その19光の勇者の空回り冒険記4
「なんて、美しいの~。」
メルミル博士が宙を浮く光るクラゲを捕まえようと手を伸ばした。
「すばしっこくて捕まらないわ。」
スィ~っとクラゲは逃げた。
「綺麗でしょう。」
オレ達が来る前から来ていた、メルミル博士の同類らしい白衣のおっさんが声をかけた。「ええ、あのクラゲ素晴らしいですね。」
うっとりとメルミル博士が答えた。
「トゥーリア、様子見に行こう。」
「そうね。」
ジオさんは気になるらしくクラゲ研究員の集団にトゥーリア姉ちゃんと紛れ込んだ、さすが、魔法使い、変わったもんは気になるらしい。
オレ達は、今、変な連中が目撃されたと言う『カケベファオの沼地』にいる...ザッダ、腰に腕まわすな、変な連中...いるな、メルミル博士とトゥーリア姉ちゃん、ジオさん含めて、白衣につなぎの白衣の背中には変な模様がついている(明正和大学☆魔法生物研究室と書いてあります。)
「あまり、前出ると危ないぞ、グラーノ。」
ザッダはそう言って、ますますオレの腰を抱き込んだ、今、マリアーヌさん様子見に沼地まわってるんだった、不味いな。
「ザッダ、やめなさいよ。」
ミルヌさんはため息をついた。
その時、ザバザバっと水面が波立った。
何か、緑のものが上がってきた。
「ギャー!」「わぁー!」
オレとザッダは思わず後ずさった。
「きゃー、なによ。」
ミルヌさんはそういいながらものぞきこんでいる。
「ああ、溺れるかとおもったよ。」
水の中から女の子が現れた。
「苑夜ちゃんダメじゃないの~、この間倒れちゃったばかりなのに~。」
オバサンが女の子に手を貸して岸にあげながらいった。
「すみません、三山さん。」
可愛い声だ。
「はい、タオルですよ。」
若い男が女の子にバスタオルを渡した。
「ありがとうございます、クラゲ捕まえようとしたら足をとられちゃって落ちちゃっんです。」
ああ、また泥まみれと言いながら彼女、エンヤは頭を拭きながら、こちらをふりむいた。
「レーホさん?きてくれたんですか♪」
嬉しそうにエンヤがこちらにきた。
「可愛い...。」
オレを見上げる顔がもろに好みだった。
「...あ、すみません、人違いでした...レーホさんと同じ気配なのに...おかしいな。」
エンヤはそう言って離れてしまいそうになった。
「あ、綺麗にしましょうか。」
そう言うとオレは、ヴィセルデの呪文を唱えた、野菜とかの泥を落として綺麗にする呪文だ。
「あ、ありがとうございます、不思議な呪文ですね。」
エンヤは興味深い様子で目をキラキラさせた。
ま、農家でもなけれ、ヴィセルデの呪文は知らないだろう。
それにしても、なんて、きれいな銀の瞳、深い緑の1つに編んだ髪...なんて可愛いんだろう。
「やっぱり、レーホさんににてる、気配とか。」
エンヤはオレを横目で見ながら呟いた言ってた、レーホさんって言った時凄く嬉しそうだったよな、恋人か?うらやましい。
「可愛い子よね。」
ミルヌさんはにやにやした。
「五十嵐さん、クラゲ採れましたか?」
さっきの白衣集団がエンヤに話しかけた。
「採れました、3体で大丈夫ですか?」
あのクラゲ採った?すばしっこいのに?どこから出したのか透明の袋の中に3匹のクラゲがフヨフヨと浮いていた。
「美しいですわ~。」
メルミル博士はしがみつくように覗いている。
「...この人、誰ですか?」
エンヤは戸惑って研究員らしい白衣の集団に目を向けた。
「紫世界の同志です!素晴らしい博識な女性なんですよ。」
熱意を持って白衣のおっさんは言った、おい、ザッダは熱っぽくオレの肩だくんじゃねー。
「変態仲間増やさないでね~。」
さっきのオバサンが注意した。
変態って言えば変態だよな、メルミル博士も。
「すごーく、綺麗だね。」
とトゥーリア姉ちゃんもまざっていってるよ。
「そうだな。」
ジオさんも淡々とした声で言ってた。
「苑夜ちゃん、着替えた方がいいわよ~。」
オバサンが言うとエンヤはうなずいた、そのしぐさすら可愛いな。
「私に一体ゆずって頂けないかしら?」
メルミル博士が言うと白衣の集団とエンヤ関係者は固まった。
「紫世界の同志よ、申し訳ないが、まだ、渡せない、残念だ。」
本当に残念そうにおっさんが言った。
「すみません、会社の備品なので勝手ができないんですよ。」
エンヤもすまなそうに言った。
「そうなの?残念だわ。」
メルミル博士は本当に残念そうに言った。
「いつか、きっといい成果を報告できます、紫世界の同志よ。」
白衣のおっさんは目をキラキラさせて言った。
「そうですわね。」
何か、あそこだけ世界が違うな。
「千葉博士、受け取ってください、着替えて来ます。」
エンヤはそう言ってクラゲをおっさんに渡すとどっかに消えた、魔法か?
しばらくすると着替えて現れてきた、エンヤはどんな格好してても可愛かった。
「千葉博士、もう少し奥で調査しているチームの人達と合流します。」
そう言って出発をうながした。
「残念です、また会いましょう。」
メルミル博士と白衣のおっさん達仲良くなってるようだ。
「残念だ」
「そうね。」
ね、姉ちゃんもジオさんもかい。
「あ、ありがとうございました。」
エンヤはワザワザ近くにきておじぎしてくれた。
「い、いや大したことないよ。」
オレは照れていった、ザッダに尻をなでられても今は笑顔だ。
「連絡先、聞かなくていいの?」
ミルヌさんがいってくれるまでオレはその事に気がつかなかった。
結局、オレはエンヤに何も聞けなかった。
また、会えるといいな、本当に、レーホさんって人うらやましいよ。
森の奥に去っていくエンヤ達を見ながらそう思った。