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009:本を焼く者は、やがて人も焼くようになる

※R-18G描写は省略していますが、海賊が処刑されますので、ご注意ください。

【図書館前広場】


 番頭が燃料商と話している。

「『石の神殿アスカ』の邪教徒によると、ダンジョンは生贄を捧げると成長するそうだ。」

「……『鬼の俎』で黒曜石のナイフを使って生きたまま心臓を取り出して、血を『酒船石』の水路に流すそうですね。」

「石の神殿なので、石の上で石により殺すのが良いとか。このダンジョンは燃料産出型だから、生贄は焼き殺すのが良い。」

「火あぶり。ですか……。」

「連中は『亀石』に多数の生贄を捧げ、敵対する都市に『亀の瀬』を形成し泥沼に沈めた前科がある。さすがにこのダンジョン……名前はまだ無いか、こんな遠くまでは手を出して来ないし、ここみたいに丘の上にあれば大丈夫だが、とにかく、生贄は有用だ。とはいえ、殺人は好ましく無い。」

 アスカはその名前によりアステカの要素を持ってしまい生贄を多用。これがダンジョンエネルギーの供給となって急速に発展しているダンジョン都市である。商人達の組合がある『商都梅田』も名前により商王朝の影響を受けているが、酒池肉林程度であり、姜族(トーテムは羊)の代わりに羊獣人を生贄に捧げたりはしておらず、兎獣人を縛って引きずるくらい。

「冒険者に依頼して賞金首の賊でも捕まえますか。Alive Onlyで指定して。」



【図書館前広場】


 しばらく後、例の燃料商が、紋付き羽織袴で腰に大小の刀を差した偉そうなオッサンを案内してきた。数人の役人が1人の囚人を護送している。

「ふむ、ここが燃料庫ダンジョンか。越前屋、生贄を捧げると成長するとはまことか?」

「お代官様、確証は無いですが、他のダンジョンの例から見て、事故であれ生贄であれ、命を代償とすることでダンジョンは大きく成長すると思われます。」

「ちょうど海賊を捕まえておる。海賊は普通は縛り首にするものだが、このような田舎ではきちんと処刑方法を用意するのは難しいため、火あぶりにすることに問題は無い。そもそも、ここには絞首台が無いからな。」

 この地域の死刑システムは絞首刑があるなど江戸時代とは異なるが、火あぶりになるのは同様に放火犯。海もないのに「海賊」と呼ぶ理由は不明。なお、江戸時代の代官は死刑の権限など無いし、問題を起こすとすぐに罷免されるが、この地域の「代官」はあまりに遠隔なので裁量は大きく、事実上の「任期付き非世襲領主」となっている。


 オッサンの命令により、役人達が泥を塗った縄で海賊を敷地内の金属柱に縛り付ける。図書館に処刑台があるはずもなく、異世界での用途は国旗掲揚台だが、ダンジョン構造物であり焼いても破壊されないため便利。

 海賊の足元に燃料本が積まれ、火が放たれ……


(R-18Gシーンは省略)


 海賊の死体は、すーっと薄くなり消えた。

「これでダンジョンが成長したら、紙以外の燃料も産出するだろうか。」

 番頭に対し燃料商は言う。

「薪だと材木商の奴等が首突っ込んで来そうですから、石炭が良いですね。『軍艦端島』は地下にソンビの大群が居て危険すぎ石炭は採れませんし、『コールマイン炭鉱』は、わたくしも行ったことが無いくらい遠方ですし。」

 燃料商は英語を知らないため、そのダンジョン名が「炭鉱炭鉱」とおかしいことには気付かなかった。



【図書館開架書庫兼閲覧室】


「なかなかよさげな部屋だな。」

「お代官様、今後、賊の処刑は、このダンジョンで行われてはいかがでしょうか。」

「もし、このダンジョンが成長するのなら、いっそ、村をこちらに移すのも手だ。」

「ダンジョンはゴミが自然に消えるという利点がありますけど、薄暗いじめじめした所でモンスターが湧くため、あまり住むには適しません。それでも、商都梅田は、大部分が地下で薄暗いじめじめした所でモンスターが湧きますが、多くの人が住んでいます。

 一方、このダンジョンは明るく乾燥しておりモンスターも全く居ません。」

「越前屋よ、そちも悪よのぉ。」

「いえいえお代官様にはかないません。」

 ダンジョンは別に燃料商越前屋の所有物ではない。


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