093:相撲のラクダ騎兵
【コアルーム】
「館長殿、道の無い南西方向より使者1騎、直接砂漠を越え接近中です。」
ミントの本体が報告する。
「南西? 府中から霞ヶ関を通らず直行したのか。」
「南西方向は道も無く砂漠が広がっているため、監視は最低限です。このため少人数だと発見は遅れます。」
「無限の労力を投入するわけにも行かないからなぁ。マリーさんは東門だったか。織田信治の受け入れを終えたら……南西には門は無かったな。」
「門を作りますか。」
「いや、やめておこう。ダンジョンエネルギーが勿体ない。門が無いから引き返したりはしないだろうし。」
「城壁に門が1つも無いとは思わないでしょうし、上小町か吉敷町に向かうでしょう。」
西門と南東門のこと。
「城壁を見た使者がどちらへ向かうか見てからラージャ将軍が馬で迎えに行く。としよう。」
やがて、使者は城壁の近くまでやってきた。
「カメラの解像度が足りませんが、どうやら、乗っているのはラクダです。」
画面を見たミントが言う。
「ラクダっぽい馬、例えばピーエムオケラオーとかではなく、ラクダそのもの?」
「はい。コブがあるラクダです。この辺りは砂漠なので有用ですが、どこから入手したのでしょうか。」
「江戸時代にラクダは居なかったからな。まぁ異世界だし事情は違うんだろう。」
なお、江戸時代にラクダは居ました。
【西門前、上小町】
「相撲の茶坊主、大膳亮入道照頭だ。」
名前通り禿頭の僧侶。
「図書館都市ダンジョン、ラージャです。こちらはハルナ。相撲から来られましたか。」
ラージャが下馬して挨拶する。
「ふむ、内薬佑殿は敗走したか。」
「分かりますか。」
「東の者とは言葉が違う。」
東の方言はアクセントが無い。
「筑波軍は本隊・別働隊とも、ほぼ全滅させました。それにしても、相撲は毛や総より遠いのに、よく同じ時期に来ることが出来ましたね。」
「筑波内薬佑殿が大量に傭兵や冒険者を集めていたから、相撲守様は、戦いが終わるであろう時期を見計らって、結末に関わりなく訪れることが出来るように手を打たれた。」
「ここを攻める、と予想していたのですか。」
「いや、そこまでは確定できない。いくつか候補はあったし、未知の場所という可能性もあった。急に天を突く塔が現れたから、こちらを目的地にした。砂漠で道は無いと言っても、相撲守様はそういうこともあろうかと、あらかじめラクダを用意されている。」
「用意が良いですね。」
「段取り八分。と言うからな。おそらく総と毛は、この塔が現れてから、慌てて駆けつけたのであろう。相撲守様からは、個別交渉でも会議が行われる場合でも対応できるよう、あらかじめ指示を戴いておる。」




