・・・・・兄・・・・・・・・・にげ、て・・・・・・紫乃、だけ、でも・・・・・・」
暁良 「美琴・・・・・・!?」
美琴 「おね・・・・・・がい、だよ・・・・・・おに、いちゃ・・・・・・」
暁良 「っ・・・・・・くそ・・・・・・」
暁良 「紫乃!」(手をつかむ)
紫乃 「えっ・・・・・・やだやだっ! フィナッ! なんとかならないの!?」
フィナ「・・・・・・あれだけのことになれば、あの二人の魂は、クロエのもの。もう戻らない・・・」
紫乃 「そんなっ・・・・・・!」
暁良 「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・っ」
紫乃 「なんで・・・・・・どうして・・・・・・どうして見捨てるようなことを・・・・・・!」
暁良 「(遮る)俺は!」
暁良 「俺はさっき、遥を見捨てたんだ・・・・・・」
紫乃 「え・・・・・・」
暁良 「だからもう、誰も見捨てたくない・・・・・・!」
SE:扉を開ける(ガラガラ)
SE:押す
紫乃 「きゃあっ!」
SE:扉を閉める
SE:鍵をかける
紫乃 「暁良!」
SE:扉を叩く(開けてよまで)
紫乃 「開けて! 暁良! 開けてよ! なんで・・・・・・っ!」
暁良 「紫乃。きっと・・・・・・遥が助けに来てくれる。だから、安心してそこにいろ」
暁良 「俺は。今度こそ、見捨てないって、決めたんだ」
暁良 「じゃあな、紫乃」(呟く感じで)
紫乃 「暁良! 暁良! いやぁぁあぁっ!」
クロエ「あとは遥と紫乃だけど。何処に隠れてるのかなぁ?」
クロエ「どうせみんな、いなくなっちゃうんだからさぁ! 出ておいでよ、ねぇ!」
クロエ「ねぇ! ねぇってばぁ!」
クロエ「ねぇええぇえ―――――――っ!? きゃはははは――――――――――ぁっ!」(本日最高の狂気)
SE:扉を叩く(紫乃の叫びと一緒)
紫乃 「みん、なあぁ・・・・・・ああぁぁあぁぁっ・・・・・・遥ああぁ・・・・・・! 遥ぁああっ!」
紫乃 「いやぁああぁぁ・・・・・・っ! やだぁぁっ・・・・・・! やだよぉっ・・・・・・!ぁぁああぁぁ・・・・・・っ」(気絶)
フィナ「紫乃」
フィナ「起きて! 紫乃」
紫乃 「ん・・・・・・フィ・・・・・・ナ・・・・・・?」
フィナ「紫乃・・・・・・」
紫乃 「心配してくれたの・・・・・・?」
フィナ「・・・・・・」
紫乃 「あのね、私ね・・・・・・」
紫乃 「みんなの事が、大好きなんだ・・・・・・」
紫乃 「大好き、だった・・・・・・っ!」
紫乃 「もう、私は・・・・・・っ」(泣く)
フィナ「・・・・・・」
フィナ「紫乃」
フィナ「あたしのような思念体は、魂を具現化させるために、元となる物が必要なの」
紫乃 「え・・・・・・?」
フィナ「あたしは、あなたがくれた物を元に生きている」
SE:鈴の音
フィナ「この鈴を、覚えている?」
紫乃 「私が・・・・・・昔、クロエにあげた・・・・・・」
フィナ「猫の形の鈴。これを触ると、とても温かいの」
紫乃 「じゃあ・・・・・・あなたの元の魂って・・・・・・」
フィナ「私とあの子はもう別の物。けれど、あの子を止めて」
フィナ「だからこの鈴を、受け取ってほしい」
紫乃 「その鈴を、フィナから取ったら・・・・・・フィナはどうなっちゃうの?」
フィナ「消える」
紫乃 「え・・・・・・」
フィナ「あたしはクロエの片割れだから、あの子に戻らないと」
紫乃 「そんなのっ・・・・・・ダメだよ! ・・・・・・っ!?」
SE:鈴の音
紫乃 「どうして、自分から鈴をっ・・・・・・!?」
紫乃 「・・・・・・や、やだ! 消えちゃ嫌だ!! 私一人じゃ、なにもできないっ!」
フィナ「紫乃は一人じゃない。大丈夫だよ。・・・・・・また会おうね。紫乃」
紫乃 「フィナ!!」
SE:消える音
紫乃 「止めるって・・・・・・どうすればいいの・・・・・・」
紫乃 「このドアは内側からじゃ開かない・・・・・・・・・! 私は、一人・・・・・・」
紫乃 「・・・・・・ううん」
紫乃 「(そうだ。まだ・・・・・・まだ一人いる)」
遥 「紫乃」
紫乃 「遥」
紫乃 「私は・・・・・・ここだよ」(鈴を握り締める)
