幕間 企業看護師、春川奈津美の出向
「随分、無理しましたね、五十嵐魔王。」
私は、神殿のベッドでぐったりしてる五十嵐世界魔王からバイタル符をはがしながら言った。
「....苑夜。」
紫色の長い髪と紫の目の綺麗な光の神様が心配そうに言った。
「熱は37.8℃、血圧132/76、プルス...脈は80、熱も、血圧も脈もあがってます。」
もっと上がる前に、通院かな?
「 春川さん、紫世界の世界魔王の五十嵐さん
、倒れちゃったから、出向よろしくね。」
医務課長の田谷さん(男、ハゲ、成熟度、中年、独身)が言った。
「紫世界って。」
どんだけ遠くにいかせるのさ。
「竹内事務長が春川さん、指名でだから、さっさか行ってきて、魔王課の藤野魔王迎えに来てるから。」
ニコニコしながらいいやがった。
相変わらず、物知らず(病院にほとんど勤めずここに就職したから)はのんきでいいな。
「わかりました。」
異世界でこっちの術が使えるかどうかしらないけどさっさと行ってこよう。
「お手数おかけします、春川看護師。」
藤野魔王も中年だけど、ダンディだし、気遣いできるし...だから、家庭もちなのか、医務課長は、守銭奴で自分だけの人だから結婚できないんだね...私も人の事言えないけど、独身だし。
「よろしくお願いします。」
ニッコリ笑って挨拶しといた。
「本当に空が紫だぁ」
界渡りした直後に見上げた空はきれいに晴れわたった紫空だった。
「紫世界の転移の門、使いましたけど、時空酔いは無さそうですね。」
藤野魔王が心配そうに言ってくれた。
「大丈夫ですよ。」
ニコニコして言った、気遣いありがとうございます。
神殿の奥の部屋に『光の精霊』(でも、紫色の髪に紫色の目...明正和次元だと金色のイメージなんだけどな。)に案内してもらった。
五十嵐魔王はぐったりとベッドによこになっていた...起き上がれないかな?その額に一生懸命、絞った布をあててる男の人は、私の人生の中で一番綺麗な人だった。
「苑夜、大丈夫?ダルいわよね。」
その紫色の長い髪と紫の目をした人は予想に反して女言葉だった、は、いけない仕事中だよ。
「五十嵐魔王、調子はいかがですか?」
私がいうと五十嵐魔王は目を開けた。
「春川さん、ダルいし身体中痛いです。」
息切れもしてるわね、ヒューヒュー喉も言ってるし、風邪ひいてるかも。
「バイタル符を貼りますね。」
私はバイタル符を五十嵐魔王の服のボタンを断って開けて、心臓の上に貼った、どこでも計れるけどここが一番正確だ。
五十嵐魔王は魔族がメインだから通常の人型扱いでいいのよね。
「五十嵐魔王、福田病院に通院しましょう、歩けますか?」
歩けなかったら、搬送袋使おうかな。
「だ、大丈夫です。」
五十嵐魔王はやっと立ち上がった。
「苑夜、私が運ぶわ。」
光の神様、五十嵐魔王の婚約者が彼女を抱き上げた。
素敵なお姫様抱っこだけど、ここに入れてもらおう。
「この、搬送袋に入れてください。」
小さなポシェット状になってるけど、空間術で広くなっていて、柔らかいベッド状の部屋になっている。
「レーホさん、歩けるから大丈夫だよ。」
五十嵐魔王はそう言って下ろしてもらった、大人しく搬送袋に入ればいいのに。
「苑夜、無理しないでね。」
心配そうな光の神様に見送られて五十嵐魔王連れて、藤野魔王、私はもう一度界渡りした。
「インフルエンザの簡易検査でもでなかったし、採血も炎症反応たかいし、風邪と過労だね。」
福田病院のドクターはそう言った。
「なるべく速く、仕事に復帰したいのですが。」
五十嵐魔王は言った。
「...う~ん、無理しそうだな、解熱符じゃなくて、点滴符でゆっくり治そうか、入院するかい?」
五十嵐魔王は入院は断って点滴符に三日間通う約束をした。
五十嵐魔王、お願いだから無理しないでよ。
田谷医務課長がぼやいた。
「どうせなら、医務課長の僕が行った方が役にたったのに、五十嵐魔王抱き上げたりさ。」
変な所さわってセクハラになると困るから、竹内事務長が私を指名したんじゃない。
本当にわかってない。
五十嵐苑夜世界魔王は一週間後、現場復帰出来たそうで、後でお礼をいいにきてくれました、私は仕事なのに。