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図書館の君 1

お読みいただきありがとうございます。

 一年前のお茶会で婚約者は見つけられなかった。ロイは氷のような顔をして立っていただけなのだから。

全員が獲物を狙うような目をしていると思い怖くなったロイは、主役の一人としてどうにか面目が立つことだけを考え耐え抜いた。


お茶会の後アルフォードが母に呼ばれ話をしているのを見たが、自分は何も言われなかったのでそのまま普段通り過ごした。

後で聞いたら可愛い女の子に出会ったらしく母上に報告をしていたらしい。

可愛い奴だと思ってしまった。微笑ましい。



貴族学院に入学しクラスは優秀なAになった。B C D と続く。

同級生には五歳のときに髪をもみくちゃにされた王女がいた。存在を認識した時点でげんなりした。こいつには振り回されないそう決めた瞬間だった。氷の仮面を付けて過ごすと固く誓った。


入学試験はロイがトップだった。二位が伯爵令嬢のマリア・イアハート、

王女は真ん中辺りの成績だった。

王城で家庭教師を沢山付けられているだろうにと思った。それだけだ。


クラスは高位貴族が多いので落ち着いた雰囲気だった。学院全体に護衛が配置され安全面で配慮がされている。個別にいる影や護衛で学院は密度が高くなっているだろうなと思ったが表には見えない。影に感謝しているロイである。



ジュリエットは第一王女だ、上に三人の兄王子がいる。皆で年下のジュリエットを甘やかすので多少は我儘だが人が困ることはしない、と自分では思っている。

この間隣国の第一王子と婚約が整ったばかりだ。ジュリエットはとても綺麗な少女だ。金色の長い髪はサラサラに手入れされ空のような青い瞳はぱっちりとしている。肌は透き通るように白くほっそりとした姿をしていた。


隣国の王子は五歳年上で大人だった。ジュリエット王女に跪き永遠を誓って手にキスを落としたのだ。それだけで赤くなった婚約者を大事そうに見つめていた瞳が忘れられない。国と国との婚姻なので沢山の贈り物が届けられたが一番のお気に入りはダイヤモンドの婚約指輪だった。国宝のそれは王宮に大切に仕舞われた。

婚姻の折には持っていくことになるが。




穏やかに学院生活が過ぎて行った。マリアは一年生の時から王宮に務めることを目標にしていた。家は貧乏な伯爵家で特待生枠で学院には通わせて貰っていたので、上位にいることは必須だった。いつもトップにいるのはロイという侯爵令息だ。何としても抜きたいと密かに闘志を燃やすマリアだった。



放課後は図書館で勉強をした。参考に出来る書物の数が遥かに多い。静かで本の香りのする大好きな場所だ。窓の近くの明るいところがお気入りである。



ある日高いところにある本を取ろうと背伸びをしていたことがあった。後ろからさっと取ってくれた背の高い男の子がいた。お礼を言おうと振り返ると氷の侯爵令息と言われているロイ・ブリゼールだった。小さな声で


「どうもありがとう」

と言ったら

「どういたしまして」

と言葉を返してくれさっと離れていった。



それからよく図書館で勉強をしているのを見かけるようになった。彼もコツコツ勉強をしているのだと思ったら更に負けられない気がしてきた。



実はロイも自宅での勉強から図書館で勉強をすることの楽しさを見出し始めていた。参考文献が豊富にあるし学生もちらほらと姿が見える。皆静かに過ごしているので気にならない。勉強に集中できているのではないかと思っている所だ。


ある日隣に人の気配がしたので驚いた事があった。マリアがペンを拾ってくれて差し出していた。


「ありがとう、気が付かなかった。助かったよ」


「どういたしまして、無くされなくて良かったです。あっその問題」


「どうかした?」


「難しいなと思って考えるのをやめていたところでした。そんなふうに解くといいんですね、ありがとう、参考になりました」


「凄いな、見ただけでわかってしまったの?」


「さっきまで格闘していたので。ごめんなさい勝手にノートを見てしまいました」


「いいよ、別に隠すものでもないし。でも負けてられないな、いつも二位か一位だよね」


「ブルゼール様には圧倒的に負けてます」


「たまに追い抜いて来るじゃないか、もっと頑張らなきゃいけないと思えてありがたいと思っている」


「私なんかが言うのもおかしいんですが、ライバルがいるっていいことなのかもしれませんね」


「私なんかなんて言わない方がいいよ、君は立派だと思うよ」


「じゃあ言わないようにします」

にっこり笑って去っていったマリアの後ろ姿をぼんやりと見ていたロイだった。



マリアも自分のことを認めてくれたロイのことを認識し始めていた。氷の侯爵令息と言われているけどそうでもないわ、いい人だったわと。



侯爵家嫡男で桁外れの美貌だ。冷たい態度でも女子生徒が狙っているのは知っていた。モテるのでその気になれば相手は選び放題だろう。友達として幸せになって欲しいと思っていた。



自分は勉強を頑張って王宮官吏になり、そのうち誰か釣り合う人と結婚するのだろうと漠然と考えている。伯爵家は幼い弟が継ぐ事になっていた。

あまり愛された思い出はないが、弟は可愛いと思う。働くようになれば仕送りが出来るので、弟にお金をかけて貰いたいと願うマリアである。











誤字脱字報告ありがとうございます。大変助かります。感謝に耐えません。

これからも読んでくだされば嬉しいです。

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