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081:巨大タライでバケツ稲

【西門外】


 入間いるま方向へ向けて、ミントの分身3体が測量を行い、それに基づきマリーが農地を生成していく。ダンジョンマスターは安全上入植者とは直接会わないので、マリーが入植者の世話役、岡田太郎左衛門と会っていた。

「書記長様、おかげさまで田畑の開拓は順調だ。皆、自分の土地が持てると頑張っておる。」

甘藷サツマイモは皆さんの生命線ですからね。最優先で植え付けをお願いします。『ご飯が無ければお菓子を食べればいいじゃない』なんて訳にはいきませんから。稲も準備が出来次第田植えです。」

 それはMarieで、しかも史実の発言では無い。このMary(普通はメアリーと読む)とは綴りすら違う。

「それにしても、道も水路も真っ直ぐだな。」

「ダンジョンの機能で土地を成形して道と水路はダンジョン構造物に指定しますから、真っ直ぐな方がエネルギー、いえ、力の節約になるのです。大急ぎで田畑を作らないといけませんから。」

「それから拙者せっしゃ達が土を耕して肥料を混ぜて苗を植えると。」

「そのあたりの作業は、少なくとも今のところはダンジョンの機能では出来ませんから、皆さんにお願いするしかありません。作業手順は農業高校の教科書あたりが分かりやすくて良いのですが……。」

「すまぬ。文字すら読めなくて。」

「いえいえ、いきなり1000人も連れてきた代官が全部悪いのです。数百人に手取り足取り指導なんて無理です。」



【鴨川の西】


 農業立地論(チューネン圏)を参考に、城壁周辺は野菜畑を予定。その外側に水田を作っていく。

「これが『水田』なのか。府中ふちゅうにはあると聞いたことはあるが……。普通は稲は桶で育てる高級品だ。」

「本物の水田は底が粘土層ですが、この水田はダンジョン構造物のタライです。要は巨大なバケツ稲といったところです。」

「化け?」

おけで稲を育てることです。田んぼ1枚ごとに1町歩とか2町歩とかの巨大なタライになっています。畑や果樹園は底が要りませんからその分安上がりですが、米は重要で事実上通貨としても機能しますから。」



【南東門外2里・岸村】


 ダンジョン南東2里、岸村。開発の軸となる中山ちゅうざん路の位置を確定するため、ダンジョンから一直線に杭が並んでいる。ミントの分身が3体で土地の測量を行い、それに合わせコアルームでミント本人が田畑と水路を作っていく。

「ほんと、何も無いな。」

 騎士団の突撃大将、岸本会見郡司きしもとあいみこおりのつかさが言う。岸本はがっちりした体格の浅黒い髭男。

「最初はそういうものです。それにしても惣領に知行地か。長い道のりだったな。」

 岸田添下郡司きしだそえじもこおりのつかさは騎士団の金庫番にして渉外担当。ちょび髭で外観はヒトラーと東条英機の合成。200俵取りの重臣はこの2人。

 頭は団長の岸播磨介きしはりまのすけ含めちょんまげ。叩いたら因循姑息の音がするだろう。このダンジョンは旧弊な社会システムを採用したので別に構わないが。



【北西門外】


 の国へ向かう北西方向も、中山ちゅうざん路の位置に杭が並んでいる。ラージャとハルナ、ミントの分身3体が測量し、ラージャが水田や水路を生成。

「騎士団が1つしか無いので、西以外の街道は2~3里だけダンジョン影響圏に組み込んで整備するとのことです。」

駈歩かけあしだとそれくらいの距離になるし、そんなものかな。さすがに襲歩しゅうほなんて。」

「疲れる?」

「はい。普通は何十日かに1回がせいぜいです。カスミ達追っかけるのと餓鬼が来たときと、2回も全力疾走したので、もう当面ダメ。」



【東門外・芝川左岸(東岸)・南中野】


 芝川と命名された涸れ谷にダンジョン構造物の橋が架けられ、同じくミントの分身3体が測量し、メードのアンが田畑を作成。なお、サピエン先生は医者と教師の仕事が忙しく水田作りはしていない。ミントの分身は4体増えて計12体。

 別に話し相手も居ないのでアンは黙々と作業を進めていく。



【北東門外】


 こちらも涸れ谷にダンジョン構造物の橋が架けられているが、指揮する者が居ないため田畑は後回しになっている。分身と感覚を共有できるミントならともかく、ダンジョンマスターがコアルームからミントの分身に遠隔で指示を出すのは危険すぎる。



【ダンジョン南西方向】


 唯一、こちらだけは門も無く何も手が付けられていないし、当面は放置予定。

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