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090:浅ましきアサマ

【北西門外、中山ちゅうざん路】


 ラージャが中山路を作成していると、白鉢巻きの馬獣人に乗った、女物の服を着た大きいタヌキがやってきた。これが毛の国の使者なんだろう。

「ようこそ図書館都市ダンジョンへ。ラージャと言います。以降よろしく。マリー、あ、側近書記セクレタリー殿が待っていますのでご案内します。」

「はい。群馬ぐんま郡司ぐんじ、高橋対馬守(つしまのかみ)です。よろしく頼みます。」

 狸は人間に化けると言うが、実際には化けないのか、化けるのに何か条件があるのか、別に化けなくても良いと思っているのか、狸のまま。

 ラージャはハルナに騎乗して狸とともにダンジョンへ戻る。ミントの分身達は後片付けの後で引き揚げ。


「ハルナじゃないの。」

 馬獣人が声を掛ける。

「浅ましき大食い馬のアサマ!」

「あなたにだけは言われたくはないわ。どうせ、ここでも『えびすこを決めて』店という店を出禁になっているのでしょう。」

 食べ放題は無いので、酔って暴れたりはしない以上、別に出禁にはならない。

「俸禄100俵5人扶持だから食べるには困らないかな。って。」

「その俸禄って、槍持やりもち中間ちゅうげん下女げじょを雇う分じゃないの。全部ハルナが食べて良いわけ?」

一騎役いっきやくで本来200石以上の騎馬身分のさむらい相当なので軍役は構わないって。それに、アサマだって大食馬四天王の一員かな。」

「わたくしは違いますわ。四天王ではなくハルナとアカギとミョウギの3人でしょ。毛の国で聞いたらみんなそう答えるわ。ミョウギは牡だからまぁ良いとして、食べ過ぎる女の子は嫌われますわ。」

 アカギも牡の名前だが、このアカギは牝。

「どの口が言うかな。アサマだってシラネやミカボなんかより圧倒的に大食いじゃないの。それに、あたしは走るの速いから、その分たくさん食べるだけ。それにあたしの方がアカギのオバサンより若いから食べる量が同じでも大食いでは無いし。」

「確かに、ハルナが足が速いのは認めるよ。でも燃費悪すぎない、この馬。だいたいねぇ、これの父親ってのが、の国一番の大食いとして、動物の馬くらいに食べた挙げ句に国主こくしゅ上野介こうずけのすけ様から上野介の名乗りまで許された小栗上野介。そりゃ食べるわね。」

 と、ラージャにも声を掛けるアサマ。の国では、何か一芸に優れた逸材に上野介の名乗りを認める。AKO47に襲われたマナー講師も上野介だが、これは世界が違う。

「小栗って、ハルナ、あなたの父上はマスターが言っていた、灰色の怪物、オグリタダマサなの?」

「いえ、父のいみなは明かせませんが、忠順ただまさではありません。」

 オグリタダマサは馬獣人ではなく競走馬。小栗忠順は幕末の人間。どちらも異世界のもの。

「名字があるなら、今後は小栗氏って呼んだ方が良いかな。」

「別にハルナで良いですよ。」

 馬獣人の小栗上野介と言えば、体重2倍の大食漢力士以上に食べるなど数々の伝説がある。今の世代は四天王だか上毛三山だか拮抗する大食いが複数居るが、前の世代では彼の独断場だった。


「ほほ、小栗上野介(こうずけのすけ)の娘さんね。あの人とは長い付き合いだからなぁ。の者が居るなら話は早い。道中いろいろと話を聞かせてくれないかな。」

 ごく自然にスパイ活動をする狸親父……この場合は狸オバサンか。狸の寿命は10年、馬の寿命は30年だが、獣人は別にそこまで短命ではない。


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