SE:鈴の音(数回)
遥 「誰かいるか!?」
SE:鍵を開ける音
SE:扉が開く音
紫乃 「あっ」
遥 「、紫乃?」
紫乃 「本当にっ・・・・・・本当に、遥だよね・・・・・・?」
遥 「紫乃も・・・・・・紫乃、だよね・・・・・・?」
紫乃 「会いたかったよ・・・・・・」(泣く)
遥 「・・・・・・うん。僕も会いたかった」
紫乃 「でも、どうしてここに?」
遥 「鈴の鳴る音が聴こえたんだ」
紫乃 「鈴・・・・・・」
クロエ「(これ、お守りにするね!)」
紫乃 「(お守り・・・・・・。そうだ。この鈴は、お守りだったんだ・・・・・・っ、クロエ・・・)」
SE:笑い声
遥・紫乃「!?」
クロエ「あぁー・・・・・・遥だぁ。紫乃と一緒にいたんだ。昔から仲いいものね、二人は」
紫乃 「クロエ・・・・・・っ」
遥 「クロ、エ・・・・・・?」
クロエ「遥も、あたしこと、忘れちゃったんだ・・・・・・?」
遥 「うっ・・・・・・」
SE:頭痛
遥 「クロエ・・・・・・? でもなんでっ。だって・・・・・・クロエは・・・・・・っ」
クロエ「思い出してくれた? ならやっと、みんなで一緒に遊べるね」
紫乃 「・・・・・・っ、遊べるね、じゃない! 三人を返してクロエ!!」
遥 「三人を返して、って・・・・・・紫乃? いったい、何が起きてるの?」
クロエ「遥もこっちにおいで? そんなところにいないでさ」
紫乃 「遥!!」
遥 「なんだこれっ、体が・・・・・・っ!」
紫乃 「や、やだ、透けて・・・・・・!?」
紫乃 「嫌だ! 遥!!」
遥 「紫乃・・・・・・!!」
SE:何かが消える音
紫乃 「は・・・・・・る、か・・・・・・っ・・・・・・、っぁ・・・・・・うぅうっ・・・・・・」(泣く)
紫乃 「遥ああああぁ―――――――――――――――――――っ!!」
クロエ「あっははは! やーっと! みんなと一緒になれた!」
紫乃 「クロエを止めないと・・・・・・っ!」
紫乃 「、・・・・・・違う、止めるんじゃない・・・・・・」(小声)
紫乃 「私が・・・・・・クロエを、助けるんだ・・・・・・!!」
クロエ「しーのー?」
クロエ「可哀そうな紫乃。何をぶつぶつ言ってるのかなぁ?」
クロエ「独りぼっち。誰もいない! 孤独な紫乃!!」
クロエ「あたしにはみんながいるけど紫乃の周りには誰もいない・・・・・・みんな紫乃のことが嫌いだから!! 大っ嫌いだから!!」
クロエ「顔も見たくないんだってええ――――――っ!!」(狂気と嘲笑)
紫乃 「・・・・・・クロエっ・・・・・・・・・ごめん、ごめん!」
クロエ「・・・・・・なに、言って・・・・・・」
紫乃 「大嫌いなんて嘘だ・・・・・・!」
紫乃 「本当は・・・・・・、違うの! たくさん傷つけたけど、ずっと後悔していた! 忘れちゃったけど、謝りたかった!」
クロエ「やめ、て・・・・・・やめろ・・・・・・あたしの中に・・・・・・入って、こないで・・・・・・」
紫乃 「傷つけてごめん、分かった振りしてごめん、本当は、大好き、って!!」
紫乃 「可哀想だから毎日会いに行ってたんじゃない! クロエと一緒にいるのが楽しくてっ・・・・・・クロエに会いたくて、話したくて・・・・・・私は! 毎日クロエの所に行っていたんだ! クロエが私を嫌いでも、私はクロエを大好きだから!」
クロエ「っ・・・・・・やめろ! 入ってくるな!!」
クロエ「あたしの中に、入ってくるなぁぁあぁ!! お前なんか友達じゃない! 嫌いだ!大嫌いだ!! ?しあわせ?なお前なんて、独りじゃないお前なんて! ずっと独りでこの世界に閉じ込められちゃえばいいんだあああぁあ――――――っ!!」(狂ってください)
紫乃 「クロエ・・・・・・!」
SE:鈴の音
紫乃 「(私が・・・・・・私がやらなくちゃいけないんだ・・・・・・!)」
クロエ「あっはははぁっははははっ! そうだよ!! この世界に独り寂しく閉じ込められちゃえばいいんだ!! 私みたいにさぁあぁ―――――っ!」
紫乃 「クロエ!! 私の話を聞いて!」
クロエ(右)「黙れぇええぇ―――――――――――――っ!!」
