092:織田家の使者?来訪
【ダンジョン東方6km・涸れ谷「綾瀬川」】
「ここから先は図書館都市ダンジョンの影響圏です。名前とご用件をお願いします。」
メードのアンが若武者に問う。
「小田右京亮藤原信治。父の仇、筑波のガマガエルがこちらに攻め込んだ後、異変があった模様なので、もしやガマガエルが敗れたのではないかと思って自ら駆けつけた。」
小田信治は下馬して答える。
「ダンジョンマスターに確認しますので、しばしお待ちください。」
【コアルーム】
「織田だと! ノブハルって誰だったか、織田信長の一族に居たような……。」
少し興奮するダンジョンマスター。なお、織田信治は織田信長の弟だが、もちろん別人。
「この世界、江戸時代なのか戦国時代なのかよく分かりませんね。もっとも、江戸時代にも織田家の大名はいくつかありましたが。」
「昔は手配写真もDNA鑑定も無いし、普通は族滅と言っても完全な根絶は困難だからな。根絶されたの羽柴家くらいか。有名なところでは。」
「それに、日本では親子兄弟でも別陣営というのは割と普通ですからね。わたしだって敵は皆殺しにしますが、餓鬼以外なら敵で無い者まで殺すつもりはありません。」
「ああ、競馬の馬主兼騎手だった西郷従道は西郷隆盛の弟だった。とか。」
「それを言うなら海軍元帥あたりでは無いかと。騎手というのは教科書にも出てこないかと思われます。」
「とにかく、織田なんとかには、こちらへ来て貰おう。さすがにコアルームに招き入れることは出来ない(固有法則で部外者立入禁止)が、テレビ会議なら出来るだろう。」
「会議が終わってから。です。今日はゆっくり休んでもらいましょう。」
【ダンジョン東方6km・涸れ谷「綾瀬川」】
「ダンジョンマスターの許可が出ました。どうぞお通りください。」
アンが小田信治にダンジョンへの道を指し示す。
【ダンジョン東方2km・涸れ谷「芝川」】
谷には真っ直ぐ橋が架けられており、正面の城門へと続いている。
「ガマガエル、どこへ消えたんだろうか?」
小田城からの道中で敗残兵は見なかったし、小田右京亮があたりを見ても、戦闘があった様子は全くない。
【ダンジョン東門:東町】
「ようこそ図書館都市ダンジョンへ。織田右京亮様。このダンジョンの書記長にして対外的な代表、マリーと言います。」
「あの、ガマガエル、いえ、筑波内薬佑は、どこへ行きましたでしょうか。」
「お父上の仇でしたね。ガマガエルは焼き尽くしました。さすがに、生け捕りにして鏡張りの箱に押し込める余裕はありませんでした。」
仮に蛙獣人であっても、その方法でガマの油は採取できない。ましてや筑波内薬佑は種族としては人間である。
「かたじけない。」
「今、武蔵と毛と総の使者が来ていて、このダンジョンのこれからの方針について話し合います。東の意見も聞きたいので同席するつもりはありますか。」
「許されるなら是非。」
マスターやマリーは「織田」と思い込んでおり、実は「小田」であることに気付いては居ない。




