その23 火の女神の攻略日記1
世界に力が満ちはじめ、われは、目覚めた。
最初に思ったのじゃ...。
可憐で可愛い、レーホヘルトに会いたいのう...と。
「うむ、では、会いにいこうぞ。」
ルーネーアス火山の火の神殿の寝床より身を起こし、われは光の神殿のある太陽に飛んだのじゃ。
「ルーネ?ルーネリスか?」
途中でラームヘルトに会ったのじゃ、レーホヘルトに似てるのに雰囲気が全然違う、男って感じじゃ、われは好かぬ。
「ラームヘルトか、懐かしいのう。」
じゃが、懐かしいのはたしかじゃ。
「もしかして、兄ちゃんに会いにいくのか?」
そうじゃ。
「...行かない方が良いよ、さっき、見かけたし...当てられるぞ。」
?何を見かけたのじゃ?
結局、振り切って、レーホヘルトに会いにいったら、あの女がいたのじゃ。
なんじゃ、先代世界魔王のひ孫で、現世界魔王じゃと信用できぬ!それに、レーホヘルトはわれと婚姻を結ぶのじゃ...。
あれが今、流行りのらぶらぶと言うものか...嫌じゃ、われは認めぬ。
「あのー、ちょっと、大丈夫?」
われが落ち込んで、海辺でたそがれていると綺麗な声がして振り向くと、レーホヘルトより麗しい...男子じゃった、われの落ち込み具合が見てられなかったと言っておったのじゃ、クレハは...。
「どうして、そなたは女子なのじゃ。」
われは、クレハに一目惚れしたと言うに、クレハは女子だそうじゃ。
「何、グジグジ、いってるんですの?ルーネ様、私が女なんて、私の身体をみた瞬間にわかったでしょう。」
クレハ、そなたに失恋した方がきついのはどういうことじゃ
「しかし、もし、そなたが男子なら離さぬ自信はあるのじゃが...。」
そんな、自信要りませんっとクレハに言われたのじゃ
「レーホヘルト様は良いんですか?」
そうじゃな、良くはないな、先代世界魔王のひ孫など、レーホヘルトにふさわしくないと思うのじゃ。
「オーイ、クレハ、あらし、来たぞ。」
ラームヘルトがにやにやと締まりのない顔でやって参った。
「ラームヘルト、何ようじゃ。」
われとクレハの時間を邪魔するなど許せぬ。
「何って、おれは、クレハとの愛の結晶!あらしに会いに来ただけだぞ。」
愛の結晶じゃと?
「違いますよ。」
クレハは否定したが誰なのじゃ、あらしとは。
「ラー、来た?」
可愛い4才くらいの男子が奥から出てきたのじゃ。
「あらし、おきたの?」
クレハが慌てて抱き締めたのじゃ、可愛い。
「クー、あらし、目覚めた。」
ニコニコしながら言ったのじゃ。
「その子は誰じゃ。」
クレハの子ではないようじゃな、腹が膨らんだところは見ておらんし。
「...嵐と海の魔王、もう一人の世界魔王だよ。」
ラームヘルトが言ったのじゃ、なんじゃと。
「それでは、あの女は、もう要らぬのではないか?」
われは言ったのじゃ。
「五十嵐苑夜を補佐するために、この子は、生まれた、世界の意志によって。」
ラームヘルト、何をいっておるのじゃ。
「世界の意識は、五十嵐苑夜世界魔王に執着している、彼女がもし、先代のように逃げ出してても、連れ戻されるだろう、それ以前に界渡りすら逃げる意識があれば、させないな。」
あの女にそこまでの魅力など、どこにあるのじゃ。
「苑夜ちゃんは逃げないわ、責任感がありすぎよ、この間も倒れたし。」
そのようじゃな。
「オレ、なんでこんな事知ってるんだろうな。」
ラームヘルトが遠い目をしたのじゃ、知らんわ。
「先代のせいで世界は乱れたがのう。」
奴が界渡りせねば、われとて、レーホヘルトの側で、起きてられたわ。
「次代を生み出す為にかけたんだよ、世界の意志は、故意に先代世界魔王を逃し、見事に日本の霊山富士山の魔王、御不二魔王の血筋を釣り上げた。」
オレ、今日はおかしいぞってなんじゃ、そなたが言ったのじゃないのか。
「ラー、お腹へった。」
あらしがおねだりした、可愛いのう。
「よし、飯にするか。」
そなたが用意するのか、ラームヘルト。
「私も手伝うわよ。」
クレハとラームヘルトはあらしをまとわりつかせたまま立ち上がった。
「ルーネも食っていくか?」
邪魔のようじゃな。
「いや、もうおいとまいたそう。」
どこも春なんじゃなと思いながら、われはルーネーアス火山に帰ったのじゃ、一人身はさびしいのう。
いつか、レーホヘルトやクレハより麗しい、男子とめぐりあえるとよいのじゃ...もちろん、レーホヘルトと婚姻を結ぶ事もあきらめないのじゃ。
あの、海辺で拾った卵からあらし君は生まれました。