夏に咲いた火花
ある夏の日。
咲季と近場の河原に花火大会を見に来ていた。
その花火大会は近場では有名で。
なかなかに人も多かった。
そんな中まだ中学生の俺と咲季は埋もれるようにして
花火の見える場所まで移動した。
そこには誰もいなくて、少し不気味ではあったが
花火が始まるとそんなことはどうでもよくなった。
それから俺は咲季と花火を見て
花火を見て・・・
見ていると後ろに放り出した手が偶然咲季の手に重なってしまったりして。
それからは手を繋いでみていたことを覚えている。
それから・・・花火を見ていると。
花火よりも咲季を見ている時間が長くなったころ。
一際大きな音が鳴り響いた。
もう花火も終わりに近づいているのかもしれないと思い、
よく見ていることにした。
河に浮かべられた小舟からスターマインだったか?が上がっている。
そしてその向こう。
反対の川岸から花火が上がった。
夜空に光の亀裂が入る。
水面に映って上下に伸びていくそれは、
ちょっと中二チックだけれども本当に、
夜空に亀裂が入っているかのようだった。
そして映し出される大輪の花。
明るく照らされた向こう岸。
目の前。
花火の筒がこちらを向いていた。
閃光。
咲季の前に出る。
何がどうなるか、どうなったかもわからないままに。
俺は気を失った。