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007:そうだ、本を焼こう。ついでに新聞も焼こう

【コアルーム】


「誰も文字が読めないなら本には燃料としての価値しか無い。か。」

「でも、燃料としてあっさり焼いてしまうと、収支が合わないんですよね。本だってタダで召喚は出来ませんから。ましてや本より高コストの本棚を次々補充していたらダンジョンの存続にも関わりかねません。特に、追加の家具は、なぜか合板などではなくチーク材になるので余計に高コストです。」

 マリーは続ける。

「まず、このダンジョンで入手可能な品物は、異世界の『量産品』だけです。ただし、手工芸品でも大量に生産されていれば、それっぽいものが入手出来ます。この図書館ダンジョンの場合、印刷された本と、手書きでも大量に複写された本が入手可能ですが、日記など1つしか無い物は入手出来ません。」

「分かったような分からないような」

「そして、多数の異世界で大量に出版された本ほど入手は容易になります。文化的な影響で日本語件の本が『入手しやすい』という影響はありますが。」

「世界的ベストセラーなら燃料としても十分割に合う。ってことか。」

「おそらく。では、あらゆる本の中で一番コストが少ない本を検索し、召喚してみます」

マリーがそう言うと、机の上に1冊の本が現れた。

「え~と、『油火腿に伊作が生まれ、伊作に弥瘤が生まれ、弥瘤に湯田とその兄弟達が……』?」

どこぞの世界で妙に翻訳されたためか、意味不明の文字列が記されている。

「かなり多くの異世界で一番普及している本ですから、とことん低コストで入手できます。世界と国によっては禁止されていて、持っているだけで死刑だったりしますが。」

「ヨシ!」

 誰も文字が読めない世界では禁書も何も無い。

「2番目に低コストの本がこれですが、それでも桁違いに高くなります。」

 マリーは赤い表紙の小型の本を示す。表紙には「毛主席語■」、最後の文字は「ヨ」の下に「求」みたいな感じでダンジョンマスターは知らない漢字。



【図書室】


 マリーは自分で読む用に低コストの本を召喚し、焼くのは勿体ないのでコアルームに保管しつつ、余裕エネルギーでせっせと「焼くための本」を召喚。

 読む用の本だが、ある程度発行部数が多い本だけでも莫大な数があり、分類番号002(知識・学問・学術)で止まっていて、情報科学(分類番号007)すら到達していない。内容を絞り込んで召喚出来るにもかかわらず、端から召喚しているのが悪いだけだが。


 図書室で焼かれなかった本は勿体ないのでコアルーム奥の空いている居室に押し込んだ。冒険者達は、時々やってきては焼く用の本を集めて運び出している。しかし、本という物は焚き付けには向いているが、燃料としては火力に持続性が無く均一に燃えないという欠点がある。

 そんなある日、例のごとく雑多な本を読んでいたマリーが言う。

「異世界には『新聞薪』というものがあるそうです。」

「しんぶんまき? 寿司か?」

 新香巻きでは無い。

「え~と、コアを検索っと……」

 マリーが召喚をかけると、キャンプとか防災とか東京市警とかいった本が数冊召喚された。

「異世界には『新聞』というものがあり、それは毎日何百万部も発行されているそうです。新聞を加工して作るのが新聞薪。本の欠点を補う燃料です」

「薪として使用可能ということか。」

「新聞自体はПравдаでも参考消息でもDelhi Morning Sunでも焼売新聞でも紙媒体で大量にあれば何でもかまいません。とはいえ、わたしは新聞薪なんか作る暇があれば本を読んでいた方が良いですし、いくら『猫の手も借りたい』とか言ってもマスター1匹では追いつきません。冒険者に自分で作らせる方が良いでしょう。」

「新聞薪の作り方をコピーして冒険者に作らせ……無理か。この世界の人間は文字が読めない。絵で表記するか。」

 東京市警の防災パンフレットには新聞薪の作り方が詳しく写真で表現されていた。

「水は世界コアからの供給に制約され潤沢には使えませんが、新聞薪の生産程度なら十分です。」


 「焼くための本」は、印刷と手書き写本で有史以来累計100億部とも、もっと多いとも言われ、毛主席語録の10倍を越える。

 一方、クルアーンは、広く無償配布したり、「使い潰す」使い方をされていないことと、アラビア語以外は「翻訳」ではなく解説書と扱われることから、発行部数は毛主席語録よりも少ない。


(明日は休載です)

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