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518:タイムリミット

【第三層群屋上庭園】


「なかなか技術は進まないな。」

「元から数年でなんとかなるものではありません。ただ、急ぐべき理由もありますね。人口流入が想定以上で、ダンジョンの社会システムが追いついていません。」

「関八州から100万人の予定が、既に人口が200万人を軽く超えているんだったか。」

「当初の計画による関八州の余剰人口100万人の移住は近年中には完了します。(ひたか)(あわ)の戦乱による難民が多数いますから、それを加え関八州からの移民は現在100万人程度。最終的に推定150万人ですから、予定より多少多い程度です。」

「つまり、遠方からの移民が想定以上か。」

「そうですね。2,000kmも離れた奥州や身終(みのおわり)からも、修羅を中心にかなりの移住者が居ます。関八州へは転送陣により食料を輸出できますが、それより遠くは輸送手段が無いため情報だけが伝わり、余計に移民が増えているようです。」

「人口爆発による破綻が早まる危険があるか。」

「幸い修羅や畜生はそこまで殖えませんが、マルサスによると人間は25年で倍増、1世紀で16倍、300年で4,000倍に殖えます。このダンジョンのみならず関八州一帯で食糧供給が安定しますから、仮に関八州に人間が500万人居たなら300年後には200億人、500年後には5兆人になります。」

「到底養えないな。」

「もちろん、人口が限界に達した時点で飢餓と疫病により増加は止まり『マルサスの罠』と呼ばれる状態になりますが、そうなると、感情エネルギーが必要なこのダンジョンは維持出来なくなります。」

「マルサスの罠に到達する以前に人口爆発を止めないといけない訳だな。」

「1万km2、100万町歩の反収1.5石で1,500万石。このダンジョンの影響圏全域を開発しても数億人食べさせるのが限界でしょう。つまり人口爆発を抑え込む猶予はせいぜい150年です。また、食料生産には水と肥料、つまり、それらを世界のコアやマントルから得るためにダンジョンエネルギーが必要ですから、あまり輸出を増やすとエネルギー収支が合わずダンジョンが破綻します。それを考えると100年すら怪しいかもしれません。」


「マリーさん、人間牧場の寿命は300年とか言っていなかったか。」

「わたしも、最初はその予定で考えていましたが、どうも時間的猶予は乏しいようです。それに、このダンジョンは良質な感情エネルギーを膨大に必要としますから、住民の生活水準を高めに設定しています。『物心共に健康で豊かな生活を実現する』というわけです。通常、人間牧場は衰退期に入っても即座に破綻はしません。何度も改革を繰り返しますが、結局上手く行かずに最後は破綻。というのがお決まりのパターンです。」

「鎌倉幕府や江戸幕府みたいなものか。」

「ダンジョンではありませんが、原理的には似たようなものですね。人間牧場の崩壊は概ね大量死亡による人口崩壊を伴いますから、むしろ中華王朝に近いかもしれません。明治維新も戊辰戦争や西南戦争で多数の犠牲者が出ましたが、革命にしては少数で、人口崩壊までは行っていません。」


「ダンジョンによって効率的にエネルギーに転換できる感情が違うんだったな。」

「はい。このダンジョンは『情報』、つまり知識や経験ですね。特に『侵入者』が、人間牧場の場合は住民ですが、文章を読んだり書いたりすることで効果的にエネルギーが得られます。単純な情報の量なら文章より映像の方が多いのですが、『視聴覚資料』は付加的に扱われていたためかそこまで効率は良くありません。」

 ただし、このダンジョンでの本や新聞の最大の用途は、燃料としての輸出。

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