第壱話~プロローグ~
翌日、雨宮は学校を休んだ。
担任によると家の事情らしい。
引っ越してきたばかりで家の事情とは何であろうかなどと考えてしまっている自分がいたが、
とりあえず言えることとしては昨日の質問は明日に持ち越されたらしい。
しかし、翌日もその次の日も、雨宮は学校を休んだ。
久しぶりに彼女を見たのは、授業も本格的にスタートしている、1週間後のことだった。
1週間で雨宮に関する様々な噂が学校中に広がっていた。
親の仕事が危ない仕事だの、前の学校でいじめられていただの、
根も葉もない噂のおかげで、雨宮に近づこうとする人は転校当初に比べると極端に減ってしまっていた。
それでも雨宮に話しかける奴もいた。
しかし彼(彼女)らは例外なく雨宮の言葉で近寄らなくなった。
たった一言
「私に関わらない方がいいよ」
これ以上無いくらいに冷たい声で・・・
前に言っていたこの学校では友達は作らないというのはどうやら本当らしい。
その日の昼休みまでに、雨宮に近づこうとする人はいなくなっていた。
昼休み、雨宮は授業が終わるなり教室を出て行ってしまった。
1週間前に聞こうと思っていたことを聞くために、僕は雨宮の後を追い教室を出た。
もしかしたら全然的外れな考えかもしれない。
けれど、僕にはそうではない確信があった。
自分がかつて体験したような事に雨宮も直面しているんだろうという確信が。
5年前、僕は交通事故にあった。
僕だけじゃない、父親、母親、妹の家族全員で事故にあった。
中学に上がる前の春休み、家族で外食をしにいった時にに車同士が正面衝突したのだ。
原因は向こうの車の飲酒運転・・・
その事故で生き残ったのは僕だけである。
今は親戚の家で暮らしている。
行くはずだった中学は入学前に転校することになった。
一時期は悲しみや怒りなどの負の感情に支配されていた時期もあった・・・
そんなあのときの自分に帰り道で見た雨宮の表情がどこか似ているような気がしていたのだ。
今までそこにいた自分が消えてしまった様な、自分自身を見失った様な、そんな表情が・・・
雨宮は屋上にいた。
普通、屋上といえば人気の昼食スポットのイメージがあるが、うちの学校の屋上は日当たりが悪く、あまり人気がない。
灰色で正方形のタイルが敷き詰められた薄暗い空間で雨宮は泣いていた・・・
修正版です