1.精霊王
『ケガしてるよ』
『死んじゃうよ』
『助けないと』
『助けよう』
小さき者たちが口々に呟きその命を倒れ伏す人間の娘に与えては消えていく。
己の命と引き換えて助ける程の存在か?
人間など助けるに価する存在とは思えないが…
改めて娘を見てみると異世界から連れて来られた事が解った。
死にかけているではないか‼何て杜撰な‼
この世界の管理者は時々こういうポカをする。
そのたびに精霊達が右往左往する羽目になる。
しかし今回のは酷すぎる。このままでは精霊達が何体消えるかわかったものではない。
仕方ない。
『お前達。もうよい後は私がやろう』
『王様だ』
『光の精霊王様がきた』
『助かるね』
『この娘、大丈夫だね』
私の力を少し与えれば命はとりとめるだろう。
『なんだ。お前いたのか』
娘に力を与えようと屈んだところで声をかけられた。
『闇の…珍しいな昼日中から出てくるとは』
『小さき者達がうるさくてな。そいつか?』
『ああ、すでに多くの者達が娘の中に…』
『…このままではバランスが崩れるな』
闇の言葉に改めて娘を見れば、彼女の中に消えていった者達が彼女の力となり、この世界の誰より強い魔力を彼女に与えてしまっていた。
光の精霊王たる私と闇の精霊王である彼と二人の力で彼女の魔力を押さえなければ壊れかけているこの世界は耐えられない。
『この娘…右目を失っている』
『元からではないのか?』
『いや。この世界にくる直前に失ったようだ』
『…死にかけで運んできただけでも怠慢だというのに、女性の体しかも顔に欠損とは』
『ちょうどいい。失った右目を我々の力で作り、彼女自身が力をコントロール出来るようになるまで導いてやればいい』
『…そうだな…その方がいいだろう』
闇の提案に乗って私達は彼女の右目に力を注いでいく。
結果、彼女の右目は本来とは異なる色になってしまったがまぁ仕方ない。
片目で生きていくよりマシだろう。