イグレーヌの町
女性に教えられたとおりエリザは町に向かって歩いていった。門のように並んだ
木のところまでたどり着くと、そこには簡素ではあるが整備された小道が
続いていた。エリザは喉が渇いていたが、あいにく何も持っていなかったので少しでも早く町に着きたかった。やがて建物が見えてきたときには日がだいぶ落ちて
きていた。周りの景色を見てエリザは驚いてしまった。どこの家も丸太でできた
コテージのような雰囲気でその隣には小さな畑があった。町を歩く人々は
ディアンドル風の服やサロン風の服を着ており、エリザは本当に違う世界に
迷い込んでしまったのだと確信した。町の人もエリザの姿に驚いたようだ。
タンクトップにホットパンツ姿を見るのは初めてだったようで中には一目見て
目のやり場に困り、そらしてしまう人もいた。エリザはお腹が空いていたので、
近くにいた人に
「すみません、突然ですが一晩泊めていただけませんか」
と声をかけた。恰幅のいい年配の人は、エリザの突然の申し出に驚いたが、
エリザがこれまでの出来事を話すと、快く家に入れてくれた。彼は妻にエリザに
食事を作るよう話すと彼の奥さんはエリザに愛想よく振る舞い夕食をご馳走して
くれた。食事が終わるとベッドのある部屋に案内された。エリザはベッドに横に
なるとぐっすり眠った。朝食もご馳走になりエリザは少し不安が軽くなった
気がした。食事の後、エリザは
「私の世界に帰る方法、何かご存知ありませんか」
と聞いてみた。男の人は
「そうだな、ガレス国の首都イサベラにあるエレイン大聖堂にどんな願いも叶う
聖杯があるらしい。そこに行けば何とかなるかもしれないね。」
「そこは遠いのですか」
「遠いよ。何せ海沿いを歩いていかないといけないからね。森を通り抜けるという方法もあるが猛獣の住処だからやめたほうがいい。」
安全で遠回りの海沿いか、危険で近道の森か、エリザは迷った。少し考えた後、
「ありがとう、海沿いを通っていくわ。私サバイバルの知識ないし。」
とエリザは答えた。
「そうか、サバイバルが何だか知らないがお嬢さんの無事を祈るよ。
ここからまっすぐ行くと立て札があるからエクトール方面に進むといい。
そこにエクトールの港町があるから当面はそこを目指すのがいいんじゃないかな。」
彼の奥さんはエリザにバスケットを持たせてくれた。中には食べ物がたくさん
詰められていた。エリザは二人にお礼を言うとエクトールの町に向かって
歩き始めた。