プロローグ
拙い文章ですが、楽しんで頂けると幸いですm(_ _)m
君は今この瞬間、何を思って、何を考えているんだろう。ひとりで寂しくないだろうか。辛くて泣いてないだろうか。
──キーンコーンカーンコーン
自由を告げるチャイムが鳴り響き、思考が一気に現実へと戻される。
クラスメイト達が談笑しながら放課後の予定を話し合う中、僕は勢いよく教室を飛び出した。
「波川! 廊下を走るんじゃない!」
「すみませんッ!」
「おい、だから歩けって!!」
すみません、先生。でも今は、この一分一秒が物凄くもどかしいんです。僕らの時間と彼女の時間では価値が違う。秒針の音ですら不快で不快で堪らないんだ。本当は、片時も君のそばを離れたくなんかないのに……。
落ち葉を巻き上げながらいつもと同じ道を駆けていく。帰宅ラッシュで道がごった返しているが、足を緩めるわけには行かない。
──ドキッ
僕の真横を、サイレンを鳴らした救急車が通り過ぎて行った。
──『余命、あと半年です』
あの瞬間、僕の世界は灰色に染まった。
膝の上で小さく震える無力な拳。
あの日の君の横顔は、一生忘れることができないだろう。
「しまった、赤信号だ……」
病的なまでに青白い肌に、以前よりも華奢になった身体。
小学生の頃から伸ばしていた長くて艶やかな自慢の黒髪と、ニット帽姿で微笑む君。
そして、ベットの上で僕を見上げる、儚げで透き通るように美しいあの瞳──
秒針が僕の精神を少しづつ蝕んでいく。
最悪のシナリオが脳裏を過ぎった。
いや、ダメだ。ここで立ち止まってはいけない。
普段あまり動かないせいか、身体が全然言うことを聞かない。肩で息をする僕に、道行く人の視線が集まっているのを感じた。
……大丈夫。こんなの、とうの昔に慣れっこだ。
「あっ、おい君!」
信号が青に切り替わる。
こんな役に立たない荷物なんか、今すぐ捨ててしまえばいい。教科書なんてまた買い直せばいいだけだ。
あんな物よりも、時間の方が何百倍も大切に決まっている。
紅い太陽は少しずつ地面に姿を隠していっている。電柱からカラスの群れが一斉に飛び立った。
もう、間に合わないかもしれない。
どれだけ頑張っても報われないかもしれない。
それでも僕は、足を止める訳には行かない。
あの日君と、約束したから。
世界一大切な君が、僕が来るのを楽しみにしてくれていたから。
だから僕は、歩みを進める。
独りぼっちで待ち焦がれている君を、迎えに行かなければいけないんだ。
※※
焦る思考に、身体が段々前のめりになってくる。人が少ない道に出て更にスピードを上げた。
道路の向こう側に、「浅野原総合病院」の文字が見える。
横断歩道を無視して病院に入り、直ぐに受付センターの方へ向かった。
受付には、運悪く人だかりができている。
だが、生憎僕はそんな猶予を持ち合わせていない。待ち列の真横を全力で走っていった。
病室までは階段三つ分。
大丈夫。もう少し、もう少しで病室に着く。
頼む、間に合う。間に合ってくれ……!!
僕はもう一度──君の笑顔が見たいだけなんだ。
走りながら、手が震える。
扉を前に、秒にも満たない一瞬の葛藤を吹き飛ばした。そして、
勢いよく開いた扉の向こう側で、君は──
読んでくださりありがとうございました!
安定して投稿できるよう頑張ります✨️✨️




