幕間 魔王様のお兄ちゃん
「オレ、最近、苑夜と会ってないな。」
夕飯を食べている時気がついた。
オレは、五十嵐真夜、環境調整師をしている、五十嵐苑夜のお兄ちゃんだ。
「...僕も会ってない。」
お父さんも気がついた様に言った。
「何、二人とも、苑夜不足?」
お母さんはノンビリ言った。
「お母さんは会ってるの?」
二人でお母さんを見つめた。
「夜勤が多いからかな?夜型の精霊とか人達とか会って相談したり交渉したり、夜の植物の調整業務があるんだって、だから、私も会ってないよ。」
お母さんはあっさり言った。
夜勤か、その段階になったんだな、魔王も大変だ。
「明けでも、家にいないよ。」
お父さんが気がついた。
「昼間でも、緊急時対処しないといけないからって、ほら、婚約者のレーホヘルトさんの神殿に部屋借りて仮眠してるらしいよ。」
お母さんは鯖の味噌煮をほぐしながら言った。
「こ、婚約者!?誰だよそれ!」
オレは初耳だよ。
「苑夜が世界魔王している世界の光の神様、イケメンだよ、女言葉だけど。」
お母さんは鯖の味噌煮をたべながら答えた。
女言葉?なんだそれ?
「レーホヘルトさんの所に...心配だな。」
お父さんは顔をしかめた、お父さんも知ってたのか、そうだよな。
「大丈夫だよ、だってレーホヘルトさんってウブそうだし。」
そう見えても男は狼だぞ。
「この間、五十嵐道場に修業しにきてるって聞いて、苑夜と一緒に行って会ってきたよ。」
ズルいぞ、お母さん、苑夜と一緒になんて。
「やさしくて素敵な紳士だったよ、女言葉だけど。」
女言葉なんだな、だけど、男はみんな狼なんだぞ、あんなことやこんなことの妄想を...お兄ちゃんは許しません。
オレがそんな事を考えてると勢い良く食堂の扉が空いた。
「ただいま!お腹すいたよ。」
え?苑夜?
話題の妹は呑気に登場した。
「お帰り、今日は鯖の味噌煮だよ。」
呑気にお母さんも答えた。
「お帰り、苑夜。」
お父さんは嬉しそうに焼酎を呑みながらいった。
「...お前、夜勤じゃ無いのか?」
オレは拍子抜けして聞いた。
「うん、今日は日勤で帰ってこれる日だよ。」
苑夜は鯖の味噌煮を時空保存パックから出しながら言った。
そう言えば婚約者の事、聞いておかないとな。
「苑夜、婚約者いるって言う話を、お兄ちゃん聞いたんだけど。」
オレが聞くと苑夜はあれ?って顔をした。
「お兄ちゃんに言って無かったっけ?」
聞いてない。
「紫世界の光の神様に最初に会った時、プロポーズされたから婚約したって言う話だったよね。」
お父さんが言った、何その世界の為に無理矢理婚約ってぽいの。
「うん、レーホさんにプロポーズされたから婚約したんだよ。」
苑夜はほうれん草炒めをつつきながら答えた。
「苑夜は、嫌じゃないのかい?」
お父さんはさりげなく聞いた。
そうだよな、無理矢理っぽいよな。
「嫌じゃないよ、最初はレーホさんが飽きるまで婚約してればいいかなって思ってたけど。」
なんだそれは。
「私、今はレーホさんの事、尊敬してるし、好きらしいよ。」
苑夜は顔を少し赤く染めて言った。
「好きらしいってなんだ?」
オレは突っ込んだ。
「...好き、レーホさんの事、大好き...わー、言っちゃったよ。」
苑夜は照れている。
「一度、オレに会う機会作ってくれ。」
その女言葉の男に会って、見きわめたいぞ。
「僕も正式に会ってないから会いたいな。」
お父さんはニコニコ言った。
「そうね、それがいいね、苑夜おねがいね?」
お母さんが言った。
「わかった、頼んでおくね。」
苑夜はそう言うと鯖の味噌煮をたべはじめた、まだ照れてるな?苑夜。
オレは呑気に鯖の味噌煮を食べている苑夜見ながら思った。
その婚約者、苑夜に相応しくなかったらお兄ちゃんが全力で排除してやるからな。
それから、苑夜、男はみんな狼だぞ、気を付けろよ。