002
「あの、えっと……」
「どうされました?」
「いえ、なんでも……あ、そうじゃなくて……」
「大学はこの道を進んでいくとありますので、あちらに進んで頂ければ大丈夫ですよ」
「え、違くて、その……ずっと好きでした!」
はっ!
いかんいかん、妄想の世界に飛んでいってたぞ。
今は仕事中なんだ。
それにずっと好きだったとか有り得ないだろ。
「私、スマホを忘れちゃって、誰とも連絡取れないし、方向音痴だからどうしていいか分からなくて……」
「そうでしたか。道は私が教えるので大丈夫ですよ。分かりやすい道ですのでご安心ください」
「良かったぁ、ありがとうございます!」
「この道を────」
「分かりやすくありがとうございます!」
「いえいえ、楽しんでくださいね」
「はい!行ってきます!」
元気な子だな。
最初は捨て犬みたいに不安そうな顔をしていたのにな。
はは、また振り向いて手を振ってるじゃないか。
可愛らしいな若い子は。
うちの大学を受験するのか分からないが、もう会うことはないだろ。
さてと、この時間までだって聞いてたからな。
休憩もあるし帰るとするか。
3時には帰りの案内をしないとだっけな。
それまで少し書類を片付けるとしよう。
ふう、早く帰りたいな。
…………さっきのあの子の笑顔がチラつくな。
ダメだダメだ、帰ったら発散しよ。
はぁ、する前から虚しいな。
「あっ、さっきはありがとうございます!」
「あー、先程の。オープンキャンパスはいかがでしたか?」
「はい、とっても楽しめました!ここが第一希望なので、モチベーション上がりました!」
「それは良かったです。また来年お待ちしております」
「はい!ぜひ!本当にありがとうございました!」
いい笑顔だな。
元気で可愛らしいなんて素敵な子だ。
是非とも受かってもらいたいもんだ。
「あの、それで……えっと、良かったら……なんです、けど……」
「はい、どうかなさいましたか?」
「め、迷惑じゃなければ、れ、連絡先教えてください!」
「……え?」
「今日のお礼したくて、すごく心細かったから……嬉しくて!」
「いやいや、そんなことしてもらうほどのことじゃ……」
「ダメ、ですか……?」
ダメに決まってるし、またトリップするんじゃない!
「あの、良かったら……」
「え?」
本当に起こるの……か?




