元サウラの魔法
ある少女が死にそうになっていた。彼女の母親は彼女から隠れたところで医者と話をしていた。
少女は目を開いてそちらを見て、再び目を閉じた。
少女の目の前に自然が広がっていた。
「私はどうすれば良いのかな」
そういうと彼女は泣いた。大声ではなかった。すると旋風が起こり、その中から話しかける声があった。
「あなたに魔法を授けよう。それは王国とその民を作ることができる。あなたは豊かになるだろう」
「魔法?」
別の旋風が木の棒を運んできて、彼女の目の前に置いた。
少女はそれを持ち上げて、軽く動かしてみた。
しかしすぐには何も起こらなかった。
「土に命じなさい。あなたの子となるように」
そういうと旋風は収まり、声も止んだ。
少女は言われた通りにやってみた。
「土よ、私の子となれ」
すると水が滴って土を濡らし大きな土塊となった。
それから小さな塊が分離して、それがサウラよりも小さな人の形になった。
「凄い」
それから彼女はしゃがみ、覗き込むようにして尋ねた。
「あなたの名前は何というの? 私はサウラ」
すると人の形の土の塊は、
「分からないよ。好きに呼んで」
「じゃあ、セトと呼ぼうかな」
「分かった。僕はセト。君は僕に何をしてほしい?」
「仲間を増やして、賑やかにしたいな。皆で幸せになる」
「分かった。僕、働く」
土の塊からセトは自分に似た人の形を作って、彼らを兄弟と呼んだ。彼らはセトネルと名付けられ、サウラに指示を仰いだ。
サウラは木の棒を持って、
「家の材料よ出てきて」
と言った。すると小さな木の板が現れ、組み立てれば彼らの住む家となった。彼女はまた、彼女自身のいるところをも彼らに作らせた。
次々に家ができ、小さな集落となり、王国となった。セトネルは再び自分に似た人の形を土によって形造り、その数は百を超えた。
サウラはその国の王様であって、葉っぱで作られた王冠を被っていた。セトは宰相だった。
それからしばらく平和が続いた。
しかしある時、
「お前が悪い」
と言って
土の塊同士がそう言い合って争っていた。どうやら上手く動かないセトネルが一人現れたことについて言い合っていた。
「やめて。私は皆を愛している。一人一人誰よりも愛しているの」
サウラがその間に入った時、片方が片方を強く打って、崩れた土になった。
サウラは思わず悲鳴を上げ、他の土塊たちが集まり、
「僕もこうなるのか」
と互いに言い合って不安がった。
「大丈夫よ」
サウラはそう言って彼らを宥めようとした。
しかしすぐに土の塊同士で戦いが起こり、セトに委ねられていた木の棒の奪い合いとなった。彼らは次々崩れた土になっていった。
あるものは胸を打ち、自らその姿を崩した。
最後にセトだけが取り残されて、悲しんでいるサウラのところにとぼとぼ歩いてきた。
「僕って本当にいるのかな?」
「いるじゃない」
「でも……」
そう言うとセトの体が崩れてきた。サウラは焦って、その表面に掴むように触れた。
「あなたはここに居るじゃない!」
「嘘だ。本当はどこにもいないんだ」
そう言い終わる前にセトは崩れてただの土になった。
サウラは地面に手をついて項垂れた。
「どうすれば皆幸せになれたの……」
彼女は静かに涙を流し、辺りは暗闇に包まれた。すると煌めく光が彼女を覆って、目が開けられなくなった。
彼女は目を開けると寝台の上にいた。隣には彼女の母親がいて悲しそうな顔をしていた。
「お母さん。私のこと愛してる?」
「愛しているわ」
「でも私いなくなるかもしれない。そうなったら初めからいなかったことと同じじゃない」
「そんなことない、お母さんは、神様はあなたの側にずっといる」
「そうかな」
「そうよ」
「私、お母さんに魔法をかける」
「どんな?」
「私に似た子供をまた産みますように」
「妹が欲しければ何人でも産むわ。あなたも仲良くしてあげて」
「いいよ」
それからサウラは静かに目を閉じた。それから彼女は目を開くことはなかった。




