068:図書館召喚作業
【コアルーム】
「さて、図書館を召喚していくか。マリーさん、帝国図書館は召喚できそうか。」
「まだ出来ませんね。まさか『国内全ての図書館を召喚すること』なんて条件は無いとは思いますが。あるいは、関西館・台湾館・子供図書館もセットで召喚しないといけないとか。」
「出来ないなら、まず樺太から南洋群島まで片っ端から……。」
「少しはエネルギーを残さないと非常時に対応できません。マスター、まず全63道庁県市……残り61ですか。それを召喚、続いて大きい市立図書館を適当に選びますから、どこにはめ込むか決めて下さい。底面が大きい順に積み上げる方が見た目のバランスが良いと思いますし、層群間エレベーターの取り付けも容易でしょう。」
55都道府県ではなく63道庁県市なのは、六大都市が特別市で県とは別になっており、大韓帝国は存続、台湾5県3庁・樺太庁・南洋庁がある世界に準拠しているため。なお、庁というのは要するに人口希薄の県。
「第三層群が事実上の司令部だから初期の3層群を一番上に置いておいて、第四層群は地下も無くバランスが良いから一番下にして、……第7層群は樺太、北海道、青森、岩手。」
「ダンジョンの高さが305mを越えました。」
突如ダンジョンコアからアナウンスが流れる。
「こういう評価項目もあったのですね。」
「横浜ライトハウスタワーだったか阿倍野テンカスだったかを越えたんだろう。次は浅草十二階……ではなく押上廿九階でも越えたら何かあるかな。」
「確か高さ666mでしたか、そのあたりだったと思います。」
「マリーさん、なにか長さ200m越える異様に細長い図書館があるぞ。」
「それは召喚を止めますか?」
「いや、それぞれデザインが違う建物を積み重ねたら、どっちみち乱雑になるのはしかたない。そのまま第11層群で行こう。長軸を東西方向に合わせて、南北に長い建物は回転させて、短辺の長さ順になるように、秋田、山形……。」
「栃木、群馬……本館が無い県が……。」
「熊谷と久喜を2つ並べて押し込みましょう。幸い高さは同程度です。」
「道庁県と特別市は全部召喚。一番小さいのは第36層群と37層群で、どちらも短辺30mと。特別市成立前は同じ府だよな。これ。」
「人口は特別市最少で一部の政令指定都市以下ですから。なんて言うと婉曲な皮肉で罵倒されそうですが。」
人口でも経済規模でも札仙広福台の方が。なんて言ってはならない。
「政令指定都市の市立図書館を順次……第70層群はタワーマンションだな。第三層群より背が高いのは初めてか。第76層群は図書館率が低すぎて召喚困難? また埼玉か。」
「床面積で1割以下なら仕方ありませんね。地上と地下で合計70mくらいあるのですが。でもコストかさむとはいえ召喚できるだけありがたいと思わないといけません。」
「幅が30m以下は層群間エレベーターの取付が面倒だから除外するか。政令指定都市では宇都宮だけ足りないか。」
「第三層群が幅56mですから、どっちみちそれより狭い建物は取り付け部分が必要になりますが、第一・第二層群も南北30m程度なので、その程度の基準で良いでしょう。」
「マスター、県庁所在地だと、けっこうサイズでの除外が出てきますね。豊原・盛岡・福島・水戸……。」
「今回は召喚せず、後日、塔の隙間を埋めるのにでも使おう。」
「世界のコアからのダンジョンエネルギーは高さ依存ですから、隙間に埋めるなら次回で良いでしょう。」
「ダンジョンの高さが3048mを越えました。」
兵庫県から第105層群を召喚したところでダンジョンコアが言う。
「玉山を越えた? いや、あの山はほとんど4,000mあるから、富士山越えだな。」
「そもそものシステムがヤード・ポンド法なのでしょう。最初システムは英語でしたし、入門書がダンジョン・ワンノーワンっていうのもアメリカの習慣ですし。つまり1万フィートということでしょう。」
「台北ワンノーワンって何かの入門って語呂合わせで101階にしたんだろうか。」
「第128層群キュポキュポ川口、第144層群パトリシア桶川……複合施設は規模は稼げるが、図書館と言えるのか……ま、ヨシ!」
「いっそ、越谷のオカダヤポンドタウンにも市立図書館があれば良いのですが。ただ、大相模調節池は浅いので池では無く沼では無いかとは思いますが。」
「召喚出来てもサイズ的にはみ出すんじゃ無いか?」
「召喚可能な『図書館付きタワーマンション』と召喚出来ない建物の違いは何なんだろう。」
「どうも曖昧ですね。ある程度の規模の公立公共図書館って程度のようです。図書館付きマンションでも民間設置の物は召喚出来ませんでしたが、召喚自体出来ないのかコストが跳ね上がるのか何か解放条件があるのかは分かりません。」
「南洋庁はサイパンの243層群くらいか。大きい図書館は。お、マリーさん、分館も個別に召喚出来るぞ。」
「本館があれば分館の本も召喚できますから、蔵書という点では意味は無いのですが、高さを稼ぐには有効ですね。東京市とか200くらい図書館ありますから。」
【ダンジョン外側荒野】
塔の真ん中当たり、あるいは上の方、部分的に煙がかかると、その中で層群が追加され、それより上がさらに上へ持ち上げられていく。
「太郎左衛門、どんどん高くなるなぁ。」
「播磨介様、いったい何千尺あるのやら。」
「それにしても、儂らはとんでもない所に来てしまったようだ。」
「全くです。」
世界大戦でアレマン(ドイツ)・オーストリア・オスマンが民族ごとに分割され第二次世界大戦は不発の世界。大韓帝国はグダグダで存続、関東州は後清にでも返還。この場合、台湾は日本領のままになりそうな気がします。