クロエ(左)「見ないでっ・・・・・・! あっちへ行って・・・・・・・・・!」
紫乃 「・・・・・・クロエ・・・・・・ごめんね、今行くよ」
紫乃 「フィナ。お守り、ありがとう・・・・・・!」
SE:鈴の音
クロエ「っ・・・・・・、鈴・・・・・・っ」
紫乃 「クロエ」
クロエ「ぁ・・・・・・ああぁ・・・・・・」
紫乃 「クロエ、今も昔も、私はあなたが大好きだ」(泣き笑い)
紫乃 「本当に・・・・・・。ありがとう」
クロエ「ぁああ・・・っうぁぁあああ――――――――――――――ぁっ!!」
SE:何かが壊れる音
紫乃 「クロエ・・・・・・」
SE:鈴の音
SE:鈴が砕ける音
紫乃 「(世界が・・・・・・壊れていくみたいだ・・・・・・)」
SE:水が流れる音
紫乃 「水・・・・・・?」
SE:水に飲まれる音
SE:水の中の音(砂嵐まで)
紫乃 「(なに、この、水・・・・・・息はできるのに、なんか、眠くなる・・・・・・)」
クロエ「紫乃」
紫乃 「(、クロ、エ・・・・・・? なんで・・・・・・っ)」
クロエ「私を、助けてくれるんでしょ?」
紫乃 「(え・・・・・・・・・・・・)」
クロエ「優しい紫乃。愚かな紫乃」
クロエ「そんな紫乃の代わりに、私が?しあわせ?になってあげる」
紫乃 「(・・・ま・・・・・・待って・・・・・・! やだ・・・! 嫌だよ・・・・・・! クロエ・・・・・・!)」
紫乃 「(みんな・・・・・・一緒・・・・・・・・・に・・・・・・・・・)」
クロエ「そうだね。みーんな一緒。ずーっと一緒」
クロエ「でも、おやすみ? 紫乃」
クロエ・紫乃「みんなとずっと一緒なのは、私だけでいいんだよ」
SE:砂嵐
SE:電源OFF
暁良 「・・・・・・おい遥、起きろ」
暁良 「遥!」
遥 「ん・・・・・・? っ!? っ、紫乃!!」
暁良 「うっわ! いきなり起き上がるなよ! 吃驚するじゃないか!」
遥 「ご、ごめん・・・・・・。暁良、みんな無事?」
暁良 「? 無事? まぁ、無事だけど。・・・・・・っていうか、無事じゃないのはお前だ。人の前でいきなり倒れて」
遥 「倒れて・・・・・・? そうだ紫乃! 紫乃は!!」
出雲 「紫乃?」
暁良 「? 誰だそいつは」
遥 「紫乃だよ・・・・・・? ほら、これぐらいの背丈でさ。ここに来る時だって、僕の話もちゃんと聞かないで一人で走って行っちゃって・・・・・・」
美琴 「え、でも。遥を置いてきた子って・・・・・・」
SE:扉が開く音
紫乃 「あ、遥! さっきは置いてっちゃって本当にごめんね!」
遥 「ぇ・・・・・・・・・?」
SE:扉が閉まる音
出雲 「クロエちゃん、おかえりなさい」
暁良 「そういえばクロエ、お前売店に何か買いに行ってたんだけ。遅かったな」
紫乃 「え!? 何そのあたしのこと忘れてましたみたいな口振り!」
美琴 「それで、売店に食べたい物は売ってたの?」
紫乃 「ううん。やっぱり病院の売店じゃ、チョコドーナツは売ってないね・・・・・・」
紫乃 「久しぶりだから、食べたかったんだけど。ホント、残念だよ・・・・・・」
遥 「長い黒髪をなびかせながら病室に入ってきたその子を、僕は知らなかった。けれど僕はすぐにその子が昔からよく知った幼馴染、クロエである事を思い出した。そして僕は、僕が探していた誰かの名前さえ、分からなくなった」
遥 「いや、知っているのに知らない。そんな感覚。大事な何かを、置いてきたような感覚・・・・・・」
遥 「僕はその感覚に、なぜか恐怖と絶望を覚えた」
遥 「今でも僕は時々夢を見る。見覚えのある女の子が、水の中を漂っている夢を。その夢を見るたびに、一瞬だけ思い出す。あの女の子と、あの時の出来事を」
遥 「夢のようで、確かに存在したあの惨劇は・・・・・・まだ・・・・・・」
SE:電源ON
遥 「紫乃・・・・・・」(ノイズ入り)
SE:砂嵐
遥(右)・クロエ(真ん中)・紫乃(左)「継続」
END
この物語を書いたのが、もう二年前になるので、個人的にとても懐かしみながらの投稿となりました。
楽しんでいただけたら幸いです。閲覧誠にありがとうございました。
今後とももよろしくお願いいたします。