083:次は木材
【コアルーム】
「衣食住。と言うが、住宅は図書館を召喚すれば末永く使える。食料と衣類は田畑で栽培。となると、あと不足するのは……。」
「鉱物資源と木材。ですね。」
「鉱山と森林か。鉱山は地質自体の問題だから、ダンジョン影響圏を広げて地質図作るしか無いかな。」
「一般には鉄や銅は鉱山ダンジョンでモンスターからドロップするそうです。例えば金属製のゴーレムが居て、額の『しんり』という文字を2つ消せば金属塊が手に入る。とか。」
「つくづくダンジョン依存だなぁ。水と空気もダンジョンに依存しているんだろ。」
「空気に関しては、この世界の住民は気付いていないと思いますが。なお、ダンジョンコアも鉄ニッケル合金ですから、ダンジョンを攻略すれば鉄が手に入りますが、効率としては論外でしょう。」
「鉄は当面は購入する方向で行くか。そう多量に使う訳でも無いし。で、木材。」
「砂漠なので明らかに木材は不足しているようです。」
「図書館の備品として本棚や机を召喚し、それを解体すればチーク材の板は手に入る。でも無駄が多いな。」
このダンジョンでは木製家具はチーク材になってしまう。ついでに、菜種油や胡麻油もエゴマ油になる。
「家具・備品は本に比べダンジョンエネルギーが割高になりますからね。名前付きモンスターが部屋に置く程度なら誤差ですが、各家庭に置くとか外部に売るとかなるとコストが許容できない水準になります。」
「時間はかかるけど植林が一番良いか。」
「木材の生産ですが、理論上は、紫蘇(修羅)のチークを召喚し名前を付け、『本体』の植物を呼び出し、それを増やす。というのが最も低コストです。しかし、チークは熱帯植物ですから越冬できません。」
「このあたり、冬は冷えるのか?」
「ダンジョン開設以来の太陽と気温の観測データ、入植者や冒険者の証言から見て、冬は確実に氷点下。夏は軽く30度を越えると予想されます。北海道に温室併設の図書館はありますが、熱帯樹木の大量栽培が可能な規模はありません。」
「酷い気候だな。シベリアよりはマシだが。ダービー牝馬のヴァダーはロシア語で水って意味だけど、ロシアの水なんて餓鬼が飲むような蒸留酒なんだろう。」
「ダンジョン影響圏内は多少は気候がマシになります。それでもラージャは冬は活動しづらいかもしれませんが。」
「もしチーク材を量産するならば?」
「高さ50m程の巨大温室を作って、冬期は保温する。というあたりでしょうか。」
「飛行船格納庫より背が高いな。」
全長240m・幅70m・高さ40m程度。世界大戦の戦利品として今は無いドイツから持ってきた物。
「ダンジョン構造物では、あまり複雑なものは作れませんから、現時点では長期的な課題。といったところでしょう。土をダンジョン構造物にしても透過しませんからガラスの代用にはなりませんし。」
「実際、城壁も道路も田んぼの底も、砂漠の土をダンジョンの力で成形してダンジョン構造物にしただけだからな。」
「見た目が泥っぽいのが問題ですね。」
「それなら、温室無しで林業で使えそうな樹木は?」
「もちろん水を与える前提ですが、寒暖差が大きく、夏はブナには暑すぎ、冬はシイ・カシには寒すぎるため、クヌギやコナラといった落葉広葉樹、あるいは杉などが向いている『暖帯型落葉樹林』と思われます。」




