096:街道整備の順番と要らない町
【第三層群・1階ホール・六者会合】
「次に、移民の受け入れにも必要な、街道の整備計画です。」
マリーは机に地図を広げる。
「紙に書き写すのは自由ですが、地図自体をお渡しすることはできません。」
食い入るように地図を見つめる5人。
「このダンジョンがここですね。だいたい周囲20~30里程度へ水を引いて農地にしますが、入間は除きます。ただ、霞ヶ関に水を送ることは可能でしょうね。」
「国府台は遠すぎるな。」
主油正。
「距離も遠く、国府台は丘の上ですから、当面は難しいですね。で、このダンジョンから5方向に道があるのですが、これを順番に整備して街道にします。まず最も近い西の入間方面。この道を整備すれば、武蔵からは砂漠の横断を避けられます。」
「近い順なのはしかたありませんね。騎馬で駆け抜けない人は毛から武蔵へ向かう街道を使うよう手配しましょう。」
「二番目に近い町は、逆の東方向のこの町ですね。」
マリーはダンジョン東方の町を指す。
「ああ、これ、東の連中が勝手に作った町なので、潰して貰って結構。」
「別に小田家の物でも無い。」
岡本主油正も小田右京亮も、自分たちの町では無いと述べる。
「総では無いのですね。なら、次は、中山路を北西の毛と南東の総方向。これで皆さんそれぞれの国までの移動が容易になります。ただし騎士団を増やしてからの話ですが。」
「砂漠の旅は辛いからな。道中の補給を考えたら全員騎馬と言うのも難しいし。」
「馬獣人で単騎駆けすれば大丈夫ですよ。馬獣人は騎馬と護衛を兼務できますから。」
「対馬守殿、さすがに、それは特殊例だぞ。馬はなぁ……中山ダンジョンで、たまに馬が現れるんだが、ダンジョン外に連れ出すことが出来ないから勿体ない。」
「中山競馬場?」
「いや、ケイバジョウとかいう物では無く、普通の南瓜畑だが、どうも最近作物の育ちが悪い。」
「それ、ダンジョンの扱いを間違っているかもしれませんね。主油正殿、その件に関しては後日ご相談したいと思いますが。」
「ほう。」
「確か、螻蛄を増やすと良いとかなんとか。調べておきます。」
「ダンジョンの扱いは分からぬ事が多いからな。」
「東への街道は4本目にしましょう。東の拠点を占領するか壊すかして、織田城方面へ街道を延ばします。さすがに織田城はダンジョン影響圏に組み込むには遠すぎますから、途中からは東の国で整備して貰わないといけません。あと、北東は最後で良いでしょうね。」
「毛の東側、下毛地方はさほど栄えてはいませんから、後回しで良いでしょう。」
ヒトには下毛は無いが、犬猫などの綿毛が下毛で鳥が毟って巣に敷き詰めたりする。ただし、ここでは地域名。
「実は、葛飾の北部が完全に荒廃し、猿島・豊田・岡田の3郡も衰微しているため、我が総北端の結城が飛び地状態になっている。」
岡本主油正が地図を指しながら言う。
「結城はこれですね。北東百里の町と。」
「北東も街道が整備されれば、国府台からこの町を経由すれば安全に移動できる。急ぎはしないが、北東方向も忘れず整備してほしい。」
「わかりました。とはいえ、一番近い町まで80里くらいありますからね。孤立しているなら、結城側から街道を作るのも難しいでしょうし、すぐにとはいきません。」
「将来は相撲へも道を引くのか。」
大膳亮入道が問う。
「わたしが街道を作ることが出来るのはダンジョン影響圏だけです。影響圏は街道に沿って可能な限り広げますが、そこから皆さんの国までは、皆様で整備していただきたいと思います。」
「やはり出来ぬか。街道は軍用にもなるゆえ、相撲の防衛には良いことだが、物流には不便だな。相撲西の山岳地帯にある地獄谷を何とか出来れば良かったが。」
「相撲の西ですか……さすがに遠すぎて無理ですね。」
この地域は砂漠なので大井川のような難所となっている川は無いが、箱根に相当する地域にはろくでもない火山性のダンジョンが居座っていて難所となっている。




