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図書館の君 2

読んでくださりありがとうございます。

 学院の試験は余裕で一位を取っていたが、時々二位になることがある。気になり名前を気にして調べてみると、同じクラスのマリア・イアハートだった。図書館の君かと納得した。三位がセグ・スチュアートだった。

 上位三人は当たり前だが同じクラスだった。


セグは前髪が長く眼鏡をかけた男の子だった。表情は判りにくい。どこを目指しているのか話がしてみたいと思ったのでランチタイムに隣に座って話しかけた。



「君と同じクラスのロイ・ブリゼールだ。宜しく」

「セグ・スチュアートです。こちらこそ宜しく。何か用ですか?」

「用がないと話しかけてはいけないの?君がどんな人か興味が湧いたんだよ。いつも三位だろ」

「余計なお世話です。抜いてやろうと思っているのにどうしてか抜けないんです。このままではいられませんので頑張りますが」

「ただ君と話がしたくて話しかけた、いけない?」

「まあいいですけど」



打ち解けるとセグは意外といい奴だとわかった。爵位は継ぐが王宮でも働きたいそうで頑張っていると打ち明けてもらえるようになった。ロイの学院での初めての友だちだ。ぐんと学院生活が楽しくなった。



マリアとはあの時以来一言二言話すようになっていた。物静かな芯の通った人だなと思う。



女性で熱のこもっていない目をしているのは彼女くらいだった。十三歳位になると家のことを考えるのか、自分の未来の為なのか秋波を送ってくる。気味が悪いと思っているロイだ。


その点彼女は普通にクラスメイトとして話ができる貴重な存在だった。しかも成績を争えるライバルだ。気を抜くと追い抜かれてしまうかもしれない存在がいるというのは良いなと思っていた。




瞬く間に最終学年になった。マリアは王宮の官吏試験を受けると言っていた。

セグはもう三年学院に通ってから官吏試験を受けるらしい。

女子生徒は三年で卒業する者が多い。婚約が決まって嫁いだりするからだ。


「きっとマリア嬢なら合格出来るよ」

そう話すくらいには親しくなっていた。あまり話しかけているところを見られてマリアに迷惑をかけてはいけないのでセグと一緒に行動するようになっていた。


女性が怖いのは身を持って体験済みだからだ。

あらぬ嫉妬をされてマリアが虐められたりするのは我慢できないと思う。

未来を見据えて真っ直ぐに努力をしているろところがいいと思っていた。


マリアは友達がいない。しいて言うなら侯爵令息のロイと子爵令息のセグだろうか。三人でトップを独占しているのでたまに話すことがあるのだ。


女の子の友達もいれば良いなと思うけど、無理をして作ってもしようがないと思っていた。








王女様の周囲はいつも華やかだ。幸せオーラが漂っているので人が集まるのかもしれないと考えているマリアだ。

本当は何とかコネを手に入れたい者たちが近づいているだけだ。王女もそれをわかっていて付き合っている。

隣国に嫁いだ時の為の練習に丁度良いと思って思っていた。王宮は魑魅魍魎が蔓延る世界だ。学院など可愛いものだ。


心を許せる友を持ちたいものだと息を深く吐き出した。






ロイはいつしかマリアを視線で追いかけていた。何をしているのか気になるのである。但し自覚は無い。ロイを見ている者がそれに気付いた。

マリアが気付いていないのでこのままにしようと思っているが、自覚されると困る。下手に行動を起こしてキューピットなどになるのは御免だ。

観察者は静観を決めた。まだ時間はある。




ロイとマリアとセグは試験の勉強をするために王立図書館に来ていた。

学院の図書館でも良いのだが、環境を変えればまた勉強が捗るのではないかと提案したのはロイだった。


一度くらい青春を味わってみたいと思っていた二人は直ぐに了承した。

三人で一緒に勉強!!テンションが上がった。

学院より何倍もの書籍が圧倒するように並べられている。その中で頭を突き合わせて勉強できるなんて最高の思い出になる。


特にアリアは今年で卒業だ。三人の思い出としては心に残るものになるに決まっている。


その後は街のカフェでお茶を飲んで帰るつもりだ。侯爵家御用達のところがあるので、そこに行く事にした。そこなら誰にも見咎められない。

こんなに自分の行動を見られたくないと思っているロイは自分で自分が嫌になってしまった。

勉強中に小さな声でセグに打ち明けた。

「君は目立つからマリアさんにおかしな噂が立つのを恐れているんでしょう。自分を守るための行動じゃなくて、マリアさんを守るためなんだから良いんだよ」


「セグに言われると安心する。自分の事となると見えないものだ」


「僕達は婚約者がいないんだから、いらない醜聞は避けないといけないからね」


「ああ、特に女性は弱い立場だから守ってあげないと」


「君がそんなふうに言うとは驚きだ」


「僕は人でなしではない」


「そんな事は思っていない。女嫌いの噂があったから、意外に思っただけだ」


「それは否定しないよ」


その時初めて気がついたようにマリアが話に加わってきた。


「二人で何をコソコソ話しているの?私も教えて。男の子だけの話なら別の日にして頂戴」


「ごめん、領地経営関連の事を少し話していただけ」


「そうなのね、大変だものね、二人共」


「そうなんだよ、色々あるからさ」

何とかごまかし冷や汗を拭ったロイだった。


その後カフェに行き男子二人でマリアを送っていったのは言うまでも無い。



セグは友人二人の想いに気がついていた。しかしお互いに自覚がないのでこればかりはどうしようも無いなと静観を決め込んでいた。

ロイはマリアが毎日会えない存在になって初めて、気がつくのだろうかと思って見ていたのだ。その時は愚痴でも聞いてやろうと決めていた。



マリアの王宮官吏試験が近づいて来た。

クラスの雰囲気もざわつき始めていた。王女が隣国へ輿入れする事に加え、これで卒業を迎える女子生徒が多いためだ。

今年は卒業パーティーが一層華やかになるのではないかと噂になっていた。



試験当日マリアは朝早くロイとセグの激励を受けていた。


「マリアなら出来る。信じているから、力を出してきて」

「君なら大丈夫だ」


二人の応援が心に響いた。


誤字脱字報告ありがとうございます。大変助かっています。感謝しかありません。

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