059:カエルの黒焼き
※大量虐殺が行われます。ご注意ください。
【天沼】丘陵の麓東側、谷の手前
夜明け前、全く夜襲は無く、野営地は弛緩しきっていた。突然、台地が軽く揺れる。
「地震か。鹿島か香取の要石がずれたんだろう。」
誰かがそう言った次の瞬間、地面が陥没し野営地は崩れ落ちる。叩き付けられ多くの者が負傷。打ち所が悪く亡くなった者はむしろ幸せ。
「殿! 地震です!」
「縦揺れが来なかった。すぐ近くか。……こんな時に。あの城壁はダンジョンだから地震では壊れないし、こんなことなら、大工や露天商が何を言おうと、あの鯰どもを鍋焼きの刑に処すべきだった。」
幸い、というか、生憎、というか、太ってたので怪我しなかった筑波内薬佑。地震の縦揺れが来たらゆっくり数を数え、横揺れが来るまでの数が地震の起きた場所までの距離、例えば5つ数えたなら5里となる。いきなり激しく揺れるのは地震がすぐ近くで起きたと言うこと。
「うろたえるな。落ち着け、ただの地震だ。」
だが、同時に百を越えるロケット弾が降り注ぐ。いくら距離が近いとは言っても無誘導なので多くは明後日の方向へ飛んでいったが、十発以上が落下し炎上。陣幕や筵や俵や火縄銃の火薬など可燃物も多かったため、たちまち落とし穴は地獄と化す。
「これは、地震も罠であったか。ここまでやるか。ショキチョウとやら、海賊とはいえ見事だ。」
内薬佑は落ち着いて腹を切る。介錯する者は居なかったが、炎は地下の新聞書籍や肥料に引火、たちまちのうちに炎が全てを呑み尽くした。辞世の句が何であったかは誰も知らない。
一方、城門が開き、掃討のため騎馬部隊が出陣。とはいえ騎馬は1騎だけだが。
「敵陣より2匹逃亡。ラージャ、追撃お願いします。」
それでも、逃げた者は居た。城門の上からマリーが追撃を命じる。騎士団は城門前で警戒するも、それ以上逃げる者は居なかった。
「騎士団の皆さん、城門内に退避してください!」
炎が強くなったので、マリーは拡声器で呼びかけ、騎士団を引き揚げさせた。
【東町】ダンジョン東側・丘陵の麓
「書記長様、これは……。」
岡田太郎左衛門は城壁の上から炎上、というより次々爆発する敵本陣を呆然と見ていた。
「鳴いたとて、今夜は焼き鳥、ホトトギス。」
何か信長っぽくかっこよく言おうとして外すマリー。
「鳴いても焼き鳥ですか。」
「太郎左衛門さんは、別に見たくなければ城壁降りていただいても。」
焼き鳥とビールって好きな方多いですよね。わたしは修羅なので、焼き鳥は食べなくても大丈夫ですが。という一節は口に出さず、マリーは太郎左衛門に声を掛ける。さすがにマリーもサイコパスでは無い。
「いえ、拙者、世話役としての責務はきちんと果たしますゆえに。お気遣いなく。それにしても酷い有様ですな。」
「小規模な火災旋風といったところでしょうか。」
「しかしまぁ、あんまり気分の良いものでは無いな。確かにこれが最善のやり方だろうが。」
城門で岸播磨介が言う。
「書記長殿も恐ろしいお方よ。」




