第壱話~プロローグ~
次の日、昨日の北川の話どおり、朝のHRで先生に連れられて転校生が僕のクラスに入ってきた。
(まさかうちのクラスだったとは)
転校生は女子だった。
彼女は担任に言われて黒板に名前を書いた。
雨宮悠生
それが彼女の名前だった。
雨宮は簡単な自己紹介を済ますと足早に指定された自分の席に向かった。
自己紹介から挨拶まで終止無表情で雨宮は席に着いた。
休み時間になると雨宮の周りは人だかりが出来ていた。
「どこの高校からきたの?」
「どうして転校することになったの?」
「どこに住んでたの?」
などなど、色々な質問が矢継ぎ早に雨宮に投げかけられていた。
しかし、そのすべてに対して雨宮は曖昧な答えだけで、結局彼らが知ったのは
前の学校の名前程度のことだった。
その日の放課後、翔達は部活なので1人で帰宅していた時、同じく帰宅途中の雨宮が前の方を歩いていた。
(せっかく同じクラスなんだし声かけとくか?)
僕は小走りで雨宮の横まで駆けて行った。
「お~い、ちょっと待って」
声をかけると、雨宮はゆっくりこちらを振り返った。
「良かったら一緒に帰らない?」
「何で?」
いきなり疑問系で返された。
「何でって・・・ほら、同じクラスだし」
「この学校は同じクラスだと一緒に帰らないといけないの?」
「いや、そうじゃないけど・・・駄目?」
「断る理由はないけど、どうして私なの?」
「それは・・・ほら、転校してきたばっかりじゃ友達もまだ少ないと思うし、それにおれ自身が雨宮と仲良くなりたいから・・・なんだけど・・・」
僕は照れくさくて最後の方を少しぼかしながら言った。
「私と?うれしいけどそれはやめておいた方がいいと思うわ・・・
この学校では友達を作るつもりもないし・・・」
雨宮は上げていた顔を下げ、静かにそう言った。
「え!?どうして?」
「それをあなたに教える必要もないわ、私はひとりで帰るから。」
かなりショックな言葉だったが、これ以上は無駄だと思った僕は
「そう・・・じゃあまた明日」
そういって雨宮と別れた。
クラスの皆と話していた時も、昼食の時も常に無表情だった彼女が初めて、ほんの少しだけど
別れ際に表情を変えた。
別れ際の雨宮の表情にぼくはどこか既視感を覚えた。
1人の帰り道で、僕は考えていた。
(もしかしたら雨宮も僕と同じかも知れない)
過去にあった出来事が頭の中を巡っていた。
その回想は家に帰っても続いていた。
(明日、雨宮に聞いてみよう)
最終的に僕はその結論に至った。
もし雨宮が僕と同じなのだとしたら、少しは力に慣れるかもしれない。
この時から僕はすでに雨宮悠生のことが気になっていたのかもしれない。
こんにちはhiveです
第壱話の一部目だけが長かったので修正しました
勝手な変更失礼しました。