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魔法と科学と月の詩《更新停止中》  作者: 和瀬きの
SPELL 1 【1】
1/62

プロローグ 最強魔法使い

2016/07/13

ずっとプロローグなしでしたが、やっと出来上がりました。いきなり突っ込んでしまって申し訳ありません。



 金髪を靡かせて楽しそうに走り、乾いた地面を蹴って宙に舞う。白い制服が風を切り、乱れることのない動作で着地した。


聖域を囲う灼熱の壁(ムーロ・フィアンマ)!」


 彼女の口から紡ぎ出された呪文が、一陣の風を防ぐ。ドーム状に展開された炎の壁が一瞬、彼女を見えなくさせる。


 それに戸惑ったのは相手の少女だ。次はどこから現れて、どんな攻撃を仕掛けてくるのかがわからないからだ。

 土にまみれた制服をはらう余裕もない。涼しい顔をした彼女を倒したい一心で、無理やり立っている状態だ。


猛り狂う憤怒の鎌鼬ヴォルテ・ティフォーネ!!」


 一か八か、炎壁を打ち破る魔法を唱える。土を巻き込みながら、回転する鎌鼬かまいたちが炎を消し去る。


「やった!」

「まさか、あれがあなたの全力じゃないでしょうね?」

「シエル!」


 いつの間にか後ろを取られていた。少女は防御することが出来ない。驚愕の顔のまま固まる。シエルと呼ばれた金髪少女はすでに手を突き出していた。


「身を貫く華麗なる火剣(スパーダ・フオーコ)の舞!!」


 細い火剣が少女の肩を掠め、制服が一部燃え尽きる。焼けた臭いが辺りに漂い、勝負は決した。起き上がらない少女に、シエルはニヤリと口角を上げる。


「この町で一番の魔法使い、だったわね」


 その言葉に、少女はびくりと肩を揺らす。


「怖い? わたしが、怖いの?」


 可笑しそうにシエルが言い、少女は顔を赤くした。


「……怖くなどっ」

「じゃあ、もう二度と勝負を挑めないようにしようか?」

「え?」


 シエルは今日一番の笑顔を向ける。


「待ちなさい! シエル!!」


 それを止めようとする周りの人間が、何を言っても気づかない振りをする。勝負というものは、戦いというものは、甘くない。それを伝えようとしたのだ。

 今後、勝負を挑まれたら面倒だからという理由だけで。


「体躯を抉る狂気の火焔(ヴォルテ・フオーコ)嵐!」


 少女の身体が炎によって持ち上げられ、地面に叩き落とされる。動かなくなったそこに、シエルはため息を零した。


「そんなもんか。あーあ、つまんない!」


 吐き捨てられた言葉が、風に混ざって消えていく。


 グリューン町にやってきた火魔法使いシエル。彼女が町の有名人になるまで、そう時間はかからなかった。


 シエル十二歳。今から約六年前の出来事だ。




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