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気づいた想い

読んでくださりありがとうございます。

 ロイは王宮官吏試験に向かうマリアを見送りながら、このまま彼女との時間を無くしてもいいのか考えてしまった。セグと三人で語らい合う前の短い間はマリアと少し会話をするのが嬉しかったから。


女性は苦手だけどマリアに対しては不快感がなかった。きっと彼女なら試験に合格するだろう。もうすぐ卒業式を迎え成人と見られる年になれば縁談だって持ち込まれるかもしれない。どうして今まで気づかなかったのか自分が信じられなかった。


「その分だとようやく自分の気持ちに気付いたってところか」

可笑しそうにセグが言った。

「ああ、遠くに行ってしまわないように手を打とうと思う」


「違うよ、跪いて愛を乞うんだ。マリアは君の気持ちに気が付いていないんだから」


「そうだな、そうするよ。卒業パーティーでエスコートさせてもらおう。ドレスも贈らないと」


「頑張れ、令嬢たちが大騒ぎするのが見えるようだ」


「セグはパートナーをどうするんだ?」


「一人で出るよ、欠席しようかと思っていたけど味方が一人でもいたほうがいいだろう。僕じゃ頼りないけど」


「そんな事はないよ、心強い。この気持ちを受け取ってもらえるだろうか。婚約してもらったら彼女をどうやって守ればいいんだろう。きっと令嬢たちの嫌がらせに合う」


「ロイらしくないな、氷の令息はどこへ行った?マリアは自分の身くらい自分で守るさ」


「守りたいんだ、傷一つ付けさせたくない」


「おやおや過保護が出動だな」


「なんとでも言え」


二人は教室に戻ることにした。


ロイは急遽ドレスを注文することにした。母が買っているのは一流のドレスメーカーだろう。まだマリアが了承もしていないのに母親の行きつけで買うわけにはいかない。どうするかクリスに相談してみようと思った。


申し込むには指輪も必要だと思うけれど、手も握ったことすらない人の指のサイズをどうすればいいのか見当もつかなかなかった。


それより申し込みを成功させないと、とロイの頭はそのことで一杯になった。



屋敷に帰りクリスに相談した。

「まずは申し込みをして受けてもらえたらどうするか考えよう。どんな場所で申し込むかも考えた方が良いし、花束は必要だ」

と至極まっとうなことを言われた。


やはりマリアは合格した。三人でレストランでお祝いをすることにした。

ロイが個室を予約したのでゆっくり出来る。お祝いはロイが名前入りのペンでセグが花束だ。


「「合格おめでとう」」

果実水で乾杯した。


「二人からお祝いしてもらえるのって本当に幸せ、ありがとう、おかげで学院生活が楽しくなったわ」


「僕達だって楽しかった、君が卒業してしまうのは寂しいけど誇らしくもある」


ロイがしんみりした口調で言った。


「君の活躍を信じている。君ならどこでもやっていけるさ」


二人の言葉にマリアは喜びを表にした


「頑張るわ、やっと働けるんですもの」


それから料理が次々に運び込まれ楽しい食事会は終わることになった。


セグは「これから人と会う約束があるんだ、二人はゆっくりしてよ」と言って

気を利かせた。




ロイは隠し持っていた薔薇を一本差し出しながらマリアの目の前に跪いた。


「君が好きだ。婚約してください」


急なロイの告白にマリアは驚いて固まってしまった。


「もっと素敵なところで告白しようかと思ったんだけど・・・僕のこと嫌い?」

下から見上げて来るイケメンのあざとい可愛さにうっとりしてしまった。


「嫌いなわけがないわ、でも婚約はまだ早いと思う」

真っ赤な顔でマリアが言った。


「どうして?」


「仕事がきちんと決まって働けるようになったの、自分の力を試してみたい。貴方まだ学生で後三年も卒業まであるのよ」


「君と会えなくなるのが辛いんだ。約束だけでもして欲しい、僕と婚約するって」


「約束はするわ。嬉しいもの。でも本当に婚約するのは早いと思う。貴族の結婚は婚約から一年後が普通よね。今は仕事がしてみたい」


「約束はしてくれるんだね、喜んでもいい?」


「ええ、宜しくお願いします」

ロイはマリアの手を取り指先に口づけを落とした。マリアはそれだけでまた真っ赤になった。


「嬉しいよ、卒業パーティーのエスコートをしていい?」


「ドレス持っていないから出席しないつもりだったの」


「ドレスは贈るから心配しないで、君と出られるなんて夢のようだ。返事をもらってから贈ろうと思っていたから注文していないんだ。これから買いに行こう」


「ありがとう。パーティーなんて贅沢だと思っていたの。出られるなんて思ってもいなかったわ。知ってる?ドレスって誂えると時間が凄くかかるものなのですって、人から聞いた話だけど」


「知らなかった、母上が頼んでるのは見てたけど関心がなかった。次のドレスは是非誂えに行こう」


「そんなつもりで言ったのではないの。正式な婚約者でもないのにお金を使っては駄目よ」


「僕の資産があるんだ。小さな頃にお祖父様から分けていただいた。だから心配しないで。これから投資の勉強も始めるんだ、父上が懇意にしている人が先生だから上手くいく自信がある」


「お金に目が眩んで一緒にいると思われるのは嫌なの。身の丈にあった物で充分嬉しいわ」


「わかった、正式に決まるまでは我慢するよ。でも贈りたくなったら諦めてよね。約束の印にお揃いの指輪を買いに行こう」


こうしてロイはマリアとお揃いの指輪を買うことが出来た。お互いの瞳の色である青のサファイアと緑のペリドットだ。石は小さいがまだ若いのでちょうどいいと思った。値段はもちろんマリアには教えないつもりだ。返されては困るから。



ドレスも買いに行った。ロイの色である青い色のドレスをプレゼントでき、ほっと胸をなでおろした。靴も合わせて貰う。

指輪を買う時にこっそり買っていたネックレスとイヤリングを見せると、マリアは大きな瞳をさらに大きくさせ驚いていた。



「当日は式が終わったら侯爵家へおいで。僕と一緒に帰ろう。メイドに着替えを頼むから何も心配しなくていい。ドレスと靴とアクセサリーは僕が侯爵家に持って帰っておく。指輪はずっと着けていてね。約束の印だから」


「色々なプレゼントありがとう、夢を見ているみたい。ロイから告白されるとか思ってもみなかったし、ドレスを贈られて卒業パーティーにエスコートされるなんて考えてもいなかったわ」

マリアは俯きながらやっと言葉を紡ぐことができた。


ロイに屋敷まで送ってもらい自分の部屋に帰ったマリアは、今日一日で起きたことを思い浮かべるだけで熱くなった顔の熱を冷ますのがやっとだった。


誤字脱字報告ありがとうございます。大変感謝しています。引き続きお楽しみいただけたらと思います。

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