006
「またお越しくださいませ!」
名前を聞いただけ、聞かれただけ。
そこになんの意味もないんだ。
たまたまオープンキャンパスの時に道案内をした。
たまたまコンビニで再会した。
お礼をしたい相手の名前を聞きたくなった。
ただそれだけだろ。
……可愛かったなぁ、あの笑顔。
っっっ!
そうじゃない、妄想するな。
相手は女子高生なんだ。
でもあの子の笑顔に救われたな。
いつもの金曜日の夜より心が軽い。
恋……そんなわけない。
禁断すぎるし俺には縁のない話なんだ。
少女漫画のように胸が高鳴る恋をしたい。
少女漫画のように切ない恋をしたい。
少女漫画のようにほろ苦い恋をしたい。
どんな出会いでもどんな相手でもいい。
ただ憧れているだけだ。
現実でそんなことが起きないのは、35年間恋人がいない俺にはよーくわかっている。
小泉桃香さん、か。
でも名前を覚えるくらいは許されるよな。
週末に何回名前を反芻しただろう。
初めて楽しい週末だったかもしれない。
「川村さん、これを掲示板に貼り出して来てもらえますか?」
「はい、分かりました。いつもの在校生インタビューのですね」
こんなの大学のサイトでいいんじゃないかと思うんだが……
まぁ俺がそんなこと言っても変わらないしな。
頼まれた仕事を全うしよう。
「これでよしっと」
思わず独り言を言ってしまったな。
聞かれてないといいが。
「すみません」
「うおっ、と、はい、な、なんでしょう!」
「あ、ごめんなさい、驚かせてしまいましたね」
「いえ、大丈夫ですよ、失礼致しました」
話し掛けられると思ってないから変な声が出てしまったな。
独り言を聞かれるより恥ずかしいかもしれん……
「聞きたいことがあって」
「はい、なんでしょうか」
「ありがとうございます。今張り出してたものに書いてあるのに興味がありまして、これはどのように選ばれるのでしょうか」
「はい、これには自薦と他薦がありまして、候補者が見つからない場合は、教授などに推薦してもらったりとなっております」
「詳しくありがとうございます」
これに推薦したいお友達でもいるんだろうか。
見つけるのは毎回大変だから助かるな。
それにしても美人だな。
長いサラサラの黒髪か。
「良かったら詳しくお話を伺いたいのですがよろしいでしょうか」
「はい、分かりました。では詳細の書いてあるものがこちらになりますので、良かったらご覧下さい」
「ありがとうございます。それでは失礼します」
「おまちしてますね」
こんなもんだ。
何も起こらないんだ。
でも美人だったなぁ。
礼儀正しくて丁寧で物静かなタイプの美人、か。
あの子と、小泉桃香さんとはタイプが違うな。
って何を思い出して比べているんだ。
はぁ、何してんだ俺は。
仕事に戻ろう……
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ドタバタ?コメディです。




